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見える僕と見えない彼女 心霊奇譚  作者: こばん
第五話

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5話 後日談

「お母さん……」


穂積さんが小さく呟く。


「ごめん、自分で肉体を捨てた魂を元に戻す方法を私は知らない。でもあのままにしてても周りの霊体と合体して自我もない存在になるだけだったと思うし」


紗羅が穂積さんにそう言うと、穂積さんは慌てて手と首を振った。


「そんな!私が仕向けたことなのに、後始末をさせてしまってすみません!」


穂積さんがそう言って紗羅に向かって頭を下げていると、瑞穂さんがトコトコと紗羅に近寄って来た。

そして、遠慮がちにきゅっと抱きしめた。


「えっ?」


穂積さんと紗羅の声が重なる。


「ありがとー」


瑞穂さんはニコニコと笑ってそう言うと、穂積さんの隣に戻る。


「え、姉さん?分かってるの?」


穂積さんが驚いてそう聞いているが、瑞穂さんはきょとんとして首を傾げるばかりだった。


それで、まだ張り詰めたままだった空気が一気に和んだ。


「……ともかく、もう大丈夫ということであれは、皆さん休まれてください。もう深夜です、冬弥さんも。さっき起きたばかりで眠たくないかもしれませんが……」


高橋さんがそう言うと、冬弥は苦笑いしながら言った。


「いや、これが意外と眠たいんだわ。そうだな、とりあえず休もうぜ。高橋、穂積さんたちのこと頼んだからな?」


高橋さんに念を押しながら冬弥は大きく伸びをしながら、僕と一緒に部屋を出た。

もちろん紗羅とあきらも一緒に。


廊下に出ると、雨はすっかり上がって星空さえ見えている。


「雨も怪異が呼んだのかなぁ?」


そう言いながら冬弥は玄関ホールを過ぎて男子部屋の方に向かった。

僕も行こうとしたんだけど……


「ねぇ、紗羅?僕も部屋に戻りたいんだけど?」


穂積さん達の部屋を出る時、ニコニコしながら紗羅が手を繋いできたので、そのままにしてここまで来たけど、紗羅達女子の部屋は二階だ。


それなのに離してくれない。

それで僕がそう言うと、恨めしそうに見上げて言う。


「おーちゃん?普通は送っていくもの。女の子だけで夜の廊下を行かせる気?」


プクッと頬を膨らませてそう言う紗羅に、僕は苦笑いになる。


「いや、送っていくも何も……なんか出たら紗羅ぶっ飛ばすじゃん。僕は何も出来ない……」


そう言っているうちに反対側の手も取られる。見るとあきらが遠慮がちに微笑んで僕の手を握っている。


「逢介くん。ここはか弱い女子を送っていくべきじゃないかなぁ。ボクはそう思うな!」


そう言いながらグイグイ階段の方に引っ張られる。


「わ、分かったってば!そんな引っ張らないで」


……結局部屋の前まで送ることになった。それはいいんだけど、両側を挟まれて、しっかりと手を取られて……


これ、送っていくって言うよりも、僕が連行されてる?


結局そのまま女子部屋の前までしっかり連れて行かれました。

そして男子部屋に戻ると、冬弥はもういびきをかいて寝ていた……。


イタズラしたい気持ちを抑えて、僕は布団に飛び込んだ。


◆◆ ◆◆


翌朝、一階のホールで朝食の準備ができたと、高橋さんが呼びに来た。

途中で紗羅達とも一緒になって、ホールに入るとテーブルには穂積さんと瑞穂さんが座っていた。


僕たちが入って来るのを見た穂積さんは、立ち上がって僕たちに頭を下げた。


「この度は本当にすみませんでした。追い出されても文句は言えないところを、解決して頂いただけでなく後のお世話までしていただいて……何とお礼を言えばいいか」


僕たちが起きて来る前に、高橋さんとしっかりと話をしていたようで、穂積さん達は冬弥の家のお手伝いさんとして住み込みで働くことになったらしい。

これは冬弥の強い要望があったらしくて、きっと穂積さんたちがまじないとかをおこなってきた一族だから、興味があったんだろう。


瑞穂さんはともかく、穂積さんは後の面倒を見させるつもりだったためか、しっかりと教育を受けさせられているらしく、家事はお手のものなんだそうだ。


「瑞穂さんも、ただ周りの情報をカットされて情操教育をされていないだけですので、時間をかければ徐々に普通の暮らしが送れるようになるでしょう。残念ながら他にご親族と呼べるような方もいないみたいですので、冬弥さんが身元預かりですからね」


朝食を運んできた高橋さんがそう付け加えた。昨日今日の話だと言うのに、ちゃんと二人のことを調べているのはすごいとしかいいようがない。


「いやぁ、ウチのマンションは全部高橋が一人で管理してたからさぁ、大変だなと思ってたんだよ。ちょうどよかったよ。な?高橋」


そう言う冬弥に、高橋さんは反応をしないで、ただ「冬弥さんが言うからそうしただけです。人を雇うというのは、そう簡単なものじゃないんですよ?とりあえずお二人がきちんと自立できるまでは、冬弥さんのお屋敷のお世話です。仕事はきちんとしていただきますよ?」


そう言うと、残りを取りに厨房の方に戻っていく。


「よっ、よろしくお願いします。あっ!私も手伝います!」


慌てて立ち上がった穂積さんは、そう言って高橋さんの後を追っていく。


「まぁ、なんとかなるだろ?」


冬弥は、早速パンにかじりつきながら、呑気にそう言っていた。



都市伝説のまじない


有名な怖い話の、儀式を実際に過去まじないをしていた家系の人が実行してしまった話。

物事はそれを信じて言い続ければいつか本当になるって聞いたこともある。これはそれが悲しい形で再現されてしまったのかもしれない。


信憑性 A

危険度 B


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