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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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第72話「良い魔法、悪い魔法」

「おはようございます」

「ああ。これから、方針はあるのか?」


 サラティスは食事、寝る場所の確保が優先で良い。

 無理して先に進むつもりはないことを伝えた。


「……」

「どうしました?」

「おかしなガキだなと」

「失礼な」

「普通のガキなら急いで帰りたいと泣きわめくんだじゃないか?」

「そういう子もいるかもですね」


 だが、目の前の少女はどうだ。

 完全に旅慣れしているように見える。


「ひとまず、移動しながら朝ごはんを確保してですかね」

「途中寄りたいとこあるがいいか?」

「大丈夫ですけど、人間が居ても平気なんですかね?」

「知るか。文句言うなら殺せばいい」

「いきなりは殺さないでください」


 二人は洞窟を出た。

 食べられる果実を複数見つけたのでそれを二人で食べる。


「すぐ先に川がある。寄ってくか?」

「そうですね。できればお願いします」


 すぐ先。

 四時間ほど歩くと細い川に辿り着いた。

 川幅は大人二人分程度でかなり底も浅い。

 サラティスは所要を済ましディスサルと合流する。


「そういえば、ディスサルさんてこれ使います?」


 イルンシロンの毛皮である。


「いらん。寄りたいのは服を都合するためだ」

「風邪ひきません?」

「俺は魔族だ」

「風邪になったことがない?身体の組織そのもの?魔力が変容した結果?風邪そのものが魔族には通用しなから?」

「おい」


 サラティスの呟きが始まった。


「あ、ちょ待ってください」


 気づけばサラティスは置いてかれていた。


「おかしなやつだ」

「知ってます」


 そう、恐らく自分は人間で一番おかしいだろう。

 生前の記憶があるのだから。


「っち」 

「ディスサルさんって優しいんですね」

「は?何を寝ぼけたことをほざく。俺は穢れだぞ。それにお前なんてたかが人間だ。殺すことなど造作もないぞ?」

「穢れ……まさか、その魔石は」

「なっ」


 動揺のあまり、初歩的なことを見落とした。

 普通の人間に穢れという単語は会話としては通じない。

 穢れは人間に当てはめると、悪党、罪人などの言葉が近い。

 つまり、何かしら悪いことをしたという主張なのだ。


「何故だ」


 ディスサルの目が暗く暗く殺気がほとばしる。


「何故ってその魔石、すごい嫌な感じがします」

「っつ。……」


 殺気が静かに収まっていく。


「嫌な感じとは何だ?」

「私は魔法についてよく知りません」

「人間だからそうだろうな」

「でも、魔法でも良い魔法と悪い魔法があるのは知ってます」

「なんだそれは」


 魔族である自分は知らない。


「良い魔法とはきらきらしてます。悪い魔法はどろどろしてます」


 子供独特な感性かと理解できないことを納得した。


「もしかして、その魔石のせいで制限かかってる感じですかね?」

「どこをどう読み取ったらそういう結論になる」


 必死で調べたからだ。

 相手を害する呪いに分類される魔法を。

 その知識から、明らかに良くない魔法が魔石に込められているのは分かる。


「まぁ、いい。とっと行くぞ」


 ディスサルは確かに強い魔族のようだった。

 魔獣に数回遭遇したが、ディスサルが睨むだけで魔獣は逃げ出した。

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