第48話「病院へ」
サラティス達は家の外に出るとバインド領の騎士達が集っていた。
「すまない、一番ここから近い病院はどこだい?」
「ここの通りをまっすぐいって突き当りを右に曲がり暫く進むと左側にあります。獣牽車で約十分程度です」
待っていられない。
獣牽車が来るのを待ってから十分。
「お父様、待たずに行ってください」
セクドが走ったら一瞬だろう。
二人を抱えたままセクドは病院に到着した。
病院は入口が二カ所あり、セクドは片方の入口から病院に入った。
領内の主要な病院や、貴族の屋敷が近い病院は入口が二つある場合が多く、平民と貴族専用で分かれている。
貴族専用から入るが、入口の警備に止められた。
貴族専用から入ってきたとはいえ、余りにも血まみれすぎたからである。
セクドは名乗り、ケイトの容態が窮すること説明した。
領主の孫である。最優先なのだろう。
医者がすぐさま駆けつけ、ケイトは運ばれていた。
「すまないが、サラティスも見てもらっていいだろうか?」
サラティスは怪我は一切していないと言ったが、セクドは譲らなかった。
念のため診察をしてもらうことになった。
「セクド様はここでお待ちいただけますでしょうか?」
「親なんだけどね?」
「勿論です。そこではなく、あの……そのお姿だと流石に不衛生ですので……」
「あ」
セクドは当然サラティスについて行こうとしたが止められた。
医者に言われ納得した。
「すまないね、確かに先生の仰る通りだ」
「もしよろしければ職員用の風呂を使いますか?服が検査着しかないのですが……」
「本当かい?では、借りても大丈夫かい?」
「もちろんです」
サラティスは診察を受け問題がないため、女性看護師に連れら風呂で血を洗い流した。
サラティスもケイトに付き添うと言ったが血まみれの状態で困ると言われ、それもそうだと洗浄した。
二人が戻ってくるとガルヴァ達も到着していたようだ。
騎士の一人がガルヴァは、ケイトの状況について説明を受けている最中だと教えてくれた。
セクドは職員に個室の待合室を少しばかり借りたいと申し出た。
騎士に人払いを頼み家族水入らずの状態になった。
「サラティス本当に無事で良かった」
セクドは思いきり抱きしめる。
「お父様。ごめんなさい」
「何を言ってるんだい。サラティスに悪いことなど何一つないよ」
セクドは頭を優しく撫でる。
今回に限っては完全に巻き込まれただけなのは明白である。
「それに、サラティスのお陰で場所が分かったからね。あれは前に教えた合図の魔術と光魔術を組み合わせたものだろう?」
「そうです。煙だと長時間維持できないのと、風が吹いたら消えてしまうので」
「うん」
セクドは撫で続ける。
「これからいくつか質問しなくちゃいけない。怖くて思い出したくない、今は話せなかったら、そう言ってくれればいいよ。無理する必要はないからね」
「はい」
「サラティスが捕まってから見たこと、聞いたことなど話してくれるかい?」
「分かりました」
サラティスは眠らされたこと。
目が覚め誘拐されたことが分かったので、寝たふりをして合図の魔術を仕掛けたこと。
ケイトが自分を庇って大怪我し、自身が回復魔術で治したこと。
血がたくさん流れたので一刻を争う事態なので、脱出を試みたこと。
魔術を使って向かってくる敵を攻撃したこと。
セクドは黙って最後まで聞いた。
サラティスは冷静になってから、考えると少々やりすぎたと反省していた。
風魔術ではなく雷魔術を使えば流血は抑えられたかなと色々振り返った。
「サラティス。それは正しい魔術の使い方だよ。命を犯罪者から守るためだから決してサラティスは悪くないよ。並みの騎士だってこうまで上手く立ちまわれない、サラティスの勇気がケイト君も助けたんだ。それは誇っていいことだよ」
サラティスはもっと上手くやれたかもしれないという反省を、魔術を使って人を傷つけたことに対する反省と誤解し必死で慰める。
「お父様」
「なんだい」
「ケイと遊ぶの禁止。なんてならないですよね?」
「……当面の間バインド家にサラティスが行くのは難しいけど、ケイト君がうちに来て遊ぶ分に問題ないよ」
そもそもケイトも一切悪くないのだから。
そしてケイトは幼いながら、サラティスを守るために勇気をふり絞って立ち向かったのだ。
個室から出るとガルヴァが待っていた。
「すまなかった。サラティスちゃんに大変怖い思いをさせて」
ガルヴァは頭を下げた。
「そして、ケイトを助けてくれて感謝する。二人がいなければ確実に死んでいただろう」
「ガルヴァ、こちらからもケイト君の勇敢さに感謝を」
「ああ。俺としてはもっと違う場所で発揮してくれりゃー良かったのにと思ったけどな」
男としては女を守るために立ち向かった勇気は誇りに思う。
親としてはいたたまれない。
「マグガリア殿には悪いけど、今日は帰らせてもらう。やり取りも私を通してでサラティスに直接は遠慮願いたい」
「分かってる。治療費だ、服の弁償もきっちり払う。すまねぇな」
「おじさん、お願いがあります」
「なんだ?」
「ケイを怒らないでくださいね?」
無理な状況、怪我するのが目に見えて分っている状況で相手に挑むなんて蛮勇だと怒られるのではないかと心配していた。
「ふっ。臆病なケイトが男を見せたんだ。褒めはすれど、叱ったりはしねーさ」
「それと、私は怒ってないのでまた遊んで欲しいです」
「っ。も、もちろんだ。本当にサラティスちゃんは良い子だな」
「だろ」
「ケイトにはもったいないくらいだ」
二人は帰ろうとしたが、受付でそのままで帰るのかと聞かれ気づいた。
二人自身は検査着姿でいるのは何も思わないが、貴族としてはみっともない。
バインド家の騎士にリステッドへの知らせを頼み迎えを待った。
待っている間、サラティスはケイトの家で遊んだことを話した。
家に無事に帰ることができた。
サラティスは久しぶりにセクドとアレシアと一緒に同じベッドで眠った。




