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傭兵の流儀 7

やっぱり等身大の男はエロい


登場人物紹介

 マウラットの面々……お頭と呼ばれる男の他、複数のバンデット。うだつの上がらないバンデット稼業に精を出している。

「何考えてるんだい、ラスター」


 あきれたようにジェフが俺を見る。

 まあ、自分でもちょっとアレだな、とは思う。

 思いつきを言ってみただけだ。


 檻車にエミーを捕らえて運ぶ。

 運ぶ人間が1人か2人なら、向こうも必要以上に警戒しないはずだ。

 買って欲しい、と持ちかける。

 なんで檻車があるのか、どこから来たのかなどはどうでもいい。要は見張りや館の人間の注意を裏口から引き剥がす時間が稼げればいいのだ。


「いや、見張りの排除が難しいなら見張りを解かせるにはどうしたらいいかって思って」


 おっかなびっくりエミーを見ながら話す。

 怒るかな。


「エミーの色仕掛けはいけるんじゃないかと。檻に入れてれば安全でしょうし。いやほら、エミーは魅力的だからさ」


 エミーは眉根を寄せて俺を見ている。

 ランプの明かりはわずかしかその顔を照らしていないため、もしかすると鬼の形相の可能性もある。

 ダズとバッツォは声を潜めて何やら話し合っている。


「エミーに危険なことさせんのかよ?」

「いや、だから檻から出さないですよ。商品を見にきてくれとかなんとか言って。あー、だからより効果的にするにはエミーに際どい格好してもらえば尚良いですけど」


 いや、俺は割と良い作戦だと思うんだよ。

 元々檻車を運んで来る時に思っていたのだ。乱戦になるようならエミーを檻に放り込もうかと。

 彼女は傷の手当や資料、報告書、地図の確認など支援専門だ。

 今回はおまけに近い。

 バカにしているわけじゃない。彼女の役割も重要だが、今回はさほどでもないだけだ。


「エミー、お前はどう思う。傭兵として言ってみろ」

 

 バッツォが訊ねる。

 俺が提案しといてなんだが、その言い方は少しずるい気もするな。


「私は、それが作戦として効果的なら構いませんけど。私で上手くいくでしょうか?」

「ん? いや、そりゃあ間違いない」


 照れるバッツォにイラつく。

 薄汚い目で見てんじゃねえ。


「いいんだな?」

「はい」

「よし、ラスターの案でいくぞ。すぐに編成を決める」


 もう間もなく空が白み始める頃合だ。

 テキパキと作戦が整えられていく。

 責任とってエミーはお前が守れ、と言われたが実際は突入部隊と後詰めに戦力を振ったのだろう。



「ごめんな、エミー。嫌な役目させて」

「いいわよ。それよりちゃんと守ってよね」


 檻車の所へ引き返した俺とエミーは、檻の中に積んでいた物資を必要な物以外放り出し、大きな毛布数枚で檻を囲った。


 中にランプを入れ、布をめくるとランプに照らされたエミーが浮かび上がるという、エロ馬車になっている。

 俺の提案だ。

 エミーは薄着になると胸元を引っ張り、ヨレさせた。

 勿論俺の提案だ。


 最初に出来をチェックしたのも俺だ。

 もういいか。


「喋らなくていいから、怯えた感じでいてくれ」

「わかった」


 ダズ達は既に館の裏手に離れて潜んでいるはずだ。

 偵察の2人が連携して隠れたダズ達に突入の合図を伝えることになっている。

 後は俺とエミーが上手く見張りを引き付けられるかの勝負だ。


 馬をゆっくり進める。

 相手に余裕を与えるため、農夫の馬車のような速度で進めるのがいい。

 俺も用意してきた物資の中から、地味なローブで全身を覆っている。

 ほんのわずか、薄っすら空が明るくなってきた。




 

