ダークの初恋
「最近ダークの様子がヘンなのよ。」
そんな事を言われても。
「アイツは出会った時から頭のおかしい変なヤツだったよ?」
「そっち方面の変なのは治ってないわ。・・そうじゃなくて、たぶん・・・恋よ。」
[KOI?鯉?ダークが?ええええぇ。」
「間違いないわ。普段ワタシが呼んでる本にもそう書いてあったもの!ちょっと話を聞いてみてよ。」
そんなソフィの瞳は好奇心できらめいている。あのダークが恋ねぇ。ただまぁ。ウチのPT索敵やら罠感知やら結構致命的な所がダークに任せっきりなのだ。男のことを考えていてぼーっとしてたら全滅とか勘弁してもらいたい。そういう建前もあるし、話を聞いてみるか。
「でも、アイツおとなしく話をするかなぁ。」
「そう思ってもう捕まえてあります。ここに。」
3分クッキングのような感じでリビングのいつもの椅子に縛られたダークが座っている。さすがに家の中なのでいつもの黒ずくめではなくラフな感じだ。タイトなミニスカートやTシャツは所々破れていて肌がチラチラしている。前世のパンクロック風だが、オレは知ってる。失敗するとただのボロい恰好の人になってしまうのだ。おしゃれに見せるのは才能がいるのだ・・。うう、なにか闇の記憶が囁く。これ以上はダメだ。というか尋問だ。
いつの間にかリビングにはわくわくの女性陣が座っている。いや・・マリアンネは食材の買い出しに出かけているらしい。
「それでー。ダークはKOIしちゃってるの?スキスキなの?」
「うぐぅ・・・答えないとダメか?」
「まぁ探索中とか危ないし、情報共有以外にもマジメなハナシ誰かに話してスッキリする事だってあるよ。なにか悩んでたり、手を貸してほしかったりしたとき、闇の住人のみんなはちゃんと協力してくれるよ。で、誰なの?」
すでに恋を前提に話しているが、もしかしたら借金かもしれない・・・いや借金はないな。それにダークもこれだけ騒がれても特に否定はしなかった。
「そう・・・だな。確かに、ずっと誰かに相談に乗ってほしかったのも確かだ。皆を信頼して話そう。・・・あれは、いつだったか中央街で光の翼のメンバーとたまたま出会った時だ。」
「ん?」
ヴィルヘルム君・・・はありえないな。昔から感情のない目で冷笑してたからなコイツ。
「その・・最近入ったレオン君に・・・ちょっと・・・・・・一目ぼれなどを・・・。」
ああ、いたな、剣聖・・・・え?マジ?だって
「レオン=レグリット=ドズル。剣聖になって改名して・・・てっきりダークはイケメン嫌いなのかと思ってたよ。」
コイツがイケメンにときめく姿なぞ見た事もない。ちなみに件のレオン君11才。イケメンというより、まだまだ可愛い系だ。金髪碧眼にくるくる巻き毛の・・・そう、よくあるオトメゲーの王子様の幼少期とか立ち絵がでるとあんなかんじ・・・。11才・・・。そうか・・ショタが・・・いいのか。
「別にイケメンが嫌いな訳じゃない。ただ、自分がイケメンだと知っている男はいちいちうざい。我はもっと純粋な魂を求めているのだ。」
イイネ!オレも純粋な魂大好き。男はいらんが。
「だけど。」
「そう。だけどレオン君はリグレット侯爵家の跡取りで立派な貴族。剣聖を失った王国が急いで戦力を整える為に制度まで変えて鍛えようとしている重要人物。まぁそうなっちゃった原因はオレにもあるけど、違う運命だと多分彼死んでるしなぁ・・。」
「我も真剣に第2、第3夫人でなくても愛妾とか・・・いろいろ考えたけど、貴族の家は我にはムリだ。我は・・・諦めたのだ。」
「ダーク・・あなた・・・。」
ソフィがちょっとうるうるしている。
「それはそれとして、ちょっとストーキングして様子を見ていたのだが・・・。」
ん?
「レオン君はあまりにも無防備すぎて。のこのこのこのこと歩いているから・・・ついムラムラして・・。」
んんん?
