【閑話】王城の一幕
王城の裏口近くに誰も使わない、使用目的もない部屋がある。休憩室でもなく、応接室でもなく、倉庫でもなく。ただ整えられ、掃除などはキレイにされている一室。そこは身分を問わず、時間を問わず、使用する事が許されている極一部の人間が必要に応じて使用する部屋。その部屋に追加の椅子が運び込まれて10人ほどが座っている。広い部屋ではないので少し窮屈だがそれに文句を言う者はこの場にはいなかった。
皆が一言も発さず女性の言葉を聞いている。
「以上が、私が運命で読んだレイン=レグリット=ドズルの最後となります。詳細は後でゴシッパーに見てきてもらい、編集して発表する事になるでしょう。頼みますね。」
「・・・分かった。」
「そうか・・・レインは自らの運命を選択したのだな・・・。」
「ええ。もちろん断言はできませんが、私が見た大きな運命の流れは大体確定しました。現在は以前からお伝えしました通り、あなた達が自ら選んだ結果となっています。しばらくは・・時間が稼げているかと・・。」
「分かっている。・・・確定した運命の内容により以前より発案されていた対応策の施行を言い渡す。まず、昨今の邪神の活発化に伴い即戦力の育成という名目で恩恵を賜った子供の中で、希望者、有能とされる恩恵を賜った者を対象として10才から学校への入学を推奨する。期間も、固定せず途中入学などフレキシブルに対応させ必要な技能を学んだ後速やかに実戦へと移ってもらう。現場の混乱や増えるコストは厳しいだろうが、国策として補助をして浸透させていく。・・・そうして”剣聖”となったレオン=レグリット=ドズルを学校へ入れて卒業後、特例ではあるが勇者PT光の翼へと一時加入させ実力を磨いてもらう。失った”剣聖”の穴は5年を目途に埋めてもらいたい・・・厳しいだろうが、関係者へ通達と手回しを・・・。」
「はい。」
「分かりました。」
「レインの現場の状況の詳細が分かったら、雑誌の発売に合わせ国葬とする・・・。結果だけ見れば国を守って死んだのだ・・・・。私にはなにも出来なかったが、それぐらいはしてやりたい・・・。そちらも知られないように根回しと準備を進めてくれ。」
「ハッ!」
「会場を見繕い、手配しておきましょう。」
「次に・・・資料を配りますが、闇の住人からの報告で発見された邪神の使徒の調査報告と事実内容、そして顛末です。我がロックパッカー商会アカーシャ支店より騎士からの調査内容も含め上がっておりますのでご確認ください・・。」
「・・・”悪徳領主”なんて恩恵もあるのね・・・はじめて見たわ。」
「お触れは出したが、由々しき事態には変わりない。早急に他の領主、貴族などにも中立なる監査員を派遣し鑑定の義務を課す。」
「また、奴隷商人の恩恵がそこそこいるらしく、エルフや獣人、人間にしても恩恵を授かる前の子供などが行方不明になる事件が全国で発生しているようです。場所に関連がなさすぎて問題に気が付くのが遅れていますが、おそらくそれぞれの犯人が別々に勝手に動いているのでしょう・・・。調査解放はもちろんですが、人間同士、またはエルフなど亜人の国との疑心暗鬼が広がれば後々大変な事となるでしょう。国同士の事前の情報共有と外交はお願いします・・・と闇の住人からの伝言を預かっております。」
「・・・そうか・・・。ナーラ、喫緊での大きな運命や天秤が傾くほどの事件はないのだな?。」
「以前見た時にはなかったし、今も確認できないわ・・・。でも少し前から運命が読めないのよ・・・いえ、読めるけれど簡単に姿を変えるし、運命というよりは、可能性?どうにでも動くようで確定しない・・・。でもこれはチャンスよ・・神が運命を決めていないって事だもの。」
「分かった。どうなるにしろ、忠告はもっともだ。早急に他国と連絡をとり、こちらの現状を嘘偽りなく話すとしよう・・。駆け引きなんぞしとる余裕はない。出来る事をやるぞ。」
「そうね・・・運命なんて分からないのが当たり前だもの。今まで通り、情報を集め予兆を見逃さず、何が起こるか分からない中で観測し、予測して何が起きても大丈夫なように備えるの。私はみんなに選択をさせたのだから・・最後まで付き合うわ。」
「我らは全員自ら選択して今ここにいるのだ・・・。中には命を救われた者もいるだろう。自分の選択に後悔はない。」
「それでは、最後に昨日遅くにやはりアカーシャ支店より送られてきました闇の住人からの報告書です。・・・どうしようもありません。」
ナーラは机につっぷして頭を抱える。
「・・・どうしてどうなったら、聖獣と邪竜と魔王をテイムしたって報告がくるのよ・・・。どうしろっていうのよ・・・。」
「以前言っていたが彼らの運命は全く見えないのだろう?」
「ええ・・・まるでこの世界にはいないみたいに・・・だからゴシッパーにも彼らの動向は見えないわ。・・・でも・・・・そう。魔王の件はなんとかなったのね・・・。嬉しいけれど・・・後を頼まれたってどうしろっていうのよ・・・。こちらは帰ってきたら直接私が話して対応をまた報告します。今はどうにもなりません。」
「やはりアカーシャ支店からの情報で、行先を聞いた所スイーツパラダイスの続きだとおっしゃったらしいです。おそらく王都へはすぐには戻らないかと・・・。」
「・・・・・・・長期滞在となりそうなので、夫もこちらに呼び寄せます。・・・・・・こうしている事すら運命なのかもしれませんが・・・・何度でも問いましょう。貴方達は、それでいいですか?。」
「よい。自らの選択だ。」
「全て選択してきての今です。」
「これからも我らは自ら選ぶのでしょう。何度でも、お聞きください。」
「では・・・・それぞれの出来る事を。いずれまた。」




