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傭兵の流儀 8

登場人物紹介

 デリック……アルトック傭兵団に所属する傭兵。見張り担当。


 ベイル……デリックの相棒。

「行け行け!」

「中に6人居るはずだ! デリックとベイルも表に行け!」


 合図と共に一気に雪崩れ込む。

 階段を駆け上がったダズが慌てて飛び出してきた男を殴りつけて昏倒させている。

 デリックからのハンドサインによると表に4人居るはずだ。中に6人。


 不意を突けたので仲間は次々にマウラットを叩き伏せ、館を制圧していく。

 中には剣を持って飛び出してきた人間もいたが、人数で勝るこちらは連携して圧倒する。

 

 寝起きで裸同然の格好をした男が振るった剣に、叩きつけるように刃を合わせる。

 たたらを踏んだ男の背後から、仲間が剣の腹で腕を打ち据える。

 苦悶の叫びと共に剣を取り落とした男に素早く踏み込み、脇腹に強かに左拳を突きこむ。


 2人、3人、――6人。

 

「バッツォ! 1階はクリアだ!」

「2階も制圧したぞ!」

「伸びた奴らを簀巻きにしちまえ! ダズは2階を徹底的に洗ってくれ!」


 館内を駆け回りながら指示を出す。

 サインが正しければ人数的にはこれで全員のはずだ。表へ走る。


 デリックとベイルが地面に倒れた3人の男を拘束している。

 ジェフは悪態を吐く男を足で地面に押さえつけ、剣を突きつけていた。


「2人は?」


 親指をクイッと後ろに向けたジェフに従い目をやると、布の掛かった檻車の後部からわずかにラスターが見えた。


「おい、怪我はないか?」

「あ、バッツォさん今ちょっとこっちに来ないで下さい。着替えてますんで」


 エミーの名前は呼ばないようにしようと事前に決めてある。恨みを買って報復されるような危険からは、なるべく遠避けたい。


「2人とも、無事なんだな?」

「はい。指一本触れさせてませんよ」

「よくやった」


 ラスターが檻から着替え終わって出てきたエミーを連れて屋敷の裏の方に消えていく。


「よし、縛り上げた奴らを運べ!」


 館から拘束したマウラット達を担いで運び全員檻に放り込むと、ジェフの押さえつけた男に尋問を開始する。


「お前が首領だな?」

「ああ!? 知らねえよ、離しやがれクソッタレが!」

「お頭って呼ばれてたの、聞こえてたぜ」


 ベイルがせせら笑う。

 男は憎らしげにベイルを睨む。


「俺達はアルトック傭兵団だ。王国認可の討伐依頼で、お前達を王都に護送する」

「俺らが何したってんだ!」

「それは法廷で聞け。お前達が罪を犯してないんなら、そん時ゃ謝るよ。いいぞ」


 他のバンデット同様、猿轡をかませ縛り上げると檻に放り込む。

 布で姿が見えなくなった連中のことは、これでもう考えなくていい。


「俺達も館の中を洗うぞ。デリック、ベイル、見張りを頼む」


 傭兵の中から更に2人を選び、村に馬車を取りに行かせる。目ぼしい物はできるだけ運ぶ。


「金庫くらいだな。帳簿みたいなもんがありゃいいが、バンデットが真面目に付けてるとも思えねえしな」

「俺達が気にするこたぁないさ。片っ端から持ってきゃいい」


 ダズと話し合い、護送の編成を決める。

 仲間達は館中をひっくり返し、物資を運んでいる。書類関係はエミーが判断している。

 2台の馬車が到着すると、手分けして物資を積み込んでいく。

 空はもう明るくなり始めている。


「よし、手はず通り行くぞ」


 檻車を間に挟み、3台の馬車でゆっくり山道を下っていく。

 上手くいった。

 死者どころか、たいした怪我人すら出てはいないだろう。見事すぎる戦果に達成感がこみ上げる。

 大手柄だ。




 

 途中立ち寄った麓の村でマウラットを全員捕縛したことを伝え、馬を1頭借りられないか訊ねる。


「あの中に、いるんですかい」

「ああ。全員喋れないようにして縛り上げているから、危険はないですよ」

「そうですか」


 村長だという、皺に埋もれた顔の老人の指示で馬が1頭運ばれてくる。

 駄馬ですが、という老人に礼を告げ、傭兵の1人を街道守備の砦に走らせる。

 護送の応援が来れば終わったも同然だ。


「あの」

「何でしょう」

「捕まった連中はどうなるんですかいの?」

「法廷で、裁きに掛けられます。どんな刑を与えられるかは、罪の大きさ次第で――」


 はたと気付く。

 ブロンズ商会は、交易馬車襲撃の容疑者として討伐依頼を出していたことに。

 自分達が殺さなかったからと言って、死罪が宣告されれば同じことではないのか。

 こいつらは、濡れ衣を被せられる為にいる。


「ワシらの村にも金を落としていってくれる連中だったんですがの。仕方ありませんな」

「バッツォ。ぐずぐずしてる暇ねえぞ」

「ああ、出るぞ」


 俺の知ったことか。

 俺達は言われた仕事をしただけだ。

 街道砦は遠くない。

 応援が来るかは分からないが、もうすぐこの胸糞悪い仕事は終わる。

 ガタガタと揺れる3台の馬車の音だけが、強いリズムとなって耳に飛び込んでくる。


 もう、考えなくていい。

 オレンジ色の朝焼け空に、赤く光る雲がたなびいていた。

 布に覆われた檻の中は見えない。

バンデットと王国民

 財貨を持たない人間にとって、バンデットは特にどうとも思われていない。無論一般的には敵視されているが。バンデットが狙うのは商人や裕福な人間であり、そのほとんどにおいて被害に合うのは「馬車」。町や村を襲うバンデットなど最早皆無という時代なので、そこから出ない国民にとっては遠い存在。ただし表に出ないだけで生活圏で活動しているバンデットも多い。

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