表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/35

転生様のある日

転生様たちも楽しく暮らしています☆

私は大陸シリウスの中、比較的大きな『スピカ王国』というところの中流貴族の娘です。


突然ですが実は私、転生者であります。


魔女のメグ様のところにお世話になったのではなく、ふつーに生まれ変わってこの世界にやってきました。前世で私は「ヨネ」という、貧乏農家の嫁でございました。ちょうど江戸時代も末期だったと思います。都やお江戸では何やら物騒な事が起こっていたようですが、私のようなしがない辺境の農民には関係ありませんので、比較的のどかに暮らしてましたね。

なんの偶然か、転生したこちらの世界で、前世の知り合いと巡り合うことができたのは僥倖でした。


「ヨネちゃん、まあ、あんた偉くなったねぇ!」

「トメちゃんこそ、裕福な商家に転生でしょ? よかったわねぇ」

「そういやトラスケはまた村人らしいよ」

「ゴウちゃんはお姫様でしょ?」


「「おもしろいねぇ」」


袖触れ合うも他生の縁。

転生して、姿かたちが変わっても魂的な何かは変わらないのかすぐに前世の記憶が蘇った私たちは、同郷(っていうのかしら?)のメンバーと『秘密結社☆あのころの君をもう一度』を作っています。同郷の方は申し出てください。すぐに面接します。


今日は中流貴族である私の家の庭で会合を開いています。私たちの結社の中では『会員みな平等』が貫かれているので、私の家での会合でも身分に関係なく参加できるのです。


「こないだゴウちゃんが公爵に意地悪されたらしいよ!」

トメちゃんが早速今日のお題を提供しました。

「ええっ? お姫様のゴウちゃんに?! あわわ」

私はびっくりしてお茶をこぼしてしまいました。

「そうなのよ。ゴウちゃんがかわいいからってナンパして振られたら逆恨みよ! 男としてどうなのよね?! あんたなんて相手にされないっつーの!」

その時の様子を思い出したのか、トメちゃんはプンプンご立腹です。件の公爵はイケメンなのを武器にしていてあちこちで浮名を流し、泥沼の修羅場を展開しているとかなんとか。そんなチャラい公爵など、かしこいゴウちゃんが相手するはずもありません。

「そういや当のおゴウはどうしたんだよ? 今日は休みか?」

グラスになみなみと注がれた葡萄酒を昼間っから飲みながら、村人トラスケが周りを見回します。

「おゴウは傷心で寝込んでいるらしいぞ」

転生後、こちらで騎士をしているヨシノブが言いました。ヨシノブ、お城仕えの騎士なので、お城関係の情報通です。その他諸々の情報は、やっぱり豪商のトメちゃんが得意分野ですが。

「まああ! かわいそうなゴウちゃん! これは仇をとらねばなるまいぞ!! おのれ、公爵め!!」

ギラーーーン。

トメちゃんの眼が光ったように見えたのは私だけでしょうか。

「「おうよ! 会員の侮辱は結社全体の侮辱!!」」

トラスケもヨシノブも血気盛んです。

「ワン!!」

そこに現れたのは犬のツナヨシ。実は彼も転生者(犬?)なのですが、前世の行いの因果で犬に転生してしまったのです。

「ツナヨシはあっちいきな! あんたは時代が違うでしょ!」

しっしと追い払うトメちゃん。

「きゅん~」

しぶしぶ退散していくツナヨシ。でもツナヨシがスパイでないとは限りませんからね。ここは心を鬼にして会員以外は除外です!




異世界だから、転生者だから、数少ない同郷だから。

『秘密結社☆あのころの君をもう一度』の結束は固いのです。


というわけで、『ゴウちゃんを泣かしたアイツに仕返し☆』ミッションが遂行されることとなりました。




ミッション遂行の日。


『ザザッ、ターゲット、発見、ザザッ』

「よし、気を付けて作戦にかかって!」

『ザザッ、イエッサー!! ザザッ』


お城に向かおうと、屋敷を出て公爵様が歩いていると。


「あいたっ!!」

ビチッ!


