第46話「魔人の脅威」
既に床に転がっている男達は二十人に達した。
それなりの規模の盗賊と言ってたが確かに、残党の数を考えるとかなりの規模だったのだろう。
しかし、ようやく一階への階段が見えた。
上の階も相当騒ぎになっているようだった。
が、当然の如く邪魔が入る。
武装した男が三人。
二人は円舞曲を踊るように首が優雅に床に落ちた。
「なんだよ、この化け物は」
「な、ま、魔人?」
確かに風魔術で攻撃したはずだ。
二人の男の首は刎ねた。が、目の前の男の首はきっちり体についたまま。
外したわけでもない。確かに攻撃はあったが皮膚の色が変色し風を弾いた。
首の皮膚が魔獣の鱗のように金属並みに硬くなり、黒紫に変色している。
魔人は親である魔族としての能力の一部現れたりする。
「ち、当たり前に避けるのか」
攻撃された直後、魔人はナイフをサラティス目掛けて投げたが、サラティスは冷静に躱した。
サラティスは風ではなく別の魔術を使おうとしたが、衝撃の余り攻撃できなかった。
「サラティス!」
「お父しゃま!」
魔人の背後から盗賊の仲間ではなく、セクドがやってきた。
そしてサラティスには理解できないことが起きた。
セクドは魔人にゆっくりゆっくりと近づく。
だが、魔人は振り返ることなくサラティスの方を見ていた。
セクドはゆっくりと魔人の首目掛けて剣を振る。
剣は首に到達するが魔術と同じく剣が弾かれた。
そこで初めて魔人は振り返った。
セクドは剣を突き立てた。
魔人は抵抗することもなく、剣はゆっくりゆっくりと口へ目掛けて進む。
剣は口内に侵入すると、口内の肉に存在の痕を残しながら前へ前へ進む。
『ゴキ』
何かを砕く音が聞こえた。
そしてセクドは剣を横に振った。
魔人の顔に新しく大きな口ができた。
セクドは剣を縦に振り下ろす。
今度は大人しく魔人の体は二つに裂けた。
セクドが残忍だからではない。
相手が魔人だと分かったので、体内なら刃が通るだろうと考え口に剣を突き立てた。
それで致命傷だが、魔人は場合によっては魔族並みの生命力を誇る。
確実を取るために追撃した。
そして、魔人がゆっくりと近づくセクドに無抵抗だったのも理由がある。
それはサラティスの目だ。
身体強化を最大限にした状態のサラティスの目で姿が追うことができた。
セクドが魔人に剣を振ってから、真っ二つに裂けるまでの間はおおよそ一秒にもみたない速攻。
魔人は抵抗しなかったのではなく、セクドを認知するまえに絶命しただけであった。
「サラティス、くっ無事かい」
「お父しゃまは大丈夫でしゅか」
サラティスの血は全て返り血で自身には怪我一つない。
「お父さんのは返り血だから怪我はないよ」
「私もでしゅ」
セクドは前、サラティスからすれば背後を見て言葉を失う。
それは死屍累々の血化粧の纏いを見てではない。
サラティスの魔術の腕ならばこの程度は可能なのだろう。
シェリーからさんざん言われていたことだ。
サラティスは制御が完璧だから問題はないが、魔術は一つ間違えれば危険だと。
通常時は完璧でも子供だ。何かあった時、大事故が起きるかもしれないと。
セクド自身も、シェリーも魔術の危険性は口煩く伝えてきた。
この状況で、冷静に的確に魔術を行使できる理性、技量、戦闘センスがこの光景を作った。
ジェリドとは違いサラティスには、一切武術に関しては教えることがなかった。
教えてなくてこれなのだ。
自分の子供の、この才能に関して、どう接していくべきかと、悩み言葉を失ったのだ。
「お父しゃま、ケイが大怪我でしゅ。すぐ病院に行って輸血しにゃきゃまずいでしゅ」
「なんだって?」
確かにケイトの服は裂け血で汚れているが傷は見当たらない。
「怪我そのものは、回復魔術で治しました」
「分かった」
セクドはケイトとサラティスを抱きかかえる。
「しっかり口閉じてるんだよ、サラティス」
セクドはそのまま建物を脱出した。
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