明るい家族計画
商談が大成功に終わって部屋へ戻った。
とりあえずシルヴィに借りた金貨5枚を7枚にして返却してみんなで不動産屋へ。
アパートの部屋から一軒家に引越しだ。丁度いい物件があってよかった。荷物はマジックバッグがあるから引越しはすぐに済んだ。
食べ物を買い込んで引越しパーティーだ!ソフィが調べた美味しいお店の情報が大活躍だ!
次の日拠点を移した事を報告に冒険者ギルドに行くと受付のおねーさんに引き留められる。
オレ達はシルヴィの後ろに隠れて話を聞く。
「闇の住人に”あの”ロックパッカー商会から指名依頼が入っているんですが・・・なにか心当たりはありますか?」
追加注文が入っていた。内容を確認すると、特別な薬草を5本銀貨10枚で。ひゃっほう!
「実は知り合いの伝手を頼って支援をお願いしてみたんですよ。生活が苦しくって。たすかったー。」
受付嬢さんはもにょもにょした顔をした後残酷な宣告をする。
「指名依頼が入る冒険者をFランクにしておく訳にはいかないので今日からEランクです。みなさんギルドカードを渡してください。」
「・・・・・・・・」
「いやいや、指名依頼っていってもお小遣いみたいなもので、ギルドに貢献もしてないのでまだまだEランクは早いですよ。」
「ダメです。ロックパッカー商会が支援するほどの冒険者なんですからさっさと依頼と試験を受けてCランクになってください。」
ダメだった。まぁしかたがない。学校を出ればFランクなのだ。なにか仕事をすればすぐにEランクになってしまう。だが!Dランクからは一応試験のような物もあり依頼の実績も必要なので上げようとしなければ上がらないのだ!最強のくそ雑魚Eランク冒険者を目指そう。
本来の目的の新しい家の場所を伝え、お金を卸して受付嬢さんに大分胡乱な目で見られて、しかたがなくEランクにランクアップしたら、冒険者ギルドなんてとっととおさらばである。出ていくときに受付嬢が依頼ー!とか叫んでいた気もするが別のPTの事だろう。
せっかくなので追加機能を加えたトイレを作ってもらってみんなでロックパッカー商会本店に出向く。
今日も美しいアンダルシアさんがすぐにやってきて全員店長室でお茶が出される。
「ごきげんよう。譲っていただいた商品は大好評でね、表立って宣伝しないようにと言ってはあるんだが、次々と注文が入ってね。・・・今日はどうして本店へ?支店には約束通り連絡を入れてあるけど。」
スカーレット店長はにこやかに喋りながらオレ以外をしっかりと観察している。
「追加注文をいただいた品の納品と説明。あと、ついでですがPTメンバーの紹介ですね。」
「説明?」
「はい。実は少し思いついて携帯トイレに機能・・というか恩恵を少し追加しました。今回の5個からはすべて付ける予定なのですが、”トイレの女神様”の恩恵がついています。」
スカーレットさんの顔に驚愕が浮かぶ。この世界に数多いる神々の中には”おならの神様”がいるのだから当然ながら”トイレの神様”もいる。しかも、他の神々は特に男女知られていないのになぜか”トイレの神様”だけは女神様だと知られている。滅多に現れないそうだが、10才でトイレの女神様の恩恵をもらった子もいる。トイレの女神様は女の子にしか微笑まない。過去に恩恵をもらった子は全て女の子で恩恵を授かる時、女神様の声が聴こえるらしい。だからこの神様だけは女神様で確定なのだ。聴こえる内容は極秘で誰も内容は教えてくれないらしいが。恩恵の内容はすごいものではなく、便秘の解消、快適なお通じ等あとトイレ内の平和とか。
「恩恵をもらった人ほどの効果はありませんが、ちゃんと効くと思いますよ。」
「・・・金貨60枚だ。」
「はい。それでPTメンバーですが、黒いのがダーク、可愛いのがソフィア、ロリっ子がシルヴィアです。」
「闇と光を従え神に挑む者。ダーク=シャドウ=シャイニングだ。」
立ち上がりかっこいいポーズをしながらダークが。
「可愛いワタクシがソフィア=カーバンクルよ。」
上品にティーカップを傾けながらソフィアが。
「ろ、だれがろりっこですかーー!わたしがいちばんおねーちゃんなのですよーーー!あ、、シルヴィアーナ=シン=クラフトマイスターです。」
