第74話「にゃんとも大変な事態」
自分で何か採ってこようと部屋を出ると、外が騒がしくなった。
「おおやけど、くすりたくさんぬる」
「はやくつれてき」
姿は見えないがそんな声が聞こえた。
誰かが怪我したのだろう。
「そこのニャニャント族の方」
「なんだ」
「えっとアナタは?」
「わ、れれれ」
「れれれさん?ですね。どうしたんですか?」
「ささがけがした。せなかおおやけど、いたいいたい」
「私治せるかもしれないので案内してもらっていいですか?」
「ほんとか?」
「はい」
「こっちくる」
木の上に作られた床である。
踏み外せば真っ逆さま。
流石にこの高さなら今更怪我などしないが、心臓に悪い床ではある。
れれれに従い、治療する部屋に案内された。
「れれれ、いま、だいじ。あかながなぜつれてくる」
「あかなが、ささのけがなおせるかもしれない。つれてきた」
「ほんとうか?」
部屋の中央にベッドが置かれ、うつ伏せでニャニャント族のささが寝かされていた。
火が原因だろか、腰の上あたりから肩にかけて毛が焼け皮膚が露出していた。
皮膚も火傷で剥がれただれたり、かなりの重傷であった。
ニャニャント族の医療がどのレベルか分からないのでなんとも言えないが、普通に治すにはかなり大変だろう。
「普段の治療法は?」
「くすりぬる。たくさん。ぬってやくそうをまきまき」
「なるほど……」
まず助からない。
「今から私が治療しますが、大丈夫ですか?」
「あかなが、できる?」
「あかながおねがい」
「ささけがなおる?」
「はい。れれれさん。ちょっと背中見せて貰っていいですか?」
「せなかみる」
れれれは服を脱いで、サラティスに背中を見せる。
「これが健康な状態の毛、すみません。ちょっと触りますよ」
これは医療行為の一環である。
もふもふしたいという、やましい気持ちは微塵もない。
「皮膚は……なるほどですね」
サラティスはささに向かい、回復魔術を使う。
「ぴかーだ」
「あかながすごい」
その声はサラティスには届いていなかった。
皮膚の状態をつぶさに観察する。
初めて接する魔族なので情報が少ないため、かなり神経をすり減らす作業だ。
五分程でささの皮膚は毛がないだけの状態になった。
「これで大丈夫かと。さすがに毛は生やせないのでこのままですが」
「ささ。だいじょうか?」
「……せなかいたなくない」
ささはゆっくりとベッドから降り立ち上がる。
身体を恐る恐る動かす。
そして、何ともないことが分かると、大合唱であった。
「あかなが、かんしゃ」
「あかなが、すごい」
「あかながいわう、いわいもってくる」
「あかなが、こっち」
「え?あ」
サラティスは部屋を追い出され、ひときわ大きい部屋に連れていかれた。
部屋の空間は丸い形になっており、それだけでニャニャント族の器用さが分かる。




