夢の到達点
長くなりましたが、いつまでたってもプーニャさんにたどり着けないので盗賊ギルド変は書ききりました。
次からやっと閑話の時系列です。
次の日の朝・・朝?昼にはなっていない頃起きだしてごはんを食べてから動き出す。遅い朝ごはんは宿の名物、夢サンドだ。普通のハムと卵と野菜のおいしいサンドイッチとコーヒーのセットだが、残念ながら夢は入っていなかった。
まずは冒険者ギルドに向かう。昨日衛兵にしたのと同じ報告と、もし出会えたらプーニャさんを見てみたい。のんびりとギルドの扉を開けると中は閑散としていた。まぁ当たり前だ。冒険者は朝一で割りのいい依頼を奪い合う。暗くなって活動するのは効率も悪いから出来れば昼すぎくらいまでに依頼を終えて帰ってくるのだ。自分の実力にあった割のいい仕事を長く続けるのが生き残るコツなのだ。何人か食事をしたり座ってだべったりしてるけど、女の子は見かけない。プーニャさんがいないのは一目で分かったので受付嬢の所へ行く。人気があったのは何十年も前だろう事が伺える女性が一人で受付に座っていた。受付に座る女性は年齢にかかわらず受付嬢なのだ。他のギルド職員もほとんど見かけないし、田舎のギルドなんてこんなものだろう。
「見かけない顔だね・・・。こんな田舎になんの用だい?」
「昨日の夜到着したから顔出しだよ。この町で依頼をするつもりもないしね。」
Eランクのギルドカードを渡しながら雑談を続ける。
「なんだい。Eランクの初心者じゃないか・・。なんでこんな町に。」
「おっと!侮ってもらっては困るな!オレ達は最近魔王を倒した勇者PT”光の翼”について行って荷物持ちと雑用をこなしたPT”闇の住人”!。ただのEランクPTじゃないぜ。」
「・・・なんだいこりゃあ。確かに唯のEランクPTじゃないみたいだけど。」
ギルドカードにはギルド本部や所属支部の評価も記載されている。身柄の確認と同時にそれを読んだのだろう。なにせ依頼も受けないしランク昇格試験も受けないのでEランクですが大分強いみたいです!多分!って評価がついているのだ。ハッタリはきいているがよく考えなくてもEランクはEランクなのだ。権力とか一切ない。受付嬢のおばちゃんが驚いている間に昨日の襲撃からの顛末を軽く説明する。
「盗賊ギルド?スカウトギルドじゃなくて?」
反応もセリフも同じだった。あんなに堂々と名乗っていたのに町中の人には特に知られていないらしい。
「そういえば朝からギルド長が衛兵隊の詰め所の方に呼ばれて行ってるね。・・・まぁこっちも気を付けるよ。それでホントになんの用なんだい?」
「このギルドにいるプーニャさんって女の子の話を知人から伺いましてね。是非ウチのPTに入って欲しくていわゆるスカウトにきたのですよ。」
急に目を細めて睨みつけてくる。
「なんだい!あの子を騙してどうするつもりだいっ!あの子は今のPTで頑張ってるんだ。余計なちゃちゃいれるんじゃないよ!。」
大事にはされてるようだ。
「もちろん。本人が望むのならという話で、無理強いするつもりは欠片もありません。一度も実際に会っていませんしね。今日は見当たらないようなのでまた来ますよ。」
踵を返してギルドを出ていくけど受付嬢は得になにも言ってこなかった。
外へ出るとどこからともなくダークが現れメモを渡してくる。プーニャさんがお世話になって、まだ寝泊りしている孤児院の場所だ。なんでコイツは一言も会話しないのに情報だけはとってこれるんだろう。スカウトすげーや。とりあえず人物調査というか周りの評判なんかを聞いて回ることにしよう。
衛兵の詰め所がある門の近くから離れた町の隅にその孤児院はよくある教会と併設されていた。孤児院へ近づくと人だかりと怒鳴り声が聞こえてくる。っていうか人だかりが全員昨日の横ボーダーシャツだ。海賊だ。
「おうおうおう!ばあさん!いい加減ここから出てけって言ってるんだよ!!せっかくオレ達が親切に家も!ガキ共も全部タダで引き取ってやろうって言ってるんだ!この書類にサインして出てけばいいんだよお!!!」
気の弱そうな修道服を着たおばあさんが震えながら前に立っている。建物の影から何人か子供が不安そうに様子をうかがっている。
「あなたたち。往来で見苦しくてよ。五月蠅いからおだまりなさい。」
ソフィがイライラしながら声をかける。
「ああああん!なんじゃおまえはぁ!このオレ様を盗賊ギルド地上げ担当海賊船長もっちゅりん様と知ってて舐めた口きくんかぁ!」
「知らないけど黙りなさい。息もくさいから黙りなさい。」
もっちゅりんは真っ赤になってハゲ頭を振り向かせたが、こちらを見てニヤリと笑った。