子供が怒りながら。
それぞれ自己紹介をする。
スカーレットさんは一人一人じっくり見ながら笑顔で対応する。
「スカーレット=ロックパッカーよ。ここロックパッカー商会本店の店長を任されているわ。みんな今後ともロックパッカー商会をよろしくね。」
営業スマイルで無難な挨拶をしているが、目線は完全にシルヴィをロックしている。天才錬金術師シルヴィアーナさんが本物か疑っているのだろうが、こちらにはどうでもいいことである。
携帯トイレの納品を済ませて支払いの確認のサインをしていると店の案内をアンダルシアさんにしてもらっていた3人がニコニコとスリープシープの羽毛寝袋を抱えて戻ってきた。
「用事はすみましたわ。」
「こっちもだ。スカーレット店長、納品は支店の予定だけどロックパッカー商会には買い物に普通に寄らせてもらうと思うから、特に対応してくれなくてもいいからね。」
「わかった。販売は限定するから頻繁ではないだろうが、また依頼をさせてもらう。今後ともよろしく。”闇の住人”。」
ロックパッカー商会を出て家に向かいながら店をはしごする。3人が仲良くなったというアンダルシアさんに聞いた美味しいスイーツショップをめぐり、ソフィがリサーチしてあった外街のスイーツを買い集め今日はスイーツパーティーだー!ひゃっほう。
さて、ようやくここからが本題である。
美味しいスイーツを食べ散らかして、シルヴィにスキルなしでいれてもらった紅茶を飲みながら、まったりと今後の話をする。
「えーー。いろいろあって流された結果当初の目標、スローライフがマジヤバイので現状の確認、情報の共有、今後の見通しと目標を発表するので食べながら聞いてください。」
3人はもぐもぐしながら頷いている。もちろん全員次の次に食べる分のスイーツまで確保済だ。
「王都のダンジョンで適当に稼いでスローライフ。さすがに神様も王都まで直接ちょっかいはかけにくいだろう作戦は、ダンジョンの変な難易度のせいで暗礁に乗り上げかけていましたが、我らがおねーちゃんシルヴィアーナ先生のおかげでめでたくお金の目途がつきました。はくしゅー。」
フォークを口に加えてみんな拍手する。なぜかシルヴィも拍手している。
「これで王都に引きこもれればよかったんだけど、神様のヘタクソなバランス調整の余波で現在王都どころか人類の危機になりましたー。」
「え。」
反応してくれたのはシルヴィだけだった。
「情報の共有でーす。シルヴィは分からないだろうけど聞いていてくださーい。」
シルヴィは真面目な顔になったけどもちろんケーキの手は止めない。
「まずはゴブリンディザスターとなったルルグ=アシュレイ君です。みんなが勇者に勧誘されたように悪の心を認められて邪神に魔王にしてもらいました。こっちにポコポコへっぽこ勇者が現れているので向こうにもバランスの為にそこそこの魔王が発生していると思われます。まぁそれは勝手に勇者と共倒れになればいいんだけど、人間はまずいんだよ。魔物や魔族が魔王になるのと違って人間が魔王になると欲望に支配される。魔物や魔族はさ、ゴブリンなんかがいい例で邪神がこうあるべきってのに支配されていて実力とか関係なく魔王と勇者が出会ったらほぼ相打ちになる。神と邪神の出来レースだから。確認しただけの今までの歴史は全部相打ちだった。でも元が人間だと話が変わる。邪神から力をもらうけど相打ちになれって言われても従わない。死にたくないからさ。なんなら勇者との直接対決だけ逃げるとかするかもしれない。ルルグ君はキモイしバカなヤツだったけど強いのは強かったし普通の人間くらいの知能はもってたからね。魔王になって前線を崩壊させて王女に執着しても王都に攻めてこなかった。討伐されるのが分かっていたから。そこでアホな神様のやらかし第2段が最悪だった。」
紅茶を一口のんで続ける。
