Result & next Order 前
長くなりそうなので分割
魔王ルルグ=アシュレイ討伐後、急いで王都へ戻る。魔王討伐の報告と、残ったゴブリン、デミゴブリンの処理をお願いしないと避難した人々が街へ帰れない。
あと2日ほどで王都に着くあたりでオレ達闇の住人は馬車を降りた。このまま王都まで載っていったらそのまま王城へご案内なのだ。大人達はナーラさんの根回しが終わっているハズだけどヴィルヘルム君と勇者以外の光の翼の面々が獲物を狙う肉食獣の目でこちらを見ている。もちろんオレじゃなくて主にシルヴィだけど。
「それじゃあオレ達はジューシーの街へ寄るから、ここでお別れだ。ナーラさんの根回しも終わってるだろうし、前回と違って今回は間違いなく勇者とヴィルヘルム君がルルグ=アシュレイを倒したんだからオレ達の事は予定通り気にしないでね。」
「・・・ありがとう。光の翼で手伝える事があったら是非声を掛けてくれ。」
ヴィルヘルム君はそういうけれど結構勝手に名前を使っているのはナイショだ。
「そんな事より後始末の話をちゃんとお願いしといてね。あのデミゴブリン姫将軍ほっとくと魔王になるよ・・。」
「そうだね・・。魔王は倒したけどまだ終わってはいない。ウチのPTはこれ以上関わらないと思うけど急いで王都へ向かうよ。 またね。」
いつもの爽やかな笑顔でヴィルヘルム君は馬車へ戻っていく。
少し離れた所で女性陣が抱き合って別れを惜しんでいる。・・・いや、フツーにシルヴィを連れて行こうとして引き離されているな。
「サクラ ドコがいいのかさっぱり分からないけれど、まぁがんばりなさい。」
「サクラさん~ファイトですよ~。」
「ソフィアも、シルヴィも吉報を期待していてね!」
名前で呼び合うようになった王女がソフィとシルヴィに激励されている。もちろん、ダークはいない。アイツは闇であり光なのだ。そこに在るのが当たり前であり、だからこそちゃんとその場にいるのに誰も気にかけない。アイツ旅の間一言も光の翼と話さなかったぞ。光を取り込んだハズなのに何処までも闇の住人なのだ。かっけえ。もちろんオレは旅の間ヴィルヘルム君以外の光の翼の面々から一度も声を掛けられなかったので作戦の時以外は話していない。実はオレも闇の住人だった。
さて、王城へ連れ込まれたくなくて馬車を降りたのだけれどジューシーの街に寄るのは本当である。そこそこ手持ちもあるし以前からソフィーが買ってきた雑誌などで特集されていたりしてみんな行きたがっていたのだ。しばらく・・・金があるうちはゆっくりするつもりだ。
王都からほど近いジューシーの街は近辺を治める領主のお膝元の街だ。2代前の領主が大の果物好きで自分の領地の農民に小麦より果物を作れと補助金まで出して奨励したのだ。各地から苗を取り寄せ、2.3年ではとても結果など出ない領民を食べさせ先代領主の頃からようやく軌道に乗せる事ができたらしい。おかげでこの領地では一年を通してなにかの果物が食べられるように多様な栽培がされ、スキルの力を使った美味しさを上げる品種改良などで国内一の果物パラダイスとなっている。そして季節ごとの多様な果物が領都へと集まり、その果物を使った多種多様美味なスイーツ店が数多く連なりしのぎを削っている。
ソフィーの持っているガイドブックは絶対に行く店チェックだけで30を超えているので、どの道しばらくはスイーツフェスティバルである。オレはほどほどに楽しんで後は宿で寝る予定。ビバ!スローライフ!。スイーツフェスティバルがスローライフかどうかは個人の見解となります。
めくるめくスイーツのフェスティバルに溺れ2週間ほどたった頃、宿に執事がやってきた。普段オレが寝ている事も、食事の時は起きている事も把握していたその執事さんは何処かで見た事があるとは思ったが、本人が教えてくれてピンときた。ナーラさんとこの執事頭だ。・・・え。
朝食を食べながら話を聞こうとすると、まずはと言って滑らかな所作で懐から手紙を取り出して渡してくれる。中には綺麗な字で”そろそろ帰ってきなさい”とだけ書いてあった。昨日から焼き系のスイーツに移ったのでもうしばらくココにいると執事さんに言うと彼は頷いて全て分かっているように言った。
「ナーラ様よりアル様へメッセージとして、”急いだほうがいいわよ”だそうです。主は様々な後処理の為現在王城内にて動いておりますが、皆様をお連れするよう仰せつかっております。直接王城内へ入ってもらいますが、極プライベートな空間にて少しお話をして、誰にも知られぬようにPTハウスへと送り届けるよう指示をいただいております。」
「・・・」
そりゃあお話したい事はあるだろうけれど・・・急いだほうがいい事に見当がつかない。だけど・・・ナーラさんがそう言うのだからそうなんだろう。