「おめぇらがドフィを倒したっちゅうヤツラじゃな!あんな雑魚を倒して調子にのっとるようだが!オレ様は全てにおいてゴムの上位互換!もちの体を手に入れた餅海賊!ここで邪魔者は始末じゃあ!おめぇら!!」
「「「へい!!!」」」
イヤな予感がする。
「歌えええ!」
「「「夢を~しんじ~て~ぇ♪生きていけば~いいさ~とぉ~♪」」」
雑魚と船長が歌いながら突っ込んでくる
「ダーク!とりあえず捕縛!。」
「”奈落”」
海賊全員の足元に黒い穴が開きみんな落ちていく。捕縛用の魔道具なので死んではいない。ほっとっくと2時間位で時間切れで地面から生えてくるだけだ。ソフィは実は昨日から外へ出かける時はずっと昨日取り出した魔剣をぶらぶらさせて持ち歩いている。ダークが認識阻害でそれとなく気が付かないようにしているのだ。だけど、子供も見てるし孤児院の前で全員真っ二つはまずい。やつらは後で始末しよう。
海賊共が消え去ると建物から子供が何人も飛び出しておばあさんに群がる。
声をかけようとしたら子供の中から声が上がった。
「「「ああー母ちゃん!(院長せんせー!)(ママ!)オレ(わたし)達を助けてくれた人達この人達だよーー」」」
「まぁ!・・・・まぁまぁ・・・。なにやら子供達を助けていただいたそうで・・。先ほども・・。あの方達はどちらへ消えたのかしら?」
「オレ達に恐れをなして逃げて行っただけですよ。気にしないで。」
「あの、碌なおもてなしも出来ませんが、是非お茶でも飲んでいっていってください。」
「ええ。ちょうどお話をお聞きしたかったのです。少しだけ、お邪魔させてください。」
孤児院の中へ案内され安いお茶を出してもらう。周りを見渡してもあまり経済状況はよくはなさそうだ。スイーツの町で買っておいた焼き菓子を何個か取り出してお茶請けにしてもらい、子供達にも食べてもらう。ちょっとソフィの眉がぴくぴくしているけどさすがに子供の前で醜態はさらせないのだろう。
軽く孤児院の話を聞きながらプーニャさんの話を聞く。町の宿屋は高いからといって孤児院に寝泊まりして宿代といって少ない稼ぎを置いていくらしい。いい子や。噂を聞いてPTの勧誘に来た話をすると喜んでくれた。
「あの子にはちゃんと自分の幸せを見つけてほしいですからね・・。そうなったら、よろしくお願いしますね。」
院長先生は喜んでいたが子供達は微妙そうだ。大好きなおねえちゃんが町からいなくなるからしょうがない。プーニャさんをみて冒険者になりたい子供もいるだろう。
「あー、拠点は王都になるからこの町は離れるけど、別に2度と戻らないって訳でもないし、本人が望むならちょこちょこ里帰りでもいいと思いますよ?」
「いいのですか?」
「ええ、ウチのPTそんなにがっつり探索にかかりきりとかないんで。」
「ありがとうございます。」
ふふふと上品に笑いながら、院長先生も子供達も嬉しそうだ。プーニャさんの事を思っていても別れるのは院長先生も寂しかったのだろう。
1時間ほど話して、プーニャさんはいい子だというのは分かった。子供達に見送られ孤児院を離れる。
適当な路地裏の広場で奈落に落とした海賊達をリリースする。ダークに結界を張ってもらってソフィが始末していく。戦闘?はカットだ。もっちゅりんに自白剣を刺して盗賊ギルドの本拠の場所を聞く。
「オレ様の夢は海賊の国を作る事だ!部下たち全員と”家族”になるんだ!死んじまったけど・・・。盗賊ギルドの本拠地は裏通りにある酒場”海賊の隠れ家”の中だ。まさか海賊の隠れ家に盗賊ギルドがあるとは思うまい!」
情報はもらったので殺しておいた。
酒場”海賊の隠れ家”にいく狭い路地に一人の男が立っていた。いままでとは毛色が違う。剣闘士のような恰好に頭に左右にツノ(片方折れている)のついたヘルメットをかぶって斧を持っている。
「ここから先は通行止めだ。盗賊ギルド暗殺担当。ヴァイキングの末裔の血を引いてるかもしれない斧使いザジが相手だ。 くらえ!パワーアックス!」
もう暗殺でもなんでもないし、それ山賊の技だし、手下がいないっぽいから歌がないだけマシと思う事にしよう。もちろん斧が振り下ろされる前にダークのダガーが胸に刺さっている。どっちが暗殺者か分からないほど鮮やかだ。
「オレのゆ・・めは・・」自白剣を刺していないのに夢を語り始めた。知りたい事もうないけど。
「海岸沿いのボロイ家の中で齢をとったオレが昔を懐かしみながらギシギシ音をたてるロックチェアーに揺られるんだ・・・い・・つか・・」
じゃあ暗殺者とかやるなよ!暗殺でもなんでもなかったし!あああああこの町のやつらは狂ってる!夢って言えばなんでも許される訳じゃないぞ!
