第47話「密室、男二人……」
時間は遡ることサラティスとケイトが眠って誘拐犯に連れ去られた直後。
バインド家ではガルヴァと領主であるマグガリアが険しい顔して今後の方針を相談していた。
「どうなっておる」
「まず、セクドに知らせを送った。騎士達には関所を封鎖しろと指示を出した」
「そうか」
「十中八九、残党の仕業だろうさ」
「……ケイトは兎も角、サラティス嬢が攫われたのは不味いな」
「あ?」
「ガルヴァどこに行く」
「サラティスちゃんに何かあれば二人に顔向けできねぇ。だがケイトだって攫われてるんだぞ」
「お前は次期領主だ。領主たるもの冷静に対処せねばならぬ」
「冷静にってのはそうだろうさ。だがよ、親父殿。俺はまだ領主じゃねぇ。手前のガキ救えねぇ領主が一体誰を守れるってんだよ」
ガルヴァは屋敷を出て捜索に向かった。
そして、急ぎの知らせがセクドの元へと届いた。
「セクド様、火急の知らせがバインド家から届きました」
セクドは嫌な予感がした。
急いで手紙の中を確認する。
「せ、セクド様」
セクドはいきなり立ち上がった。
「すまない。アレシアに急な仕事で出ると伝えてくれ」
「せ、セクド様?」
騎士を置いてセクドはどこかに行ってしまった。
バインド家は厳戒態勢が敷かれていた。
「だ、誰だ!」
屋敷の門を警備していた騎士は近づいてくる人物に声をかける。
「私はセクド・ルワーナ・リステッドだ。バインド家から火急の知らせを受け参上した。通してもらえるかい?」
「セ、セクド様?」
当然バインド家の騎士達はセクドの顔を知ってる。
「マグガリア様、セクド様がお越しになられました」
「通せ」
使用人がドアを開ける。
「お久しぶりですね、マグガリア殿。説明願いたい」
「お久しぶりですな、セクド殿。座ってくだされ」
「……手紙の内容はどういうことですかね?」
セクドは急いでいたが、ここで言い争っても仕方がないので大人しくソファーに腰を下ろした。
「報告によると、サラティス嬢とケイトが乗った獣牽車が奪われた……」
実行犯は恐らく最近捕まえた盗賊の残党。
盗賊は操者になり替わっていた。
本来の操者は自宅で殺害されているのが発見された。
「接触は?」
「まだじゃな」
「……」
誘拐ということは目的が達成されるまではサラティスは無事だろう。
だが、命が担保されているというだけで怪我をするかもしれないし、何より怖い思いをしている。
早く助けたいの一色である。
「マグガリア殿、二つ程お願いがあります」
「なんですかな?」
「私が貴殿の領内で捜索活動する許可。犯人らと接触し交戦になった場合の戦闘許可」
「……」
領主として頷けないことである。
治安維持の観点からも他領の人間に好き勝手されるのは好ましくない。
「我が領の騎士達が信用できないと?」
「信用していたので、サラティスを送り出したのですがね」
「……面目ない」
「バインド家に対して怒りはありません。貴方たちと事を構えるつもりもありません。ただ親として子を助けたいだけです」
「それが越権行為だとしてもですかな?」
「我が子を助けるのなら。躊躇う必要などないですね」
「……。分かりました。くれぐれも、一般市民には影響が出ぬようにお願いします」
「勿論です」
今回は立場も相手も悪い。
これで仲たがいするくらいなら、飲み込み好きにさせた方が良いとマグガリアは判断した。
セクドは街に向かった。
道中遭遇した騎士に事情を説明し、情報を提供させた。
関所は封鎖しているため、街の中に潜伏している可能性が高い。
二人が乗っていた獣牽車は見つかった。
が、既に破棄されており、有力な情報ではなかった。
溜息を吐き、空を見上げる。
どうか無事であってくれ。
「……ふっ」
心配で仕方ないがセクドの口元は笑みが浮かんだ。
「まったく本当に……」
セクドは街のとある地点目掛けて走った。
「君たち、私はセクド・ルワーナ・リステッドだ。既に聞いているかもしれないが、私も捜索に加わっている」
近くにいた騎士達に声をかける。
「ここに恐らく、二人がいる」
騎士達は戸惑いの表情でセクドを見る。
セクドは確証があった。
この家の遥か上空に光源を見たからだ。
前にセクドが教えた騎士団達と連絡を取る魔術と、光魔術を組み合わせたのだろう。
あれは居場所を知らせる合図。
ならここにいる。
セクドは二階建ての家のドアをノックする。
中から人の気配はするが、居留守を使っているが反応はない。
なら一つだけ。
セクドは思いっきりドアを蹴り飛ばした。
ドアは番ごと破壊されすっ飛んでいった。
中には武装した人間が複数人。
セクドは愛娘を助けるため剣を抜き、目の前の集団に突っ込んでいた。




