第470話「手加減できますよ」
相手の目、顎、首、男性であるなら股間。
怯ませた瞬間を狙い、確実に二撃目で殺す。
だが武芸の世界では当然御法度だ。
戦場ならまだしも普段の練習で相手を殺すなどありえない。
「いいかい?投げるはいいけど、校庭から校舎にぶつけるとかは無しだよ?」
「お父様、分かってますよ。さすがにそんなことしないですよ」
「ごめんね。分かってるよ。サラティスが故意に相手を傷つけたりしないことは。でもお互い子供で、予想外のことが起きるかもしれないから、念には念をだね」
セクドは直ぐに手紙を書くことに決めた。
学園宛に医者を増やすもしくは、万全の状態でして欲しいと。
「とりあえず、その件は一旦置いておこう」
セクドは立ち上がり、机の引き出しから何枚か紙を取りだしサラティスの前の机に広げる。
「サラティスに謁見要望が二つほど来てるんだ。それは送った手紙の通りだよ。相手は魔術協会からと、孤児院の院長だ」
セクドのいう通り、サラティスに会いたいという要望が届けられたことが手紙に記載されていた。
だが、誰からかは一切書いていなかった。
「魔術協会と孤児院ですか」
魔術協会は何かとお世話になっているので、なんとなく理解できる。
だが孤児院がアレシアではなく、サラティスを名指しするのは理由が思う浮かばなかった。
「分かりました。どちらも会います」
「分かった。どちらが先か希望あるかい?」
「魔術協会の方で」
「分かった。ではそれで調整しよう」
「お願いします。孤児院はどうして私に?」
「現状報告と感謝を伝えたいんだって。孤児院の環境が劇的に変わるきっかけを作ったのがサラティスだからね。サラティスは普段が学園で会えないだろ?だから、この機会に可能であればって書いてあるね」
「あー。そうしましたら、私が行ってもいいですか?」
「ん?孤児院に向かうってことかい?」
「はい。雰囲気や子供達を見たいです」
「ふ、分かった。孤児院にはこっちが行くと伝えておくね」
しばらくセクドと雑談を交わし、仕事を部屋を出る。
「サラティス様」
「ハルティックお久しぶりです」
部屋から少し離れて、廊下にハルティックが立って待っていた。
恐らく離れているのは、聞き耳を立てている訳ではないという明示であろう。
「どうしました?」
「少しお部屋でお伝えしたいことが」
「分かりました」
二人はサラティスの私室に直行した。
感謝しかない。
久しぶりの私室。
一年無人の部屋も嫌な臭いもしないし、埃などもない。
きちんと掃除してくれている。
「お帰りなられたばかりの所申し訳ありません」
ハルティックは頭をひょこりと下げる。




