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かみさまのいるせかい  作者: MIH
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遅れてきた男

 故郷には無事たどり着いた。なにもなかった。ちょっとだけ期待していたけど何もなかった。

懐かしき街の門を抜けるとそこにはいつか見た執事さんが馬車を待機させて待っていた。どうやら実家より先にめんどくさい用事を済ませなければならないようだ。


 そんなこんなでブー男爵邸にメンバー全員お邪魔する。応接室にはナーラさんが待ち構えていた。ロックパッカー商会経由の先触れはちゃんと届いていたらしい。

「みなさん、お久しぶりね。元気そうでなによりだわ。」

爽やかな挨拶なのに圧がきつい。仕方がなかったんだ。気が付いた時にはもう終わっていたんだ。

「お久しぶりです。いつもありがとうございます。」

とりあえず、いろいろめんどくさい話なのでオレが対応する。他のみんなには適当にお茶でも飲んでてもらおう。

「えーっと・・・連絡はしてありますが、情報のすり合わせというか、なにがあったか説明させてください。一応報告というか先にこちらの話を全て出すので、ご相談の件はその後で。」

「・・・分かったわ。本人達から正確な情報は必要だものね。」

「ありがとうございます。・・・まずは・・・新しいPTメンバーですね。マリアンネ=ロックパッカーがPTメンバー兼ソフィのメイドとなりました。」

「ええ・・経緯はよく分からないけど、情報はロックパッカーからもらっているわ。」

「神々の干渉は時々変なのが来たりするけど、魔王とか影響が大きい事は出来なくなったみたいです。よく分からないけど、多分なにかしら制限がかけられてる感じですね。」

「私の方でも大きな動きは感知していないわ。もっとも、最近は運命が不確定すぎてあまり見えないけれど。」

「それで本題のほうですが、”剣聖”レオン君がウチのダークにぱくっと食べられまして・・・なんやかんやあった結果正式に付き合う事になりました。レグリット夫人に土下座しに行ったら喜んで認めてくれました。ええっと、”これ以上大切な人をバカバカしい運命とやらにあげるつもりはありません”だそうです。」

「・・・」

「あと、”陛下や周りから今後の要請を受けていましたが、全てお断りいたします”だそうです。」

レグリット夫人はナーラさんの同級生でつまり国王とも同級生だったのだ。

「そんな訳で、間接的に頼まれたようなものですし、ダークも巻き込まれるとイヤなのでレオン君を騎士団長に就任させる訳にはいかなくなりました。それで他の人を騎士団長にするのにいい人がいないかピックアップをお願いしておいた次第です。」

「なるほどね。一応アル君の言った条件の人間はいるわよ。」

「ありがとうございます。それで、とりあえず今後の予定というかですね、闇の住人(ナイトメアパーティー)としての希望なんですが、適当なタイミングでレオン君とダークに結婚してもらいます。まぁ騎士団長にはならなくても、もっと強くなてもらわないとなんでしばらくは修行優先です。だからすぐの話ではないのですが、レオン君は建前上レグリット家を出ているのでこっちに帰ってきて結婚式をやろうかと思ってます。あと・・・一緒にオレとソフィの結婚式もしたいなと・・・。今回の帰郷はその報告も兼ねてます。」

「あらあら。」

急に言い出した話なのでソフィも驚いているけど、すぐにニコリと笑ってくれた。正解でいいらしい。

「その後はどちらか子供が出来たら出産と育児で2年ほどは冒険者を休業する予定です。それまでにお金貯めないとですし、PTで活動しなくても安全な階層なら何人かでダンジョンは行くと思いますけど。どちらにせよ未来の話です。世界がどうなるかわかりませんしね。こっちの話はそんな所なんですけど連絡した条件、ナーラさんの影響がない貴族でそれなりに強い騎士団長候補。誰ですか?」

