第484話「恐縮なお願い」
「……デボンス様。誠に勝手なお願いで恐縮なのですが可能でしたら、一度あのハンマーで石を砕く作業をサラティス様に体験させてもらえないでしょうか?」
「……いいですが、本当に大丈夫ですかね?後でセクド様から怒られたりしないですか?」
「大丈夫です。こちらからお願いしているので、お父様は怒るような人じゃないですよ」
不安そうにデボンズはハルティックに視線を送る。
「大丈夫です。全てサラティス様の自己責任でデボンス様達に一切ご迷惑はおかけしません」
三人はハンマーで作業している作業員に近づく。
「んじゃ、おーい、モンデ」
「なんでしょう?」
呼ばれた作業員が機敏に手を止め、反応する。
横に立っているサラティスを見ると硬直し、震えながら頭を下げる。
「こちらは、リステッド家のご息女サラティス様だ。別に文句を言いにきた訳じゃねんだ。お前ちっとハンマー貸してやってくれ」
「え?は、ハンマーをですか?」
サラティスを見て、自分が持っているハンマーを見て、サラティスを見て、デボンスを見る。
「ああ。ほら」
「お、重いのでお、お気をつけください」
サラティスほどの長さがあるハンマーを受け取る。
「これを確かに重労働ですね」
強化魔術を使っているので、持ち上げられないということはない。
「行きますよ」
サラティスは軽々と振り上げる。
『ガコンッ』
「大丈夫ですか?」
ハルティックはサラティスの手を凝視する。
「はい、大丈夫ですよ」
ハンマーから伝わり、衝撃は確かに手に訪れた。
その衝撃は体にダメージを与える物ではなかった。
しかし、魔術も使えないか弱い女児であれば違うであろうが。
「あら?……ごめんなさい、モンデさんお手本見せて貰っても?」
「え?あ、はい」
サラティスはハンマーを渡す。
「少し離れましょうか」
デボンスに言われ三人は少し離れる。
『ガゴン』
「おお、本職違いますね」
サラティスがハンマーを打ちつけた時、塗装に罅が入った。
モンデの場合は罅が入るだけでなく、石が砕け欠片が周囲に飛び散った。
「単純に私の力が弱かったってことですかね?」
「力より振り下ろす速度かなと」
「あーなるほど」
「それと、地面とハンマーの面が触れる瞬間力を込める感じですね」
「サラティス様、こいつは魔人でして普通の人より力も体力もあるんですわ」
「魔人なのですか?」
「す、すみません」
頭を下げる。
「何で謝るんですか」
「そうだ。サラティス様はアレシア様とご一緒でそういった偏見なんてない、素晴らしい方だぞ」