「ちょっといつもの様に宿屋に連れ込んで。」
「おい!」
すぱーんとダークの後頭部にソフィの平手がいい音をたてる。
「大丈夫だ。誰にも見られていない。」
「ああ、いつものやつか・・。」
「・・・まぁさきっちょどころか奥までずっぽりだったんだが・・・。」
すぱーんすぱーんと追加のツッコミがはいる。え?マジ?えええぇ。
「痴女じゃん。」
「愛ゆえに・・・。それはそれとして、ちゃんと薬もいれて意識も朦朧としていただろうから大丈夫・・・多分・・・。」
「大丈夫じゃないじゃん。えぇ・・これ衛兵に突き出したらいいの?男女逆なら確実にお縄だよ?いや今でも十分犯罪だよ?」
「それで、向こうも慌てて警備を付けたり新しい斥候メイドの人が見張ってたりで警戒するようになったんだけど・・・。」
「うん。」
「ザルすぎて、あとガマン出来なくて。3日に一度くらいの頻度で拉致して致して解放してを繰り返してるんだけど。」
くっ・・死罪なのか?レジーナさんは王女様が一番だけど弟も大分可愛がってたハズだ。バレたらまずい。
「今度、ダンジョンの遠征で1ヵ月くらい行くらしくて・・・どうしよう?ガマンできないんだけど?」
それがダークのアンニュイな様子の悩みだったらしい。アホか!
「アホか!!」
とりあえずオレもリビング備え付けのハリセンで頭をはたいておいた。
そこへマリアンネが帰ってきて言うのだ。
「大変です!王都に痴女が出たって!」
どうやって死刑を免れようか。逃げようかな。
「大丈夫。痴女はココにいるから。ホントどうしようかな。」
「ええ!師匠いつの間に邪神の眷属に!?ダメですよー。」
んん?
「邪神・・の眷属・・なの?」
「いや・・まったく?愛ですから。」
イラっときたがとりあえず内容を聞いてみる。
「どんな痴女なの?」
「ええと、ルイーザさんがメイドネットワークの話を教えてくれたんですけど、なんでも夜中にマント一枚で歩き回り・・・えっと・・男の人と・・致してしまうと・・・相手をした男の人が強制的に邪神の眷属にされてしまうらしいんですよ。怖いですよね。」
なにその当たり屋痴女。
「邪神の眷属に落とされた男の人はなんか”強姦魔”にされて無差別に女の人を襲うみたいですよ。こっちは襲われた女の人を邪神の眷属にするような力はないみたいですけど。今街中でその痴女を必死で捜索しているらしいですよ。」
ちゃんと娼婦やせいじょの恩恵もらってまっとうに?生きている人からするといい迷惑だろう。それはそれとして、光の翼の隠密メイドさんはルイーザさんというらしい。メイドネットワーク・・いい響きだ。
いろいろ衝撃的すぎて大分場が混乱している所に今度は家のチャイムが鳴る。衛兵がダークを捕まえにきたか!と外を覗いてみたらレオン君が立っていた。ダークは逃げ出した。アイツに本気で逃げられたら仕方がないが、気にはなるようで家の中にはいるみたいだとソフィが言っている。とりあえず・・・。上がってもらうしかなかろう。
「あの、急にお邪魔してすみません。ちょっと相談したい事がありまして・・・王女様に聞いたらそういう事ならココに行きなさいと言われて。」
レオン君は年相応の裏表のない感じで申し訳なさそうに話始める。でもコイツは経験者だ。オレ達童貞の遥か先を行く先輩なのだ。
「それで・・・相談って?」
「実は・・ある女性を探していまして・・・。どうにかその方とお話できないかと・・・。」
「なるほど。その女性を衛兵に突き出したい訳ですね。」
「!ええっ!いえ!あの!あの・・・その・・・・・正式にお付き合いできないかな・・・と。どこの誰かも分からないのに、彼女の気持ちも分からないのに・・・。でも、ちゃんとお話しがしたいんです。どうか力をお借りできないでしょうか?」
ソフィが、プーニャが目を輝かせている。その展開はびっくりだ。え?そんなに気持ちよかったの?聞いてみたいが。
「どうしてそこまで・・・?」
レオン君は意を決したように顔を上げ答えてくれる。
