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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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第49話「新しい提案」

 誘拐事件の影響でリステッド家も慌ただしかった。

 屋敷の護衛に関しては今までと変らずだが、街への移動の護衛の数が増えた。

 サラティスからすれば、ただ誘拐されただけなのが、周りは獣牽車がトラウマになるのでは?などとても気を使ってくれるようになった。

 ありがたいが大げさと言っても我慢してる、気を使わなくていいと言われる始末。

 仕方なく大仰な護衛などを受け入れた。

 ワイルボロルの肉を売り出す時が来た。

 サワランダーで試食会を開くことになり、サラティスはそれに参加した。

 セクドとアレシアも心配ではあるが、やりたいことをやらせて気を紛らわせた方がいいとなり、サラティスも無事参加することが許された。

 試食会も最初は躊躇う人も多かったが、貴族しかも幼い子供のサラティスが薦め、自ら口にしているのを見て、皆腹を括り口にしその美味さに驚愕していた。

 良い意味で衝撃が広まり、新しい料理として順調に広まりだした。

 ササモについても進展があった。

 ササモが成長し豆ができた。

 これをどこに埋めて増やすかの会議が始まった。

 セクドの仕事部屋には、セクド、アレシア、サラティス、レザクター、ダヴァンが集まっていた。


「私としてはアイスティアでリステッド家主導で育てるべきだと思う」

「私はこの屋敷内で育てた方がいいかと」


 早速セクドとレザクターで意見が対立した。

 因みにダヴァンが呼ばれた理由はササモではなく豆の活用法についての知見のためである。

 なので、ダヴァンはまだ自分は関係ないと聞き流していた。


「屋敷だと量を増やすのに限度があるけど?」

「確かに量はそうでしょうな。しかし、これは人間社会には広まってない稀少な植物。流出、盗難の危険性を考慮したら屋敷で育てた方が良いかと」

「あー確かに。それもあるか」


 今回はワイルボロルと方針が違う。

 ササモは貴重な植物なため、農家に譲って育ててもらうことはしない。

 あくまでリステッド家主体で行い、リステッド家が雇った農家が育てる形になる。

 直接従事する人間は契約魔術を交わせば問題はないが、盗難に関しては物理的に防ぐしかない。

 騎士を常駐させるのもありだが、人員、コスト、魔獣襲撃時どうするか。

 そこを考慮しレザクターは屋敷の方が良いのではないかと判断だ。

 だが、セクドの指摘通り、量産、農業として屋敷で育てるのは限度がある。

 どちらをとるか、またはそれらすべてを解決できる案はないか話し合う。


「サラティスは何か思う浮かぶ案はあったりするのかしら?」


 会議が詰まった所でアレシアがさりげなくサラティスにバトンを渡す。


「案はありますが……」


 サラティスは使えるものは使うの思想だが、貴族としては相応しくないので発言していいものかと迷っていた。


「何だい、言ってごらん」


 この場において誰もがサラティスの才を知っている。


「私もアイスティアが良いと思いました」


 セクドはレザクターに勝ち誇った顔をした。

 レザクターは表情を一切変えずサラティスの言葉を待つ。


「でも農家さんに手伝ってもらうのではなく、孤児院の子供達にやってもらうのはどうでしょうか?」


 セクドとレザクターは感電したかのように硬直する。

 二人とも信頼できる農家、大規模事業に慣れている農家など頭の中で協力者を浮かべていたが、まさかここで孤児院とは絶対出てこない案であった。


「私と一緒に孤児院に行ったからかしら?」


 アレシアは領主の妻として孤児院や病院など訪問している。

 ロザリアを妊娠してからは体を考え中止していたが、無事産まれ暫く経ったので再開した。

 それに興味を持ったサラティスは同行したのだ。

 孤児院は現状、領からの予算と、一般市民からの寄付、孤児たちの労働の対価で経営が行われている。

 餓死するほど貧困ではないが、決して恵まれてる訳ではない。

 それに孤児院の子供が学園に通うことはできない。