 眠ぃったらねえ。

 何度目になるかわからない舌打ちを打つ。

 昨日本街道で騒ぎがあったとかで軍が出張ってきやがったおかげで、取引が台無しになった。

 ルンカトから密輸品を積んだ馬車が時間通りにくりゃ、間に合ったかもしれねえのによ。

 ツイてねえ。


 ボスに納める金の算段が付かなくなったせいで良く眠れなかった。

 昼には密輸品を受け取りに闇商人の連中もやってくる。

 どうにかしなきゃいけねえ。クソッタレ。


「お頭、ちょっといいですかい」

「なんだ」

「なんか、女を売りてえって奴が来てます」

「なんだそりゃ。こんな時間に誰だそいつは。てめえちゃんと調べたのか」

「見つかるとまずいんで夜の間に来たって。へへ、これがまたその女がたまんねえんですよ」


 涎を垂らしそうな顔で見張りに付けていた男が報告してくる。

 なんて頭の悪そうな顔してやがる。

 

「人買いなんて危ねえ橋渡る奴がいきなり来るか、ボケが。追い返せ」

「いや、人買いじゃねえみてえで。何でも移動式の娼館って話です」

「何だと?」


 聞いたこともねえ。

 だが、こいつはとんでもねえぞ。

 密輸品なんかよりもよっぽどデカイ商売になりそうな匂いがプンプンしやがる。

 天才じゃねえか、そいつは。


 階下へと急いで降りる。

 残りの見張り2人の男と娼館の主だろう若い男の声が興奮した様子で喋っているのが聞こえてくる。


「うひょー、おい、もう一回見せてくれよ!」

「いやいや、こっちも商売ですんで。何、今からたっぷり楽しめるじゃないですかぁ」

「おいもう我慢できねえよ。いくらなんだよ」

「大事な商品ですからねえ。皆さん買うとなったら何人いらっしゃるんですか? あんまり多いようだと、ちょっと」


「10人いるけどよ、順番待ちしてたら明日になっちまうのか?」

「いやぁ、全部で10人も! さすがに一気には無理ですねえ」

「騒いでんじゃねえぞてめえら」


 ローブを被った男が頭を下げてくる。

 振り返った見張り2人は締まりの無い顔で舌を出した犬のようだ。

 揃いも揃ってアホ面下げやがって。

 軍が動いているせいで3人も付けた見張りが、全く役に立ってねえ。


「おい、お前名前は。どこから来た」

「ノヴィトって言います。ターミルで商売してたんですが店が無くなっちまいまして」

「見せてみろ」


 ノヴィトが馬車の布をめくる。

 鉄格子? 檻かこりゃ。

 暗闇の中、ランプの光が作り出す女の艶かしい肢体は、鉄格子と陰影によって異様な妖艶さを醸し出している。

 思わず唾を飲み込む。

 こいつは凄え。


「どうです? たまらんでしょ? いや、こいつはホント……とんでもない破壊力だな」


 決めた。娼婦としてより、この馬車ごと買い取れないか交渉する。

 値の折り合いが付かなければ、脅してでも売らせる。闇商人には、密輸品より高値で売りつけられる。


 女が拒否した場合は、金を握らせて昼までモデルとして付き合ってもらうか?

 人買いまでのリスクは背負えねえしな。

 奴らがどうしてもってんなら、責任は奴らに任せるとして――。


「おい、とりあえず値を聞こうか。……おい」


 何だこいつは。

 ずっと布を捲ったまま覗いてやがる。女の状態でも確認してるのか。


「え、何ですか?」


 何でキレてんだ?

 商売する気あんのか。


「買うならいくらかって聞いてんだよ」

「そうですねえ」


 値を決めてねえのか?

 それとも、相手によって値を変えようってのか。

 マウラットの足元見ようってつもりならただじゃおかねえぞ、この野郎。


「てめえ、あんましなめてると――」


 ドガッ! と館の中から大きな音が響く。

 続いて複数の駆け回るような足音。


「何だ!」

「うっ!」


 何が起こった!?

 館を振り返ったら後ろからうめき声。

 また振り返って見れば手下が2人股間を抑えて悶絶している。


「成敗!」


 咄嗟に距離を取ろうとしたもう一人の股間にも、ノヴィトのつま先が突き刺さる。

 声にならない呻きを上げた手下が崩れ落ちる。

 あまりにも急な展開に頭が着いていかない。


「百億ジェル」


 トントン、と靴で地面を軽く叩きながらノヴィトが告げる。


「何しやがるてめえ!」


 クソッ! 嵌められた!


「言っとくが見物料だからな。ちゃんと払えよ」


 ボッタクリ商人だったか!


 

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