「ソフィ。申し訳ないけど王都へ戻るよ。続きのスイーツは近いうちにまた来るとしよう。」
「しかたありませんわね。少しはお休みを堪能できましたし、一旦戻りましょうか。」
ダークもシルヴィもうんうん頷いている。フルーツ以外のスイーツが食べたくなった顔である。
出来る執事がまた、懐から今度は雑誌を取り出す。どうやら懐に空間拡張がかかっているらしい。
「ありがとうございます。これは移動時の暇つぶしですが、どうぞ。私は表の馬車にて何時でも出れるように待機しております。」
そういって執事は踵を返すと歩いて行った。手の中にはちょっと忘れかけてた18禁じゃない無頼毎日。魔王討伐の顛末が特集されているようだ。
荷物をまとめて自分達で食べる用のお土産をマジックバッグに放り込んで入り口に向かうと、なんと連泊した分の宿代が全て支払われていた。執事スゴイ。ステキ。
馬車に揺られ王都へと向かうが、ぶっちゃけ乗り物酔いするのでもらった無頼毎日は読めなかった。休憩時間なんかに一気に読み進める。まぁ内容は少し脚色したルルグ=アシュレイ討伐の様子。勇者が一点突破で聖剣を失いながらなんとか魔王を倒したが満身創痍で光の翼が命がけで撤退してきた事が書かれている。もちろん荷物持ちの雑用係のPTの話は一切出てこない。で、その後の話。勇者は生き残ったがしばらくは勇者の力が使えない状態となっている事、残ったゴブリンデミゴブリン達は今回一緒に行く予定だった2組の勇者PTと娘を奪われ怒り狂っている公爵が自ら騎士団を率いて姫将軍の討伐を行う事がかかれていた。そういう事になったらしい。アリサさんの時間も稼げるしなかなかいい作戦だと思いました。
王都へ着いても門も城門も一切止まらずに馬車は王城へと入っていく。庭の端を通りすぎ、いかにも裏口、台所!みたいな扉の前で馬車は止まる。御者をしてくれた執事さんが扉を開けて案内してくれる。本当に台所だった。台所を通り過ぎたすぐの部屋の扉を執事さんが3回叩く。しばらく待つが反応がないのを確認して中へと通してくれる。部屋は応接室のような豪華さはないけれど下働きの休憩室のような汚さはなく、ソファーと机がある落ち着いた部屋だった。
「お茶をお持ちしますので、主が来るまでしばらくお寛ぎください。」
綺麗にお辞儀をして執事が部屋を出て行ったので適当にソファーに座る。すぐに執事が戻ってきてお茶を淹れ始める。メイドさん所か人の気配がまったくない。言っていた通り誰にも知られないようになっているんだろう。お茶が配られ王城御用達のお茶請けが出された所で扉が4回ノックされる。
執事が音もなく扉を開けてナーラさんを迎え入れると自分は部屋を出て行った。
ナーラさんは空いている席へ座りにこやかに微笑んだ。もちろん出来る執事は主の分のお茶もちゃんと用意してあった。
「みんなゆっくり休んでいる所をごめんなさいね。どうしても直接お礼が言いたくて。・・・ヴィルヘルムを・・・将来の義娘達を助けてくれてありがとう・・・。」
そうかーーこの世界にいままでなかったエッチな下着で誘惑して既成事実作戦は成功してしまったのかーー。
顔に出てしまったらしいオレにナーラさんは慌てて言う。
「ふふふ。まだ未来の可能性の話よ。決めるのは本人達なんだから、余計ない事言って邪魔しちゃダメよ。」
よかった。一応まだ無事らしい。正直羨ましいとは思うけど、がんばれヴィルヘルム君。
ナーラさんがポケットから手のひらほどの黒い球を取り出すと”一応ね”といってその球を軽く握った。
「この魔道具最近手に入ったのだけれど、すごいのよー。範囲は2m程だけど中の会話が絶対に漏れないの。」
知ってる。携帯トイレの防音性能に目を付けたスカーレット店長にお願いされて貴族用に使い切りの魔道具の作成をしたのだ。数は大分少なくしたけど。中に小さな剣のチャームが入っていてソフィが無理矢理防音の神の力を押し込んでシルヴィが壊したらその力が解放される魔道具もどきにしただけの物だ。ちなみに周りに聞こえなくても神様には聞こえるのである意味使えない。
「へーー」
とりあえず珍しいフリをしておく。他のメンバーは王城御用達のお茶請けが美味しいらしく聞いてはいるようだが口は挟んでこない。魔道具の話はスルーしてそのままナーラさんが話す。
「それで、お礼なんだけどね・・・。以前から調べていたもう一人のおならの恩恵の女の子の居場所が分かったから教えてあげるわ。」
オレは無意識に立ち上がっていた。両手を天に掲げ涙を流す。
ついに!夢見ていたオレの彼女(予定)に会えるのだ!
立ち上がったオレをソフィアがジトっとした目で見上げていた。




