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かみさまのいるせかい  作者: MIH
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夢の町アカーシャ

 なんとか町の門にたどり着いたのでさっさと中に入って宿に行きたいけど、奴隷商人と子供たちを放ってはおけない。ここで適当にすると後で逆にめんどうになるヤツだ。

町の門番がいたので衛兵でできるだけ上の人を呼んでもらう。しばらく待っていると衛兵隊長だという大柄な男の人が町から出てきて話を聞いてくれた。まず、乗合馬車が襲撃されて撃退したこと。仲間の奴隷商人を見つけたら、おそらく攫われただろう子供達を見つけた事、乗り合い馬車の御者は逃げて行ったけど賊の反応から仲間だろうから捕まえてほしい事を話す。賊が海賊だった事は今はスルーだ。言っても訳が分からないし。到着するまでにシルヴィがなんとか聞き出した名前と住所のメモを渡してとりあえず町にいれてもらって子供たちの家族に連絡する事をお願いするとすぐにうなずいて町の中へと案内してくれた。

 部下を何人か呼んで掻い摘んで対応を指示する。門の近くの衛兵詰め所の牢屋に奴隷商人を放り込んで、子供達はたまたま来ていた衛兵隊長の奥さんに見てもらって広めの部屋へ、部下がメモの家族の元へと走っていった。オレ達は事情聴取の続きだ。疑われてるとかじゃなく、安物だがお茶も出たのでもう少し詳しく状況とこちらのお願いを話す。

「襲ってきた海賊?とか名乗った変な奴らは全員返り討ちにしたんですけどね、奴隷商人はもう何度も奴隷を売ったらしいんですよ。子供達も発見した時は奴隷環と奴隷紋で動けなかったんだけど、たまたま解除のアイテムを持っていて自由にできました。売られちゃった人を出来るだけ探し出して奴隷から解放してやってほしくて奴隷商人は殺さずに連れてきました。後をお願いできますか?」

「もちろんです!。町の治安の協力感謝します。それにしても、海賊・・・海賊ですか・・。」

「オレ達には訳が分からなかったんですが、なにか心当たりが?」

「ええ・・・実は・・・しばらく前から妙に海賊のコスプレをした人達が町中をうろうろしているなぁと不思議に思っていたのです。まさか本当に犯罪者だったとは・・。」

えええ。

「実はこの町は夢追い人の町と言われていまして・・・いや、別にナニかがあるわけじゃないんですが、どうも住民に自分の夢を追いかけるロマンチストが多いというか・・ふわふわしているというか・・。特産品は夢が叶った人の自伝とか英雄譚とか、今日から人生を変えるなんて謳い文句の本がたくさん売っています。面白いので買ってみてください。・・・・そんなわけで、街中に海賊のコスプレをする人がいても何か悪い事をしている訳でもないし変なやつらだなぁと・・・・申し訳ないです。」

「海賊がこの町には盗賊ギルド(シーブズギルド)があって仕切っているって言ってましたけど知ってます?」

「盗賊・・ギルド?スカウトギルドじゃなくて?」

 この世界には迷宮や森の探索などに必須なのでスカウトの職業がちゃんとあるし恩恵もある。もちろん善神側の恩恵だ。だけど、カギ開けや罠の設置など悪用しようとすると危ない技能も多いのでスカウトギルドがあってちゃんと管理されている。ギルドに登録してあるスカウトじゃないと技能を使ってはいけないし、今どこにいるのかの所在確認は結構細かくやらないと怒られる。その代わりスカウトが集めた雑多な情報なんかの売り買いもしているし、技能に必要な道具類なんかも専門に売っている。そりゃあ鍵開け用ツールとかそこら辺の道具屋で売るわけにもいかないし、スカウトには必須だし、公的な認められているギルドなのだ。

「この町に裏組織みたいなのがあって、悪いことしてるらしい。海賊も、奴隷商人も邪神の恩恵だよ。ちょっと前に王様から全国民にお触れが出たと思うんだけど。」

「ああ・・・あれ・・か。え?そんな大きな話なのか!?」

一週間ほど前に出発する直前に至る所に看板が立って民衆に掲示された。邪神の声に心傾けし者は将来魔王となるかもしれない災厄の芽である。邪神の恩恵を持つ者はいかなる経過、情状を問わず死刑とする。民は甘言に惑わされず神に与えられた役割を持ってこれまで通りに過ごすように。

バレたら死刑確定なのだ。抑止力としてはいい感じだと個人的には思う。それでも欲望に従う人間はいるだろうけど。・・・夢追い人とか・・か?。

田舎だからお触れが出てもこの町には関係ないと思っていたのだろう。顔色も変わっている。

「とりあえず、冒険者ギルドか教会から鑑定水晶を借りてきなよ。奴隷商人が邪神の恩恵だって分かるし告知されている通りそれで死刑確定だ。でも情報は全て搾り取ってからにしてね。あと町中や町門で怪しげな人がいたら鑑定してみてもいいと思うよ。」

