第471話「サラティスの推理」
「大丈夫です。で、お話とは?」
「これです」
ハルティックは小さな紙切れをサラティスの手渡す。
「うーむ。『弟にきをつけろ』ですか。これは一体なんですか?」
「……これは先日私の枕元に置かれていたものです」
「誰かの悪戯ですか?」
使用人の屋敷に入れる人間はかなり限られている。
使用人の屋敷も男女で別の棟になっているため、寝室に入れるということは女性の使用人が犯人の可能性が高い。
「いえ、誰も侵入した形跡もありません。当たり前のようにサラティス様はお読みになることができるのですね」
「へ?」
サラティスは紙切れに目をやる。
書き殴りさらたような投げやりな筆跡。
「あ」
意識していなかったが、紙切れに書かれていたのは、魔族がよく使う文字であった。
今はどうだかは知らないが、魔族の文字は大変だった。
そもそも文字を使わない種族も多い。
文字を使いはするが、種族によって独特な文字を使うことも多かった。
だが、この紙に使われている文字は数多に文字がある中で、恐らく一番魔族の中で広く使われてる文字であり、必死に覚えた文字なので特段問題なく読めた。
「もしかしてですが、それは魔族の文字ですか?」
「そうですね。あ」
ハルティック宛に魔族の文字。そして、侵入が難しい寝室。
「ディスサルさんですかね?」
「恐らくは」
確かにディスサルであれば気付かれずに置くことは可能だろう。
「弟ですか。ハルティックに弟さんは?」
「兄と会話した時いないと言っていました。ですが、知らない所で腹違いの子がいたとしても、否定はできないとも」
「なるほど」
「しかし、仮に私に兄弟がいた場合、もっと違う書き方をすると思います。そもそも、これは私に向けてではなく、サラティス様に向けてな気がします」
「あーそうなんですね」
サラティスは考える。
「む。まさか、ロザリアが?いくらディスサルさんでも許しませ……」
「さすがにそれはないかと」
ハルティックが諫める。
「そもそも兄はロザリア様の人となりを一切知らないと思われます」
「確かにそうですね」
「あ」
弟と聞き、遥か昔のことが突如浮かびあがってきた。
「サラティス様?」
「なんでもないです」
それはネイシャと仲間のメガウィンストしか恐らく知らないであろう、驚愕の事実。
人類同士の些細な争いが、国同士の戦争になり、人類と魔族の戦争へと変貌した。
歴史で習う通り、人類は皆仲間で魔族が皆敵ではなかった。
人間に協力する魔族、反対に魔族に協力する人間もいた。




