第73話「ニャニャント族」
「そろそろだな」
「でもどこも集落のようなものは見えませんが……」
ディスサルに言われサラティスは辺りを観察するが建築物らしきものはない。
「だれだ」
「あ、くろながだ」
「な、な」
サラティスは言葉を失う。
「あかなががいる」
「はじめて」
「なんですかこれー」
目をらんらんと輝かせる。
夢ならば覚めて欲しいと。
「おい、服をよこせ」
「いつもの?」
「ふくだって」
「ふくつくる。くろながまつ」
サラティスの前に確かに魔族の集団が現れた。
魔族の集団だ。
しかし、サラティスに恐怖はない。
「なんですか、この可愛らしい魔族さんは」
「可愛いだと?こいつらが?」
ディスサルはこの魔族に何も感じないらしい。
「かわいい?」
「かわいいだって」
「かわいいってなんだ?」
「こいつらはニャニャント族だ」
「なんと」
「ニャニャントだ」
「えっと……」
勘違いされたようだが、遮るのも悪い。
ニャニャント族はサラティスの目にはとてつもなく愛おしく映った。
大きさはサラティスよりすこしだけ大きい、
真ん丸なお顔。きらきらお目目。
ぴょこっと頭部にて三角の形をして立っている耳。
身体をふさふさと覆う毛皮。
見たことのないような服や服飾を着飾っている。
ニャニャントはどうやら木を加工したり、建築したりと利用し上部に居住しているようだ。
見上げないと見つけられないため、魔獣から狙われにくいだろう。
ニャニャント族は手先がとても器用な魔族で、特に服飾に優れており他の魔族に売ることで生計を立てているそうだ。
好奇心が旺盛だが、魔族としては非常に弱く、単騎では魔獣にすら勝てないほどだとか。
「くろながのふく、ざいりょうなし。しばらくまつ」
「……わかった」
「あかながはふく、いるか?」
あかながとはサラティスのことだろう。
くろなが。
あかなが。
外見的特徴を呼んでいるのだろうか。
「私はサラティス・ルワーナ・リステッドです。あいにく今は手持ちがなくて」
ふとここで思った。
魔族の通貨事情はどうなっているのだろうか。
「あれ?ディスサルさんお金は持ってるんですか?」
「金?対価など出すわけないだろ。こいつらは弱い」
「あー弱いものいじめはだめですよ」
「いじめてはいない。こいつらには貸しがあるからな」
「……本当ですか?」
魔族は人間とは違う。
異なる魔族同士を従わせる法律などない。
これが魔族なのだ。
「ああ。こいつらは何かと便利だから、友好を築いていた方が得だ」
「そうですか」
信じるにも、疑うにもまだ判断材料がないため放っておくことにした。
「くろなが、あかなが。いえでまつ」
「分かった」
ディスサルの服は材料が無く、作るのに時間がかかる。なので、その間部屋を貸すから泊まって待っていろとのことだ。
しかし、遥か頭上。
身体強化したサラティスでも届かない距離をどうやっていくのか。
ニャニャントはとてつもない跳躍力で飛び、器用に木を登っていく。
まず真似はできない。
「っち。舌噛むなよ」
「はい?え?あっ」
サラティスは戸惑う直後風を感じた。
「はえー」
サラティスは投げられた。
上に投げ飛ばされるなどそうそう経験できることではないだろう。
普通の五歳児なら気絶していただろう。
サラティスは上手い具合に着地した。
「わっ。いつのまに?」
床に着地し見上げると既にディスサルが横にいた。
「くろなが、あかながここでねる」
「あ、宿ってことですね。ありがとうございます」
木材の良い香がする。
部屋の空間はディスサルも問題なく入れた。
中に人間が作るベッドと変りないベッドが置いてあった。
ただし、サイズはサラティスがちょうど良いものしかない。
「俺は使わないから安心しろ」
「まぁ、こればかりは種族の違いでしょうからね」
「泊まるつもりなかったしな」
「あ、食べ物とかどうするんですか?」
「言えば渡すだろ」
「それはちょっと遠慮したいですね」