「わ、わかった!。今日はもう出来る事も限られるが朝一で衛兵を集め全員に通達する!。」

「ついでに、奴隷を開放するアイテムは数はそんなにないだろうけどロックパッカー商会に言えば融通してくれるはずだよ。奴隷にされた人がたくさんいた場合は・・・王都の勇者PT光の翼のルビーさんならディスペルくらい使えるはずだから派遣をお願いしてね。あとあと、奴隷商人のヤツ奴隷を自殺させて証拠隠滅を図ろうとしたから、捜査にしろ捕縛にしろ慎重にお願いしますね・・・。それで奴隷にされた人達が死んだら気分が悪いので・・。」

「行方不明者や、捜索願いの依頼が衛兵や冒険者ギルドに多くありました。必ず探し出します!。」


 解放された時にはもう暗くなっていて、子供達は保護者と帰っていった後だった。隊長に宿屋を紹介してもらい一旦宿屋で部屋を取る。宿屋”夢のゆりかご”は名前以外は清潔そうないい宿屋だった。

ほんともう寝たいけどまだ今日は終われない。宿の部屋で適当にディスペルの魔道具をシルヴィに作ってもらって夜の中ロックパッカー商会へと向かう。隊長にはああ言ったけどロックパッカー商会には今から魔道具を渡すのだ。


 店の営業時間は終わっているようだが、中に明かりが見えるので人はまだいるのだろう。オレは懐からVIPカードを取り出す。世界で10枚ほどしかないロックパッカー商会のVIPカードはほとんどナーラさんの取り巻きに配られている。これを提示すれば全てに優先してこちらの意向を叶えてくれるのだ。

オレがVIPカードの力で店に入れてもらおうと扉をノックする前にするりと入口が開く。長身のちょび髭を生やした初老の男性が姿勢よく、目の前に立っていた。

「お待ちしておりました。・・・私この町のロックパッカー商会店長及びこの地域の統括マネージャーをさせていただいておりますジェイル=ロックパッカーと申します。歓待の用意が出来ておりますのでこちらへどうぞ。」

ロックパッカーの身内だった。話が早くて助かるけど、まだVIPカードは見せていないんだけど・・。

清潔な応接間へ通されて高級なお茶が出される。他の店員さんとかはもう誰もいないみたいだ。

ソファに落ち着いた所でジェイル氏が立ち上がり居住まいを正したと思ったら深く・・・深く腰を折る。

「この度は我が最愛の孫娘、マリアンネ=ロックパッカーを助けていただき、ありがとうございます。」

「ああ~まりあんねちゃんのおじいちゃん~。」

全員シルヴィを驚きの目で見ている。そういえば一人いい服を着た女の子がいたけど名前を知っているのは聞き出したシルヴィだけだ。

頭を上げたジェイル氏がニコッと笑う。

「”闇の住人(ナイトメアパーティー)”の皆様の事は本店スカーレット及び会長ロックパッカーより全店舗責任者に通達されております。本日はどのようなご入用でしょうか?」

VIPカードがなくても通達済だった。この人は孫娘が帰ってきて状況を判断して、来るかどうかも分からない用件も分からないオレ達を店で待ってくれていたのだ。

 隊長にしたのと同じような説明をして、奴隷解除のディスペルの魔道具を10個ほど渡す。衛兵が買いに来るかもしれない事、足りないかもしれないけどとりあえずの分だし、悪用されるとイヤなので誰に使用する分か確認して連絡を取り合い出来るだけ安く売る事をお願いした。

「承りました。また、今回の事案の重要性を考え情報を纏め王都へと魔道具にて連絡しておきます。なにか進展か、分かった事がありましたら何時でもおいで下さいませ。」

「いやぁ、訳も分からず巻き込まれただけで、この町には別に用事がちゃんとあるんですよー。衛兵のみなさんに頑張ってもらって、もうかかわらないと思いますよー。」

「承知いたしました。」

「あと、さすがにこんな遅い時間には訪問しないのでずっと待機とかしないで大丈夫ですからね。」

ジェイルさんはニコッと笑って繰り返した。

「承知いたしました。」


 ジェイルさんは外まで見送りに出てくれて見えなくなるまで深々と再び頭を下げていた。歩きながら聞いた話だと誘拐だと思われていたので身代金とか用意したり犯人の連絡を待っていたらしい。それが、まさか奴隷にされてそのまま別の町で売られようとしていたとは思いもよらなかったようでマリアンネちゃんの両親も是非晩餐へ招待したいと言っていたらしい。オレ達の情報を知っていたジェイルさんは迷惑になるからと宥めて店へと一人で出てきたようだった。


ようやくプーニャさんに会いにいける。変な町だけどこれ以上ナニもないだろう!きっと!。


まぁ今日はもう宿に帰って寝るんだけどね。いい夢が見たいなぁ。

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