第82話「強い意志」
「リッター急いで周囲を捜索して頂戴」
「おう」
「俺も行く。もしかしたら知っている相手かもしれないのでな」
自分が殺す。言葉にせずとも明確に伝わる強い意思。
「言っておくけど、お兄さんの御前立てはできないわよ?」
「ああ。あの雑魚が死ねばそれでいい。誰が殺したかなどは些細なことだ」
「良かったわ。リッター、そういうことだから。私も後から行く」
「おう。じゃ、こっちで勝手にやっとる」
「深追いはしなくてはいいわ」
リッターは手を上げ森に向かった。
こうして、犯人捜索が始まった。
「サラティスちゃんは休んでいてちょうだい。何かあれば、周りに言ってちょうだい」
仲間の恩人である。
悪く扱う者などいない。
いたら、ニカルが直々に話し合う。
「分かりました」
意外にもサラティス捜索に参加の提案を出さなかった。
役割分担である。
サラティスは魔術に自信があるため、戦闘では役に立てるが捜索は特別優れているわけではない。
それに五歳児の体では不便が多い。
なら、現状は待機して、万が一に備えた方が良いと判断した。
リッターは勝手知る森の中で相手を探していた。
リッターは静かに怒っていた。
久しぶりの人間との交流。
初めての人間の来訪。
久しぶりに見た甲斐甲斐しい友の姿。
友の貴重な時間を奪い去った罪は重い。
リッターはオレスが襲われた場所から、犯人の移動先を予測し先回りしていた。
「……あいつか?」
見知らぬ魔族が歩いていた。
木の上に登り、こちらに気づかれないように観察する。
背後から槍を投げつけ、背を貫くか迷った。
しかし、自分達は卑劣な犯人とは違う。
万が一無関係な魔族であるのなら、友に迷惑がかかる。
「おい、お前何してる?」
ひとまず、声をかけることにした。
「あ?さっきの同族か?」
「死ね」
魔族はリッターを見るなり、魔法で攻撃してきた。
なら、遠慮は要らない。
「っち。魔法も使えない下等が」
リッターは姿勢を低くし、向かってくる岩の下を潜り抜け、魔族の胸を槍で一突き。
(硬ぇ)
リッターの槍の穂は鉄製だ。
だが、槍は胸を貫かなった。
皮膚が堅く、槍が弾かれた。
岩の魔法を使っていることから、体質ではなく魔法によるものだと推測する。
リッターは魔法が使えない。
正確には戦闘で魔法を使いこなせない。
あるのはこの腕っぷし。
リッターは急いで後方に飛び去る。
魔族の目の前に石の針が現れた。
一歩遅ければ串刺しだったであろう。
リッターはすぐさま木々に身を隠した。
「っち雑魚がめんどくせえ」
魔族はてきとうに魔法で岩を放ちなながら、木に近づく。
「ったく。手間かけさせんなよな」
魔族は岩を全方向に飛ばし木の裏に回る。
「なっ」
リッターの姿は無かった。
岩を周囲にばらまいていたので、逃げるのは無理なはずだ。
「魔法か?」
次の瞬間、魔族は頭部に衝撃が走る。
「はーこれもいまいちとは頭ん中岩なんか?」
リッターは木の上にいた。
そして、飛び降り上から勢いよく槍を振り下ろし、魔族の頭部を殴りつけた。
「殺す殺す、殺す」
魔族は無傷ではなかった。
頭部がぱっくり割れ大量の血が流れ出す。
頭部は別か、不意打ちには対処できないか。
リッターは再び木々に紛れる。
「同じ手が通用するか下等魔族が!」
今度は上空に目掛けて岩を飛ばす。
「ぐちゃぐちゃにしてやる」
「くそ」
リッターは木を飛び移る。
「なっ」
が、運悪く空中で岩に当たった。
「はっ」
獰猛な笑み。
落下するリッターを串刺しにしようか、岩で擂り潰そうかと思考する。
「はっ」
リッターは笑った。
恐怖でイカれた。
魔族は魔法を放つ。