「ちょっと問題もあるけど、うってつけの人材よ。カイン=ダグラス=プラチナム。ダグラス公爵家の次男であなた達の同じ歳。”英雄”の恩恵をもらった宝石の世代(ジュエルズオーダー)。」

ああーいたなぁ。名前までは知らんけど勇者や聖女と一緒にチヤホヤされてたハズだ。

「彼の家、ダグラス公爵家はね、レインが騎士団長になる前は代々騎士団長を輩出してきた家なの。今の国王になった際にレインを騎士団長に任命して、当然抗議してきた当時の騎士団長を御前試合と称して衆目でコテンパンにして引退させたのよ。だから、彼が”英雄”を引き当てた時から裏で動いているし元々騎士団長を狙っていたハズよ。当然裏にいる私の事は恨んでるでしょうし彼本人にも家にも一切影響力はないわ。」

「いいですね。・・・今まで仕方がないにしてもナーラさんの影響が強すぎた。多分コントロール出来ないような部分がないとバランスが取れない。きっとその方が神々が干渉しずらいと思います。とはいえ、問題ってなんでしょう?」

「うーーん。・・・言うつもりもなかったけど、さっきの話を聞いたからついでに言っておくわ。問題の内容とは関係ないんだけどね。まず”英雄”の恩恵が問題。”英雄”の恩恵をもらった人物は本人の望みに関係なく神々の試練という運命が襲ってくるわ。スタンピートだったり、強力な魔獣だったりが町や村を襲ってそれを()()居合わせた”英雄”が苦難の末に敵を倒す。当然大きな被害が出た上でね。そうして恩恵の”英雄”は本当の英雄になるのよ。恩恵だけでもそこそこ強いんだけど試練を突破しないと恩恵の本領が発揮出来ないの。それで、彼、カイン君の試練はね、この街で起こる予定だったのよ。ちゃんと情報を操作して、この街が、人が、半壊したくらいで到着するように手配が出来ていた。本人は知らないだろうけどね。でもね、ヴィルヘルムが王都へ行ってから襲ってくる運命だった敵は1週間も早く現れた。ゴメンなさいね。あなた達の事をちゃんと知らなかったから・・。知らせを聞いた時には血の気が引いたわ。自分の勝手でヴィルヘルムは死なないと思ってたから。ありがとう、この街を、ヴィルヘルムを助けてくれて。まぁそんな訳で1週間後に旅行に来たカイン君は試練と出会わず突破もしないで帰っていったのよ。」

魔王軍四天王かー。タイミングだよなぁ。

「それで、ここからの話はあり得たかもしれない可能性の話。・・・いいえ。神々が勝手に決めていた運命だったハズの話。カイン君はね、ソフィアさんの運命の相手だったのよ。街が半壊した時家族を全て失って一人で戦っていたソフィアさんを危機一髪でカイン君が助ける。共になんとか敵を倒した後カイン君がソフィアさんに一目惚れして・・でも家族を亡くしたソフィアさんは悲しみでそれどころじゃない。その後行き場所を無くしたソフィアさんが王都のハイ学校(スクール)へ行って彼と再会。いろいろあって最後は絆されてハッピーエンド。とそこまではっきり見えていたのよ。だから、運命が破られた時はホントびっくりしたわ。」

「ありえません!!!わたくしが・・・おにいさま以外となど・・・。」

「ええ・・神々は私達一人一人など認識すら適当でしょう。ただ、本来はそれでも運命を決められたら覆せないもの。あれ以来私の覚悟は変わりました。起こり得る運命の中で最善を選んで街を犠牲にするなど認められません。」

「まぁオレはいつも運命の外にいるからね。そんなヤツにソフィは絶対に渡さない。」

「そういう訳で一応ソフィアさんは一目惚れされるかもしれない、という事と騎士団長にするにはなんとか英雄になってもらわないといけない・・という話です。なるべく・・・犠牲がないように。」