「実は・・ちょっと前にボクは女性に連れ込まれまして・・・恥ずかしい話抵抗も出来ず食べられてしまったのですが・・・。最初は混乱していたのですが・・・その女性も多分初めてだったと思うんです。その後も、警備までついたのにボクに会いに来てくれて・・・。ボクも男です!ちゃんと責任を取りたいと!思いまして・・・。ただ、名前も知らなくて・・・。」
プーニャのおならが軽く鳴って天井から猫を抱えたダークが落ちてくる。イスにジャストインした所にソフィのハリセンが頭に炸裂する。
「あんたは!ちゃんと!話をつけなさい!」
「ご用命の痴女はこちらに用意しております。どうぞ心ゆくまでお話ください。でも全員揃ってないと逃げられるので、あと2人にさせると襲いそうなのでこのままお願いします。」
ダークはもちろん話を聞いていたのだろう、ちょっと見た事がないほど顔が真っ赤だ。
「あなたが!・・・・あの・・・・いつもお世話になっております。」
「!ゴメっ・・ゴメンなさい。無理矢理・・あんな事を・・。」
「あの・・・名前を聞いてもいいですか?」
「だ・・・いえ、あの・・・エイミーと呼んでください。」
エイミー誰やねん。多分ダークが改名する前の家族がつけた名前なんだろう。エイミーちゃん。
「エイミーさん!頼りない男だと思うでしょうが・・・ボクと正式にお付き合いしてください。」
お付き合いしてるじゃんと、オヤジギャグが出そうになったがこの空気じゃ言えない。
顔を真っ赤にしたダークは、でも目に涙を浮かべて・・・。
「わ・・・わた・し。あの・・・恥ずかしくて・・・貴族とか・・・むりで・・好きだけど・・・・どうしていいかわからなくて・・・」
おお、闇に飲まれていない人見知りでコミュ症なダークだ。可愛いのお。非処女だけど。
レオン君は頷く。
「ボクはレグリット家を抜けてレオン=ドズルとして・・・1人の男として・・・生きる覚悟を決めました。母にも分かってもらいました。どうか・・貴族としてではなく!剣聖としてではなく!ボクを!ただのレオンを・・・。愛してほしいのです。」
「!!!!愛してる!アナタを!レオンを!」
イスを飛び出し抱き合って・・・。目の前でキスをしている。ぶちゅーっと。・・・あれ?これ止めないとずっとしてるのでは?
とりあえずソフィがレオンとダークを両方ハリセンではたく。そのまま目線を送ってくる。
「どう?」
「うーーん。お付き合いは問題ないけど、ちょっと今、さらにPTメンバーが増えるのはバランスが悪い。決して男はいらないとか思ってないよ?ほんとだよ?多分こっちで邪道なルートよりも光の翼で実践積んだ方がいいと思うんだよ。なんだかんだ言って剣聖だしねぇ。・・・いや、でもよくそんな決断できたね。というかお母さんよく許したね。跡取りとかどうするの?」
あと内緒だろうが、騎士団長の補充とか。
レオン君は嬉しそうに、でもちゃんと説明しようと居住まいを正す。
「ここにいらっしゃるのなら、多分エイミーにとって家族のような、大切な人達なのだと思います。なので、ボクの話を少し聞いてください。・・・ボクは元々レグリット家の跡取りとしての期待と重圧に耐えきれなくなって、全てから逃げたのです。両親は何も言わずに見守ってくれました。だけど、勝手に剣神の恩恵を与えられて・・・イヤだと言う事も出来ず、剣鬼との戦いに駆り出されて・・・。今思い出しても自分がいつ死んでもおかしくない一撃一撃で・・・怖かった。死にたくなかった。動けなくなったボクの代わりに父上が剣鬼と相打ちになって・・・。命を・・・救ってもらった事はボクが一番分かっているのに・・・帰ってからも死ぬのが怖くて怖くてたまらなかった。それでも、国の偉い人がきて、剣聖にふさわしい実力をつけるように、と。言われるままスクールに入って。言われるまま鍛錬を積んで。言われるまま、光の翼へ入れてもらって・・・・。剣聖の恩恵はすごくて、ずんずん強くなっているのは分かるのに・・・すごいのは恩恵でボク自身は誇れるものもなくて。流されるように生きている自分が嫌いで。そんな事を思いながらぼーっとしていた時に、エイミーに・・出会って。」
キレイに言っているが連れ込まれて襲われただけだ。
