ダイジェスト2!
プーニャが仲間になってから1年ちょっと過ぎた。1年ちょっと過ぎたが、まだ彼女にはなってもらえていない。なので特筆すべき事件などはなにもなかった。特筆すべき事件はなかったけれど、ちゃんと進展はしているので例によってダイジェストである。
まずはそう。あの恐るべき祭りについてだ。プーニャを加え意気揚々とジューシーに乗り込み、一度しか来た事がないのに偉そうにおすすめのスイーツショップを巡る。そんな予定通りのスイーツフェスティバルにひたっていたオレ達だが徐々に気が付くのだ。おかしいぞ・・・と。
そう、ジューシーの街には一年を通じて旬のフルーツが各地から届くようになっている。オレ達が最初の祭りで街を巡ってから早1月ほど。フルーツの旬が移り替わっていたいのだ。美味しいリンゴの時期から梨の時期になっていたので気が付かなかったのだ。そして祭りの間にすでにさくらんぼの時期となっていた。
そうするとだ。最初に巡っていたスイーツショップのイチオシが変わっていく。ただ上に載っている果物が変わっただけじゃないかとかバカにしてはいけない。この街のパティシエール達がそんな誰でも作れるスイーツで勝負をする訳がないのだ。同じ店の同じ名前のスイーツのはずなのに使用するフルーツか変わるだけで評価が一転する。もちろんオレ達PTのしかも個人の趣向の話ではあるが以前の評価がまったく当てにならない。結果、オレ達は最初から店巡りをやり直し・・・その間にも旬が移ろいで行く。”永遠の体重増加”。女性陣の限界値を超え・・・オレ達はわずか2週間で魅惑のスイーツフェスティバルを諦め王都へと帰還したのだ。もちろん時間停止のマジックバックがあるので出来るだけ多くの店でスイーツを買い込んだ。本気で制覇するなら移住を考えなければ1年を通して楽しめないだろう。だが、その体重増加はとても許容できるものではなかったらしい。一応買い込んだスイーツが切れた頃、一年に1度か2度か3度か4度か。足を運んでその時の旬を楽しもうという話で落ち着いた。あと、ぽん太とみーちゃんは大分ふっくらした。上位存在とは、”食事は必要ない!”キリッとはなんだったんだろう。食事はエネルギーの吸収効率が段違いらしい。それでいてエネルギーで吸収してしまうので排泄はしなかった。楽でいいけどさ。
王都に帰り着いたオレ達はすぐにナーラさんからお呼びがかかった。魔王の件をすっかり忘れていたオレ達はみんなで王城へと連行された。ナーラさんは魔王を見て溜め息をつく。
オレが知っている事と、いろいろ話を聞いての推測を話しておく。
「魔王の恩恵って、なった時に本人が望んだ力が顕現するみたいなんですよ。でも戦うのがイヤだったまおちゃんは魔王の恩恵の力を逃げる事に全振りしたみたいなんです。勇者が人間側に現れて何年経っても魔王の影も形も見えないのもおかしいとは思ってたんですけどね。ただ逃げ足が速くなるとかじゃなくて”周りの全てに影響して自分が安全に逃げる事が出来るようになる”っていうよく分からない魔王になってたみたいです。それでオレ達と会った時も本当なら2匹が戦い始めた時にはすでに逃げ出してたはずなのに神様が戦えって運命に干渉して、でも逃走特化の魔王にそんな力はもちろんなくて逃げ出せずに泣いてたんですよ。」
ナーラさんは頭を抱えてうずくまっている。大丈夫だろうか。
「ええ・・・。その子を見れば分かるわ。多分、ほっといても人間の驚異にならないのがわかる・・。勇者と戦ったら勇者が勝っちゃうでしょうね・・。」
「そうなんですよ。神々はまた干渉して無理矢理相打ちにしようとするかもしれませんが、ちょっと無理ですね。逃げようとするまおちゃんを神々が逃げないようにして勇者に倒されて終わるでしょう。ですが。」
「そうね。それで勇者が生き残ったらまた次の魔王が生まれるだけ・・。しかも今度は強い魔王かもしれない。・・・・・・・。」
「なので、大事なのはなるべく勇者と出会わない事。出会っても戦わない事。まおちゃんにはプーニャがしっかりとおならテイマーの力で枷を掛けてありますので、勇者でなくても人を襲いません。」
「分かったわ。こちらもアリサさんに事情を説明してギアスを掛けさせてもらう。・・・でも、魔王と戦わない・・・だと厳しいわね。なんとか神々の手出しを回避しないと・・。」
「うーーん。じゃあ、魔王に攻撃をされない限り魔王を攻撃しないとかでどうです?攻撃を禁止している訳じゃない。でも現実的にはありえない。」
「いいわね、それ。じゃあしっかりおならギアスを掛けておくから、そちらの管理責任はホントに頼んだわよ。その2匹も。暴れたら王都が更地になるからね。」
”問題ない。スイーツも美味かったので契約は履行された。”
”ふっ猫には何も出来ないのよ。不満はおならの頻度だけだわ。・・・あなたからもなんかいいにおいがするわね。どう?いっぱついってみない?”
ぶうぶうぶう!
