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酔いがまわった体を運んで、モニター前へと座り込むと、そこには予想通りに三角マーカーが点滅している。
宝玉1 初牛頭鬼配下
宝玉1 初緑肌鬼配下
宝玉1 初狗頭鬼配下
宝玉1 初冥王狼配下
宝玉1 初蜥蜴人配下
宝玉1 初人面鳥配下
宝玉5 称号:古の使役者[古代種5種]
(はあ、称号とかまであるのか。宝玉は鬼人族の時もあったから、今回もあると思ってたけど、これで22個。うーん、これで美女や大砲まで貯まったけど)
豊は大砲に懐疑的だった。
運用の難しさもある。大砲を実戦で使用するには、多大な訓練が必要であった。この為、欧州では農夫に槍を持たせる戦争から、小銃や大砲を扱う職業軍人へと変貌したのである。
(何にしても大砲も一門じゃあ厳しい。それでも、バリスタを潰すには有効なんだろうか…)
どうにも決めかねるまま唸っていたが、布団に寝転んでしまえば、酩酊した体が忽ち眠りへと誘った。
翌朝、寝惚け眼で屋敷を出れば、顔を顰めるような金属音が頭に響く。
ティモが、慌てて様子を見に駆けて行った。
「稽古してるみたいです。うるさいと注意して、やめさせましょうか?」
断って確認しに行くと、ミノタウルスとオーガが対峙していた。
ミノタウルスは畳ほどありそうな巨大な鉄盾を構えている。昨夜、弾正が特別に作らせたと自慢気に話していた物だ。
オーガの方は巨大な六角棒を持っている。
この村の鍛治師に作らせた物で、彼らの剛力に合わせて手元だけ絞った金棒である。
鳴り響く金属音の正体は、ミノタウルスが構える鉄盾に、オーガが全力で六角棒を打ち込んで生じていたのだった。
「ちょ、ちょっと一旦とめて」
間近だと頭がくらくらするほど響く、それが何組もとあっては耐えられなかった。
「おう、あるじ、牛頭どもの力は大したもんじゃろう。これで弩砲を止められんか?」
その巨大な鉄盾を見れば、人が数人掛かりでも支えるのがやっとだろう。しかし、豊はゆっくりと首を横に振った。
「あれは元々が攻城兵器だからね。防ぐのは難しいと思う。大砲の弾を止めるようなものだ」
大きな弓程度なら止められる期待があったのだろう、弾正はがっくり肩を落として問いかけた。
「なら、当たらんように攻めるしか、方策は浮かばんということか」
「そうなんだよね。塹壕を掘ったり、散兵して戦うくらいしか。十基以上あるらしいから、かなり厳しい戦いになると思う」
弾正を待つ間に、豊は7領を調べさせていた。
空堀と石壁に囲まれる館然とした建物が、7領領主の本拠地であった。
館の背後は急峻な崖であり、三方は平坦な地が広がってバリスタの的となるしかない。
更には、十数代目の領主として統治も磐石であり、7領には付け入る隙がなさそうだった。
「小勢にて、軽く一当てしてみるか。手近な村から掠奪し、焼き討って回ればよい」
戦争とは軍勢が争うばかりではない。
弾正の作戦のように、国力を削り、罪なき民の怨嗟を生むものもある。
それを理解する豊も、残酷だと言いつのって子供じみた反対などしない。
弾正と相談の結果、三十ほどの騎馬隊で編成することになった。
襲撃隊はオーガとゴブリンメイジが五名、三名のハーピーには偵察の任を与え、残りは人間の鉄砲隊とした。
決行まで、細々とした準備を進めていく。
鉄砲は丈夫な革ひもでたすき掛け出来るようにしたり、ハーピーには袖無しの上衣を着用してもらった。
嫌がるハーピーだが上半身は人型である。男性はまだしも女性の裸は宜しくないと、豊が力説したのだ。
そうしたなか、嬉しい誤算もあった。
参加をアピールしたミノタウルスが具足を装着したのだが、その際に彼らの巨体に合わせるように具足が変化したのだ。兜など、そこだけ穴が開いて雄々しく角が飛び出していた。
無論、人より小さなゴブリンメイジの方も、同じように変化して装着出来た。
そして、数日間は合図の取り決めをしながら、調練に明け暮れたのであった。
一泊した第2砦を後にすると、左手に森を眺めながら、河川敷の街道を西に進んでゆく。
「初めて見たけど、この森を抜けるのは大変そうだね。ここが唯一の街道ってのも頷けるよ」
鬱蒼たる深い緑がどこまでも続いている。
遠目で見れば、茂る木々によって光が遮られ、淡い闇が広がっているようにも見える。
「そんなことより、あるじは村で待っとればよかったんじゃ。ついて来ても、顔を背けるだけぞ」
やれやれと厄介そうに弾正は髭をしごいた。
酷い光景を目の当たりにするであろう豊も、苦笑いで応えることしか出来ない。
しかし、自分が参加することで無用の虐殺などは行わせないつもりなのだ。
「まあ、足手まといにならないよう気を付けるよ」
「ふん、なるに決まっとる。不覚をとって死なんようにだけしてくれ」
鼻を鳴らす弾正の言い草に、くすくすと笑い声が広がった。
和やかな雰囲気で行軍は続いたが、視界の端に森の切れ目が映ると軍列に緊張が走る。
「すぐに関所がある。予定通りに、撃ち払って押し通るぞ」
弾正の言葉に、具足を鳴らす馬群が徐々に足を速めてゆく。