「なるほど・・・」

「ちなみにルルグ君の討伐を依頼したら”ゴブリンの相手など英雄の仕事じゃない”と断られ、剣鬼の時は行っても殺されるのが分かっていたので計画外でした。かといって、そこら辺の魔王でも勇者じゃないと倒せないのでなにかいい感じの敵がいればいいのだけど・・。」

「来る途中で強姦魔の集団に襲われたんですけどね・・・、王都の痴女、まだ捕まってないんでしょ?ソイツ等が痴女のことを痴女魔女って呼んでましたから多分魔法で隠蔽か情報改変されてますよ。鑑定水晶だけだと騙されるけど、看破できる恩恵の人使って正体を見破って英雄に退治させたらどうでしょう?」

「うーん。確かに由々しき問題ではあるし、その情報は役に立つけど英雄の仕事かっていうと・・ねぇ」

「他にどっかすでに被害が出ている所ってないんですか?今から被害が出るのはイヤだけどもう出てる所に突っ込ませれば。」

「・・・・・・そうだわ。実は姫将軍のゴブリンクイーン・・・まだ退治されてないし砦も取り戻せてないのよ。」

「は?・・・もう何年か経ってるんですけど・・え?」

「実家の公爵家は頑張ったんだけどね、砦に籠ってゴブリン以外の魔獣や魔族を従えて防衛してるのよ。姫将軍の恩恵が強くてね・・・。公爵本人もクイーンと一騎打ちで殺されたわ。ただ、ルルグ君の時みたいに勢力を拡大して攻めて来る気配がまったくなくてね・・。小競り合いというか戦争は続いているけど基本向こうからは攻めてこないのよね。」

「あれだけ強かったのに魔王になってないの?」

「なっていないわ。ついていった劣化勇者PTも何度かやられてるけど死なないで戻ってきてる。」

「今は大丈夫だろうけど・・なんかしてそうだね・・。」

「そうね・・・。でも、ちょうどいいわ。姫将軍の方の公爵家は大分力を落としていてね、ダグラス公爵家に騎士団長の椅子と公爵家への貸しをエサにカイン君を出させましょう。魔王じゃないならなんとかなるでしょ。」

「武器とか補助しなくていいの?」

「ダグラス公爵家にはね・・・王家の他に唯一の家宝のオリハルコンの剣があったのよ・・・自慢だったのよ・・・。なぜか今ではB級冒険者くらいでも持ってるんだけど・・・。そんな家に武器いりますかとか聞けるわけないでしょ!どの道直接干渉は出来ないからそれとなく補助はするわ。それで英雄になったら彼が騎士団長よ。」

「こちらで勝手に話を進めてもどうなるのかわかりませんしね・・・。とりあえずはそんな方向でお願いします。」

「私はこの街から動かないでおくわ。関係ないフリで進めないとね。」



 その後、ダークの家に行って話をしたり家に帰ってホントウの妹にかまったり報告をしたり。人数が多いので解散してプーニャ達には宿屋に行ってもらった。


 そして・・・オレの前には真剣な表情のソフィが立っている。

「アル・・・・私は・・・私は・・・・・・貴方以外とくっついた私が許せない。家族を・・・貴方を無くしたのなら・・・私は死ぬまで戦ったはずなのに・・・。」

「ソフィ。大丈夫。運命なんかにキミを渡さない。そんな可能性なんて0%だ。」

「それでも!・・・誰とも知らない英雄なんかじゃなくて・・・今、私の運命の相手がアルだって・・・証明して。」




 オレはついに試練を突破した。恩恵もないから英雄にはなれないけれど、ソフィアの運命の相手にはなれたハズだ。


「プーニャにはちゃんと話はしてあるから・・・結婚式は3人でするように頑張るのよ。」


 新たな試練が訪れたが問題ない。オレは全力を尽くすだけだ。とりあえず痴女魔女をどうにかしないとかな。

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