「ポコポコ増やした偽勇者は案外弱くて使えなかった。勇者の恩恵ってさ、結局”勇者の神の力”を扱えるようになるんだけど扱える量に才能差がある。超絶劣化勇者なのよ。一回だけ会った本物の勇者は多分神の意思の具現として、運命改変みたいな力があるんだと思った。魔王と戦えば神の意思として相打ちにならなければならないけど、他の事では死なない・・みたいな。劣化勇者はそんなのないから勇者の力がつかえても多分普通に死ぬ。魔王と1対1で戦えば弱くても相打ちになるかもだけど、そこにたどり着く前に死ぬ。山賊に殺されそうだったしね・・。それで何人かせっかく恩恵を与えた勇者が調子にのって死んでバランスを取る為に実装したのが恩恵のレベルアップ。より多くの神の力が使えるようになったり、スキルを覚えたり。劣化勇者を強くするのがメインだけど人族全員に適応された。そう。だから魔王でも人間のルルグ君にも適応されているはず。今ルルグ君は周辺の村や小さな町を襲ってるって無頼毎日に書いてあって王都に攻めてこないのを喜んでいたけどとんでもない。今彼はレベルアップ作業をしてるんだよ、人間をたくさん殺してね。まぁレベルアップのおかげでシルヴィも仲間に出来たし悪いことばっかりじゃなく人間側も強くなってるんだけどね。」
新しい紅茶を注いでクッキーをかじる。ダークが問う。
「勇者は?」
紅茶を飲みながら話を続ける。
「はい、じゃあ今後の見通しの話です。ルルグ君はレベルアップしながらゆっくり王都に攻めてくると思う。近くの村や町を全部潰したらレベルアップするための人間がいなくなっちゃうからね。前線の砦を落として王都に向かってくるのに遅くても半年以内。ヴィルヘルム君には討伐指令自体は出てるけど悠長に卒業まで鍛えるつもりだったろうけどそこまでは待ってくれないだろうね。こちらに向いながら村を滅ぼしてレベルアップしてくるだろうから多分王都まで待ってたら詰みだろうねー。」
「ヴィルヘルムのPTには本物の勇者がいるじゃない。相打ちになってもらったら?強い弱いは関係ないんでしょ?」
「それが今回の話の核心になる。多分半年後でも勇者はルルグ君に負ける。劣化じゃない本物の勇者でも、だ。勇者のほうには相打ちになるように運命の強制力が働き、ルルグ君のほうは相打ちになるように邪神が働きかけても効かない。そのうえで、残った劣化勇者はさ、一応最初からBランクとかAランクの冒険者だったらしいんだけどレベルアップしたそいつらが勇者の神の力を使っちゃう。おならと同じで世界中で一人だけとかの状況だから、世界中のその神の力を一人で使えるから強力になるんだよ。○○の勇者は本物じゃないけど、確かに勇者の神の力を使えて、しかもレベルアップでたくさん使えるようになって、本物の勇者が使いたい神の力を消費しちゃう。でもさ、そんなくだらない理由で本物の勇者が死んだら世界の終わりだよ。ルルグ君を倒せる人はいないし、本物の魔王も残ってる。そうなったら何千年も前の文献に出てたホントかどうかすら分からない”救世主”が現れてリセットするんだろうけど、そんなクソゲー拒否する。王都まで壊滅したら生き残ってもスローライフが不可能になっちゃう。」
「いざとなったら前みたいに私達で倒しちゃうのは?」
「今回はちょっと厳しい。ソフィが神の力を使っちゃうとルルグ君は倒せても周りに残ったゴブリンが倒せなくなっちゃう。魔王軍四天王の時もしばらく神の力は周りになかったから周りに他の冒険者がいても同じだし。それに前回のアレが引き金になってヘタクソな調整が実装されたんだ。オレ達が倒すとまた神がへんなテコ入れで魔物側を強くするかもしれない。多分今現在も人類の危機分かってないだろうしなー。」
「じゃあ、どうするの?」
「勇者に魔王を倒してもらう。運命の力が介在する余地がないほど圧倒的に瞬間的に。大体の作戦は考えた。多分一番影響が少ないやり方で。その為にゆっくりするはずだったダンジョンを急いで攻略します。オリハルコン・・・できればヒヒイロカネくらいの神金が欲しい。60階層のボスドラゴンルーラーを周回する予定だ。」
ちなみに過去の勇者の最高到達階数は62階層だ。50階層の地図は売っていないし61階層からは雑魚で亜竜がごろごろ現れフィールド環境もやばいらしい。
「あわわわわわわ」
シルヴィが目を白黒させているが、ちゃんと次のパンケーキに手を伸ばしている大丈夫だろう。
ダークもソフィも不敵な笑みを浮かべながらマフィンとシュークリームをほおばっている。
「そういう訳でスローライフや目標(おならの女の子)は世界を救った後で!」