何かが当たったようです。


それを影から盗み見る黒づくめの男。懐から何やら小さな箱型のものを取り出したかと思うと、それに向かって小声で囁き出しました。

『ザザッ、こちらコードネーム・タイガー。びーびー弾、公爵に命中、ザザッ』

指令本部わたしのいえにトラスケから無線が入ります。無線機に向かって総司令官トメちゃんが指示を出します。

「ごくろうタイガー。引き続き打ち続けるように。地味だがイライラするはずだ」

『ザザッ、イエッサー! ザザッ』


「ふははは~! 地味な痛みを味わえ~!!」

「トメちゃん、次の指令出さなくちゃ~」

仁王立ちで高笑いするトメちゃんを現実に引き戻すのは私の役目です。

「ああ、ヨネちゃんありがとう! 次! コードネーム・グッド! 聞こえてる?」

『ザザッ、おう。もうすぐターゲットが馬に乗るぞ、ザザッ』

ツナヨシの声が無線を通して聞こえてきます。

「ターゲットはどんな感じ?」

『ザザッ、タイガーのびーびー弾攻撃に、地味にイラついているようだ、ザザッ』

「OK! 狙い通りね。じゃあ、グッド。馬に乗ったらミッション開始ね」

『ザザッ、イエッサー、ザザッ』


先程から小さな何かがビチビチ当たってきてイライラしていた公爵は、それでもどうしてもお城へと行かなければならなかったので、渋々馬に乗りました。

「こんな日は出かける気も萎えちゃうんだけど」

まだ何かビチビチ当たってきます。ブツブツ言いながら馬に乗っていると、


ガクン!!

「うわっ?!」


急に馬がつんのめりました。

もちろん公爵は振り落とされ、地面にごろりん、と投げ出されてしまいました。さほどスピードが出ていたわけではないので、転がり落ちたといった体ですが。

「? ?」

あまりに急なことだったので、何が起きたのか理解できていない公爵。

地面に転がったまま、きょろきょろと周りを見渡すばかりです。

「旦那様、どうなされましたか?!」

慌てて従者が駆け寄るも、従者にも原因が解らない様子。

「いや? なんでか、急に馬がつんのめった」

「そのようにございますが……」

二人して困惑顔になっています。


『ザザッ、バナナの皮作戦成功、ザザッ』

そんな公爵らを影から見ながら、グッドは総司令官に報告を入れました。

「お疲れ、グッド。証拠品は処理しておくように。そこから我々が特定されることがあってはならないからね」

『ザザッ、イエッサー、ザザッ』

交信を打ち切り、こちらを向いたトメちゃんに、

「バナナの皮作戦は上手くいったみたいね。さすがはグッドね、馬の前に瞬時に皮を落とし、滑ったと同時に皮にあらかじめ仕込んであったテグスを引く。証拠のバナナは消えてなくなる」

私は作戦の概要を思い出しながら、その作戦の成功に小さく拍手を送ります。危険な任務を厭わず買って出てくれたヨシノブに感謝します。

「そして真相は闇の中……くくく……」

「トメちゃん、笑いが黒いわ」

「いいのよいいのよ。じゃあ、お次はメンタル作戦よ。ヨネちゃん、頑張ってきて!」

「イエッサー!」

私は豪華なドレスを持ち上げて、意気揚々とお城へ乗り込みます。


先程の落馬で、もはや外出する気力は失われたようで、公爵家じたくに戻ったのはトラスケの報告から確認済みです。

私は中流貴族だけれどお姫様ゴウちゃんのお友達だから、厳重警戒のお城だって顔パスで入れちゃったりします。

お友達特権を乱用してお城に単身乗り込むと、


『公爵様、今日来られないのは十円はげができたからですって!』

『公爵様を巡って○○嬢と××嬢と修羅場になっているらしいですわ!』

『公爵様、ナンパが上手くいかなくて引き籠りになっているそうですわ』


色々な噂の種を、あちこちに植えて回りました。

私が噂の出処と判らないように工作しながら。

でも、あらかた事実に根差した噂なので、あっという間にお城中に広まっていきました。

火のないところに煙は立たないとはよくいったものです。




まあ、あまり追い詰めるのもよくないので、地味に瑕がついたところで私たちのミッションは終了。

ゴウちゃんも、

「あなたたちのおかげですっきりしたわ! ありがとう!」

かわいい笑顔が戻ってきました。


そして今日も、我が家で会合です。




「そーいや、また秘密結社サークルができたみたいだよー」

「へぇ~。一体いくつあんだよ?」

「さあ?」

「もはや公然の秘密だよな。あー、こないだは『あのころの君をもう一度』がなんかコソコソ活動していたなぁ」

「うん。当事者以外、みんなにばれてるところがかわいいよね」

「かわいいか?」

「かわいいでしょ。地味ないたずらを幾つも仕掛けて」

「まあな」


私とショウくんは、いつものように『魔女☆メグの家』でのんびりお茶をしています。

今日は誰も来ていません。平和です。



突発番外編。お付き合いありがとうございました m( _ _ )m


他にも秘密結社サークルはあるようです(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