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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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第483話「有能な使用人」

「あれは土を掘り返してるのですか?」

「へい。水道管は土の中になるので、まずは道路を舗装している石を剝がさないとなんねぇんでっさ」


 作業員たちがハンマーを地面に叩きつけている様子が見える。


「大変そうですね」

「力が必要ですからね。しかもリステッドは猶更でっさ」

「どういうことですか?」

「リステッドの舗装は魔獣被害が多いため、他の所より分厚く石を使ってるんですよ」

「ああ、だからその分砕くのが大変と」


 サラティスは作業員の様子を見逃すまいと凝視する。


「……デボンスさん」

「なんでしょう」

「石を砕くのに魔術具か何かはないのですか?」


 サラティスもさすがに常識は頭に入っている。

 普通の人は仕事を楽にするために魔術を使うことは少ない。

 それだけ自由に魔術を使えるのなら魔術師としてやっていくからである。

 なので使われるのは魔術具の方である。


「石を砕くのは俺は知らないですね。工事現場で使われるのは使い捨ての爆発するやつでっさ」

「爆発ですか……」

「でかい屋敷を解体する時に使うですが、かなり高額で一個百万フェルくらいはしたかと」


 どれくらいの規模の爆発かは分からないが、一個百万フェルは高いだろう。


「爆発は確かに街中じゃ使えないですね」


 デボンスはこくこくと頷く。

 魔術具の費用と人件費を考慮したら人件費の方が安いそうだ。


「デボンスさん」

「な、何でしょうか?」

「サラティス様」


 サラティスが言い出す前にハルティックが止める。

 有能な使用人とは言葉にせずとも主人の意を汲むものだ。

 そして、ハルティックは次の言葉が容易に想像できたので止めたのである。


「ハルティック、まだ何も言ってませんよ」

「お言葉ですが、サラティス様のことなので試しに石砕きを体験させてくれと仰るつもりなのでしょ?何で分かったのと顔なされても分かりますよ」

「ハルティック、知識と理解は違うのですよ」


 今作業員が行っている作業は悪く言えば、専門性は必要ない。

 なのでサラティスが体験しても迷惑がそこまでかかるわけではない。

 なら、いい機会だしやってみてもいいではないかと。


「いいですか?こちらは遊びではなく力仕事です。お怪我なされたらどうするおつもりですか?治せばいいではありませんよ。工事中に貴族が怪我をした。この事実が作業員の方々にとって迷惑なのです」

「うっ。……大丈夫です。お父様との訓練に比べたら怪我などしません」

「……」


 今度はハルティックが言葉に詰まる番。


「お父様の拳に比べたら、ハンマーで動かない石を砕くなんて怪我のしようがありませんよ」

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