「それで・・その・・・意識ははっきりしていなかったんだけど、彼女は言ってくれたんだ。”レオンがいい””そのままのレオンでいい”・・・ボクはその言葉で自分はずっと、ずっとなにが欲しかったのか分かったんです。レグリット家の跡取りでもなく、剣聖の息子でもなく、ボクを見てほしかった。剣を諦めたボクを見守るのではなく・・・ボクの努力を認めてほしかった。それでちょっと叱って・・・もっとがんばれって・・・言って欲しかったんだ。エイミーに情けないボク自身をみてもらって、そのままでいいって言ってもらって、生まれて初めて、これ以上ないほど・・・悔しかったんだ。だってボクは生まれた時から言われたように生きてきて・・・一度も自分で頑張った事なんてない。そのままでいいなんて!そのままでいいワケがない!ボクは!父上のように!自分の愛する人を自分で守れるように強くなりたい!。・・・何度も愛し合って・・・思いを強くして・・ボクは母に自分の考えを聞いてもらいました。もし、探し出した彼女が望むのなら、リグレットを捨てると。」
愛し合ってはいたが、絶対に薬で朦朧としたレオン君を美味しく頂いていただけだ。騎乗位で!・・・小さいレオン君に小さいダークが騎乗位。いつか・・・いつかオレも!。
「母はその言葉を聞いて、・・・泣いて喜んでくれました。そして、大事に仕舞ってあった台本を読ませてくれたのです。ボクは自分がどうやって命を救われたのか初めて知りました。」
ーーー幕間ーーー
「レインはあなたを生かす道を自分で選びました。だから、あなたはその事で思い悩む必要はありません。それは私が一生背負っていくモノです。でも、今あなたは自分で決めて前へ進もうとしている。レグリット家を捨てる事も強くなる事もあなたが全ての責任をもって、決めるべき運命です。あなたは、なにを選びますか?」
「ボクはボク自身を選びます。いつか彼女を守れるように強くなって、胸をはって父上に言えるような男になる!その為には剣聖や貴族の地位なんて関係ない!いや、むしろ邪魔なモノだ。厳しい人生になるでしょう・・でも、ボクはこれ以上流されて生きるのはイヤだ!ボクは自らの人生を自ら選びたいのです!」
「よくぞ言ってくれました。その言葉を聞いてレインも喜んでいるでしょう。自分の選択がムダではなかったのですから。・・・あとの事は全て私に任せなさい。あなたは、自分の人生を歩むのよ。それでも・・・たとえ家を捨てたとしても・・・あなたはずっと私達の愛する息子。それだけは忘れないで。」
「本来、命を救われた身としてレグリット家に尽くすのが当然。・・・親不孝な、自分勝手な息子をお許しください。」
ーーーーーー
「とまぁ、そんな事がありまして、貴族でもないただのレオンとなりました。まだまだ若輩ですが、よろしくお願いします。」
なるほど・・・これは・・・さすがに運命にはなかった流れだろう。いずれこの先で運命は紡がれるのだろうが、完全に神々の裏をついた形だ。剣聖の死は、選択はムダじゃなかった。あとでナーラさんとはちょっと話をしなければ。それはそれとして。
「さっきも言ったように、お付き合いは問題ないけど、PTはしばらく光の翼の方で頑張ってね。あと、出来ればちょっと抑えてね。人前でちゅーはダメ。お互いダンジョン攻略とかに支障が出ないようにね。あと、レジーナさんが死刑にしようとしてくるだろうからなんとかしてね。ホントに。」
ちゅーは離したけどいちゃいちゃしようとする2人にお願いしておく。
「じゃあ、はれてお付き合いしたのでお付き合いに行きましょう!大丈夫!さきっぽだけだから!」
ダークがレオン君を引きずっていく。一応家の中でするのは控えてくれるらしい。そして絶対さきっぽだけなワケがない。
「薬も使わなくていいし!ダンジョンで一ヵ月離れる事を考えて!・・・いっぱい・・愛し合いましょうね。」
唇をペロリとなめるエイミーちゃんはダークのくせにエロ可愛かった。最初はうきうきしていた女性陣は完全に呆然自失である。捕まらなくてホントによかった。一件落着!
痴女忘れてた。まぁ・・・・誰かなんとかするだろう。知らん。