 せっかく学園というものがあるのだから、通い教育を受けることができたらもっと、将来の選択肢が増えるのに。

 自分がそうだった。

 宿屋の子供だったから計算を叩き込まれた。

 村の中には計算ができない子供はいた。旅をするようになり、計算ができるということはとても恵まれたことだと知った。

 そして、計算ができないのは不便で、不幸になりやすいことを知った。

 例えば、村の中で農業の手伝いだけを一生するのなら計算ができなくても問題はないだろう。

 だが、生きていくうえで買い物はするだろう。

 真っ当な商人とだけ取引するのなら別だが現実は違う。

 悪い商人にお金を誤魔化されたり。

 文字の読み書き、計算の二つは絶対出来た方がいい。

 だが、領内の財政を考えたら無償で提供することができない。

 ここでササモに結び付ければとサラティスはふと思ったのだった。


「お言葉ですが、サラティス様と市井の子供は違います。サラティス様だから可能、という事柄が多いことは留意していただきたい」

「違いますよ、孤児院だけにやってもらうんじゃなくて、孤児院主体でやってもらうです」

「ほぉ」

「ササモの育成に関しては水と魔力。育ったら水だけで育てられます」


 実際最初の一本はサラティスが育てたのだから。


「これだけなら、子供でもできます。管理や収穫に関しては農家さんにお願いするのではなく、農家さんには子供たちの指導をしてもらいます」

「……」

「今すぐは無理ですが、何年かしたら孤児院だけで管理までできるようになるかと」

「なるほど。孤児院を出るタイミングで指導者として職務につけると」

「そうです。収穫したらリステッド家で買い取り。そうすれば他の商人などと接触する必要もないかと」

「それなら、空いている時間でお勉強もできるわね」


 アレシアも頷く。 


「サラティス護衛に関しては何か考えはあるかい?」

「ササモ農場には騎士を半分だけ配置します」

「半分かい?」

「はい。残りの半分は市民の方を雇う形ですね」

「ギルドに依頼するってことかい?」

「ギルド?」

「あーそっか。ごめん、ギルドについて説明しようか」


 セクドはギルドに首を傾げた理由をサラティスが知らないからと説明を始めた。

 サラティスはギルドを知っていた。何故ならネイシャはギルドに所属していたからだ。

 あの頃と同じ組織として残っているのか?という疑問であった。

 ギルドは簡単に説明すると武力の派遣組織である。

 戦乱の時代、国ではなく人類の存続の危機であった。

 国という枠組みを越えて協力しあえる組織が必要で作られた組織だ。

 なので、サグリナ王国だけでなく各国にギルドは存在する。

 今は大きな戦争はないので、犯罪者を逮捕するための戦闘協力、魔獣駆除の手伝い、商人や貴族の護衛などが主の活動になっている。


「ギルドではなく、領民にやってもらいます」


 領民に依頼し領民に報酬を支払う。ギルドに依頼するとギルドに金が流れてしまう。


「あ、それだったら孤児院を出た大人でもできるわね」


 どうしても孤児院出だと仕事に困ることも多い。


「確かにね。レザクターどうだろうか?」

「素人のみなら心配ですが、そこは募集の質で騎士の人数を増やせば可能かと。当初の想定よりは騎士の数を減らせるのは間違いないかと」

「ひとまずそれで、進めてみようか」


 こうして、一大プロジェクトが進み始めた。

 今回は相手が孤児院で交渉は不用なのでサラティスの説得の出番は不要であった。

 サラティスは夜一人悩んでいた。

 机に向かい紙をもてあそぶ。

 ササモを使った新しいお菓子を作ってみたい。

 髪を早く乾かす魔術を作りたい。

 どちらを先に手をつけるかで悩んでいた。


「サラティス様、まだ起きていらっしゃるのですか?」


 ドアがノックされハルティックがやってきた。


「あ、もうじき寝ます」

「あつ」

「だ、大丈夫ですか?今すぐ薬を」

「大丈夫です、心配かけました」


 サラティスは光魔術で机の上を照らしていた。

 机の一部が異常に熱くなっている箇所があったようで、そこに触れてしまった。

 ハルティックが火傷に効く薬を持ってこようとしたが回復魔術で治した。


「いいですか?怪我しても治せるからと不注意にならないようにお願いしますね」

「気を付けます」

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