第481話「不審者対策」
「なので畑や院の中まで入ってくる輩は捕まえられるのですが、それでも今までないことですのでやはり不安ですね」
「それはそうですね。子供への視線は怖いですものね」
思い出すだけで腹と内臓がひっくり返りそうになる。
怒り。怒り。怒り。
とある村で子供が集団で誘拐され、道具として扱われ皆死んだ。
普段は冷静に皆を窘めるメガウィンストさえ怒り犯人の元へ殴り込んだ。
事件の数日前、子供が視線が怖いと言ってるのを聞いていた。
あの時、何かしていれば防げたかもしれない。
抜け落ちない後悔。
「少し考えてみます」
当時できた手法は現代ではほとんど通用しない。
サラティス達はしなかったが、戦場で疑わしい相手は殺した所で何も問題はなかった。
内通者があちこちにいたのだ。
だが、現代で怪しそうな人物が孤児院の周りにいる。
それだけで殺すなど実現不可能である。
「院長さん、少し相談というか将来的な話しなんですがいいですが?」
「もちろんです、何でしょうか?」
「お医者さんを育てるのって大変ですか?」
「医者ですか……」
院長は思索に耽る。
数分の沈黙が流れる。
「申し訳ありません。色々考えましたが浮かばず。他領の事例を思い返してみたのですが、思い当たる節がごいざいません。素人ですが、やはり医学の知識と回復魔術の技術がないとなれないので大変かと」
「ですよね」
「まさか、孤児院で医者の排出を考えておられるのですか?」
「うちは医者の数が少なくて、魔獣被害も多い土地。遠方で移住希望の方だって少ないじゃないですか」
これでも肉や菓子のお陰で少しばかりは移住してくる人が増えたのだ。
「だったら領内で医者を育てた方が現実的かなと」
「確かに他所から招くより安心はできますが……」
「はい。やはり医者を目指すには小さい頃から勉強をしないといけないじゃないですか」
現在リステッドにいる医者は、リステッドで学び育った医者なのだ。
勿論皆平民である。
学校への支援を手厚くし、医者を育てる。
これは勿論行なわねばならないが、それだけで不十分かなと思った。
「それと一般のご家庭だと子供に勉強をさせるのはその親御さん次第。孤児院だと基礎を義務で教えて、素質がある、興味を持って学びたいという子に継続で教えることができれば、効率的かなと」
「なるほど……。今は想像もできませんがもし、孤児院から医者になる子が出るようになれば、素晴らしいことですね」
「何かあったら協力を頼みたいのですがいいですか?」
「もちろんでございます」
ぶんぶんと首を振る。
院長室を出て、子供達と触れ合う。
帰り際に手紙や子供たちが描いた絵などを貰った。