心の声が漏れていたようで女性陣が冷たい目で見てくる。そういえばオレも夢を追ってこんな所まで来たんだった。ちょっと落ち着いたぜ。夢はいいけど邪神はダメだ。OK。
もうメンドクサイから盗賊ギルドを潰しておく事にしたオレ達は裏通りの酒場”海賊の隠れ家”についた。両開きの扉を開けると中には10人ほどの海賊姿の男達とバーのマスターがいた。
「おいおい。ここは子供の遊び場じゃねえぜ。海賊onlyなんだ。ケガしないうちに帰んな。」
歌いだす前に全員殺しておいた。路地裏からずっと結界ほどではないけど認識阻害をダークが使っている。たとえ町中にたくさんの死体が転がっていてもオレ達の姿を見た者がいなければ犯人もどうせ分からない。いやまぁオレには邪神の海賊の力が群がってるのが見えてるからどうせ全員調べれば死刑だしね。
ああ、もちろんオレが殺すと時間がかかるのでソフィがかたずけた。ちょっと運動出来ている気分らしくなかなか機嫌がいいけど、さっき孤児院で一緒にお菓子を食べたからまったく減ってないハズだ。言わないけど。
ダークが床に隠し扉を見つけたので降りていく。奥の部屋で一人の痩せた男がソファに寝転んで書類を見ていた。
「なんだぁ・・・上が五月蠅いと思ったら、おまえら誰だ。」
「海賊じゃ・・・ないだと・・。」
「クク、ここは盗賊ギルドだぜ?頭が海賊な訳ないだろう。」
まぁ護衛もいなかったし、適当に拘束して自白剣だ。
「なにを企んでいる?また自分の夢でも語るのか?」
「クククク、オレには夢なんてないさ。」
お、初パターンだ。
「オレは夢を追う男達を応援する男・・・。みんなの夢が叶うのがオレの夢だ・・。」
盗賊ギルドの首領がなんか言ってる。
「海賊はみんな死んだぞ。」
「あんなアホどもの夢はどうでもいい。オレはあの方の夢を応援してるんだ。」
自白剣効いてきたらしい。
「あの方だと?」
「ああ、オレを衛兵に突き出してもムダだぜ?オレのバックにはこの町の領主様がついてる。あの方は表向きしっかりと町の統治をしながら、オレ達を見逃して自分の屋敷に誰も入れないプライベートエリアを作ったんだ。そこには領主様が気にいった女を奴隷にしてエロいメイド服を着て待機させている。そして夜な夜な繰り広げられるつまみ食いの酒池肉林。あのお方は・・・果てしなく続くメイドリームを探求する永遠の夢追い人!さすがこの町の領主様だぜ!」
とりあえず殺そうとすると続きを喋りだした。
「今も!町で見かけた緑髪のハーフエルフが気に入ったらしくてな!人攫いに奴隷商人に・・多くのエロメイド計画が動いている最中なのさ!」
あああああ・・・巻き込まれたんじゃなくて・・・・・ブーニャさんを追ってたからこっちから突っ込んでたのかあああああ。まぁいいや。これでアホな計画は潰れてプーニャさんが安全になるんだから・・・。
「ところでさぁ。おまえはなんで衛兵に突き出してもらえると思ってるワケ?」
盗賊ギルドは滅びた。まぁ町中にはまだ海賊の何人か隠れてるかもしれないけど。領主はダメだ。暗殺も力づくも出来るけどやってもいい事ないもん。そんな訳でロックパッカー商会へ赴くと全て分かってるような笑顔でジェイルさんが迎えてくれた。顛末を話して領主の処分となんとか無事にエロメイドレイをさせられている人達を助けるように王都、ひいてはナーラさんに連絡してもらう。
お茶を飲んでいる間に返事が来て騎士団長が例の件でこちら方面に向かうのに手勢だが騎士団員50名ほど治安維持や決闘に立ち入られないように連れて行っているらしい。その人達を廻して捜査捕縛の手筈を整えるので、2.3日で方がつくと教えてくれた。ルビーさんも光の翼が今あまり目立ちたくなくて動けないので休みも兼ねてPTごと送りだしたらしい。奴隷のほうもなんとかなりそうだ。
なんとかならないのはオレの夢だけだ。いろいろやっていたらもう暗くなっていた。宿でソフィに抱き着いて泣き言を言いながらくんかくんかしたら肘が落ちてきて床で寝る事になった。オレは眠れる森の美女の保持者。何処でも何時でも寝る事が出来るのだ。おやすみなさい(不貞寝)。