「ぷー子もしっかり見張ってくれるそうです。」
「分かった分かった。でもおならはしません。もう帰ってもいいわよ。」
「いつもありがとうございます。ヴィルヘルム君には油断しないように言っといてくださいね。」
「分かってる。」
ナーラさんは最後の話には真面目な顔で頷いた。
ナーラさんとのお話が終わったら、まったりしながらもダンジョンの攻略だ。以前も少し触れたが、61階層から先は敵魔物ももちろん強くなるのだけれど、ダンジョンの環境をなんとかしないとそもそも先へ進めないようになっている。砂漠や氷原など極限環境なんて優しいもので、浮島階層は空を飛べないと先へ進めない。もちろん、空を飛べてもワイバーンやらロック鳥やら空飛ぶ魔物が襲ってくる。神様クリアさせる気がないだろうと思うのだ。以前もめんどくさくて攻略をやめていたのだが、ぽん太とみーちゃんで力押しした。60%ほど解放したみーちゃんにのって、ぽん太が周りを走り回り護衛してもらう。たまに魔法剣飛ばしたりして階層をクリアした。一面床が溶岩の所は足場とかもちろんない。ぽん太に地面を全て凍らせてもらって歩いていった。もちろん溶岩の中から360度魔物が攻撃してくる。魚の体にドラゴンの手足が生えた魔物が現れて溶岩ブレスを吐いてくるのだ。なにか、オレの前世の記憶がざわめくが足場があれば別に普通に倒せた。なにか当たり判定が・・とか潜って出てこない・・・とか聞こえる気もするが気のせいだろう。
メンバーも増えて順調ではないが攻略を進めたのだが、83階層で一旦ストップだ。一面海の階層で溶岩と同じように凍らせて歩いていたのだが、次の階層への門がなかった。・・・・海の底にあるらしいのだ。神様はアホだと思いました。なんか魔道具を作ってーとか頑張るのもアホらしいので最近はもっぱら食材ダンジョンで美味しい食材回収に精をだしている。階層構成自体は違うが、61階層からアホになるのは一緒なので、そもそもそこまで行ける冒険者もいないので高級食材を超えて誰も食べた事のない物オンパレードだ。やはりドラゴン肉が一番美味しいがドラゴンの種類によって食感も違う。それらも売れば高いのだろうが、65階のドラゴンですとか売るのもバカバカしいので自分達で食べている。
それと、他の冒険者の地力を上げる為にオリハルコンとか神金属をちょこちょこ売り出した。素材ダンジョンの78階層は一面荒地の岩場が広がっているだけの一見優しい環境だ。実際優しいのだが、ただ、次の階層に行くのに100m以上の高さの岩山を登らないといけなくて、隠れる場所もない広々としたフィールドから各種ゴーレムがわんさか襲い掛かってくるだけだ。ミスリルゴーレム、オリハルコンゴーレム、アダマンタイトタートルゴーレム、ヒヒイロカネウルフゴーレム(群れ)とか。リーンライトゴーレムとかいう鳥のゴーレムが落とすリーンライトはミスリルクラスの特性を持ちながら羽のように軽いという聞いたことのない神金属だ。要は基本物理攻撃が効きにくく、魔法にも耐性がある敵ばっかりなのだ。たどり着いた時はただただ面倒くさくて、みーちゃんで飛んで行ってスルーした階層だった。ただ、80階層のボスドロップの神金属ミーアキャットとかいう名前の金属が大問題児だったのだ。単体で使うと普通の鉄くらいの性能しかないのに、合金に混ぜると元の金属の特性や強度や切れ味などを滅茶苦茶強化するのだ。そして、本来なら合金にする比率とかバランスとかめっちゃ大変なハズなのに恩恵のLVの上がったシルヴィは最初から全部ガンダムで出来ちゃうのだ。余分にあった分も消えてしまうのは残念だが、知らなくても完全な比率で勝手に合金が出来てしまう。そして性能が上がった合金で装備や武器を作り直したのだ。円卓の騎士とか頭のおかしい武器となった。ドラゴンだろうがアダマンタイトだろうがスパスパ切れる。あんまり楽しかったので78階層に行って試し切りをしたのだ。ぽん太とみーちゃんに守ってもらって、ソフィとダークだけ群がるゴーレムを輪切りにしていく。両手に剣を持ったソフィが今まで見た事もないような笑顔で全力で敵を切り刻みながら駆け巡る。キズが出来るとかじゃなくて腕だろうが胴だろうが切った所がスパっと真っ二つだ。ダークも元々攻撃力が低く、魔道具やアイテムで補助に徹していたが普通に攻撃大好きっ子なのだ。ここぞとばかりに今まで聞いたことのない技を使って楽しんでいる。
「陰陽相克陣!」
遠くで爆発音が聞こえる。それそういう技じゃないから!。
2人のダイエットとストレス発散により大量の金属が溜まっていく。件のやばい金属は別として在庫がたくさん出来たからロックパッカー商会に売ったのだ。最初は驚いて喜んでくれたが、毎回たくさん持ち込むと泣いていた。高価すぎて捌けないらしい。そもそも加工できる高レベルの鍛冶師がいないそうだ。安く売ればいいじゃんと言っておいた。おかげで大分儲かった。ソフィも無事スイーツフェスティバルの負債を処分できたようだ。
余談だが、ある日ヴィルヘルム君が家に来て浮島階層をどうやってクリアしたか聞かれた。オレは噓偽りなく飛べばいいと思うよ?と答えておいた。まぁなんとかするのだろう。がんばれ。光の翼には王城から”隠密メイド”という恩恵のお姉さんが派遣されてきて、今までいなかった年上の女性が入った事で安定感が大分増したらしい。なんか今度剣聖もPTに入るって言ってたし、頑張ってほしいものだ。多分100階層のボスは神の現身とか神の現界だろうからね。
そんな穏やかなある日、彼女はやってきたのだった。




