第480話「そういう訳ですか」
「こ、こら。すいみません。ほら、サラティス様と大人の話しをするから通してちょうだい」
子供達も院長が怒りそうなのを察し、素直に道を開ける。
院長室に入り、お茶が出される。
「改めて、本日はお忙し中誠にありがとうございます」
「はい。それはいいのですが、あれは何ですか?」
「サラティス様を聖女とお呼びした声ですね……大変申し訳ありません。子供なので何卒ご容赦を……」
院長は立ち上がり深々と頭を下げる。
「怒ってないですよ。理由が知りたいのとできればやめて欲しいですね。私は聖女ではないので」
「サラティス様を聖女様と呼ぶのは恐らく職員の言葉を聞いて、自然と広まってしまったのかと」
「職員が?」
「はい。サラティス様は子供ながら、孤児院の為に私財を投げうってまで寄添ってくださいました」
「へ?」
いくつか提案を出したりした。
寄添ったというのは確かである。
しかし孤児院は寄付や領から出しているので、サラティス個人がお金を出してはいない。
そもそも余程の事情がない限り、お金を出すつもりはない。
直接金を渡すくらいなら、教師の雇用費用や施設の改築費用を出す。
「まずはサラティス様のご提案から始まり、孤児院の体制などが変わりました。そして、ようやく教師を雇って子供達に勉強を教えれるようになりました。それはササモの収益のお陰です」
「それはなによりです」
その事実は既に知っている。
手紙に混じる報告書に記してあった。
「しかし、そのササモとはサラティス様と魔族の方の友好の証で、サラティス様個人の物です。本来であれば、それらの利益はすべてサラティス様お一人のもののはず。それを見返りも求めず、ただただ子供達の為に無償で差し出す。まるで、聖女様のような御心だと。それを聞いた子供達が聖女様だと口にするようになったようです」
「あーなるほど」
そこまで感謝されているとは。
そして理解はできた。
聖女と呼ばないように注意するのと、例え聖女のようだと思って心に秘めるように約束してくれた。
「最近困ったこととか、解消したいことってありますか?」
「……多々ありますが、やはり一番は不審者対応でしょうか?」
「あー泥棒ですね」
「はい。ササモに関しては騎士の皆様が守ってくださっています。それに周辺の住民の方がなど有志の方が自発的にパトロールしてくださってます」
「そんな方がいるのですね」
実にありがたいことである。
きっと子供は宝であるという立派な方が周囲にいるのだろう。




