第76話「スマリナーラヴァス」
ディスサルはサラティスに警告を出す。
「スマリナーラヴァスだ」
一気に戦闘態勢に戻る。
ベアダボを狙いにやってきたのだろうか。
スマリナーラヴァスは魔獣の死肉を食べる。
見た目は丸い綿毛に六本長い脚が生えたである。
大きさは二メルほどあり可愛らしくはない。
綿毛のような頭部には目が十二個。
そして何より特徴的なのが六本の脚の関節部分から粘性の糸を出すことだ。
糸を張り巡らせ巣を作ったり、獲物を捕らえる。
身体の下部には大きな口があり、とげとげな歯が生えており、獲物に吸い付き肉を粉々にするようにして飲み込む。
スマリナーラヴァスの厄介な所は移動速度と糸である。
弾けた玉のように目で追いきれない程の速度で移動することが可能である。
さらに、遠距離から糸を放つため遠距離攻撃の手段が無ければ倒すのは難しい。
「あれは倒した方がいいですね。恐らくアレは雌ですよ」
雌は出産のために獲物をたくさん食べる。
そして執着深い。
逃げ切れるか不明。
逃げることができたとして、ニャニャント族の棲家に案内するようなものだ。
「俺なら撒ける。とっと逃げろ」
「……まさか、あの魔法って効果に範囲の制限ありますかね」
「なっ」
だから何故正解に辿り着けるのだ。
「分かりました。私が相手します。ディスサルさんは援護、周囲の警戒を」
「できるのか」
「ふふ、私は魔術が得意だって言ったじゃないですか」
たかが人間が。
そして子供である。
普通なら都合の良いご馳走になるだけ。
「なっ」
サラティスは水球をスマリナーラヴァス目掛けて飛ばす。
ただの水である。
火、風の方が攻撃には向いている。
そもそも水魔術は攻撃に向いている魔術ではない。
だが、サラティスはそうは思わない。
水球をそれなりの速度でぶつければ大ダメージになる。
それに水は広範囲に広がりやすいため、広く攻撃したい時は向いている。
が、スマリナーラヴァスもバカではない。
水球を躱し、水は木々に貼られた糸を濡らすだけだった。
ディスサルが驚いたのは、この状況で水魔術をあえて選んだことでも、結果虚しく本体にはかすりもしないことではない。
サラティスの周囲に浮かぶ水球の数である。
優に百は超える。
間を置かずに続け様に放たれる水球。
辺りを濡らしているが、有効打にはけしてなりえない。
スマリナーラヴァスは水を避けながら、サラティス目掛けて糸を放つ。
それを躱せるのものは躱し、避けれないのは風魔術で防ぐ。
「おい、大丈夫なのか?使えるなら火魔術の方が効果的だぞ」
「大丈夫です」
数多の水球は物量で押し切る形で、数回スマリナーラヴァスに直撃した。
しかしただ直撃しただけで、さほどダメージは与えていない。
火であるのなら火傷、体毛への延焼など付加効果を期待できるたが、水である。
「もう、お終いですので」
「なっ。最初からこれを?」
スマリナーラヴァスは突如地に落ちた。
「はい。火だと森林火災など被害が出たら嫌だなと」
「なら最初から氷を使えば良かったんじゃないか?」
スマリナーラヴァスの身体は凍結していた。
突如凍結したため、為す術なく地に落ちた。
『ゴォ』
スマリナーラヴァスを火が包み込み。
氷は融け、毛を肉を全てを焼きつくす。
「スマリナーラヴァスが避けたら魔力の無駄になるので」
「なるほど。弱いなりの工夫というわけか」
スマリナーラヴァスの燃えがらに水をかけ、完全に消火する。
「戻りましょうか。あ」
「なんだ?」
「スマリナーラヴァス燃やしちゃいましたが、これニャニャント族に渡した方がよかったですかね」
何かの素材に利用するのなら、有効活用してもらった方が良い。
「知るか。そもそも、それはお前のものだ」
「それもそうですね。あ、ディスサルが狩ったベアダボのお肉少し分けてくれませんか?」
「好きにしろ」




