第468話「密室、次期領主と特命……」
「だから身体が慣れるまで、耐性のある服を身に着けるまで本気は禁止だよ」
「分かりました」
「学園にいる間は無理だけど、長期休みの時は服があって、私となら本気の訓練はできるからね」
それから訓練の時間を当主としての勉強の時間になった。
「そういえば、もうじきサラティスが戻ってくるね」
サラティスはまめに手紙を送ってくるので、セクドもアレシアも近況は知っている。
「相変わらず学年一位を取り続けているみたいです」
「だろうね」
そもそも筆記は学園に入る前に既に満点だったのだ。
欄の書き間違いでもしない限り、上位なのは確実だろう。
「サラティスは回復魔術を選んだようだしね」
「はい。驚きました」
「ん?」
「剣の授業で事故が起きて、腕を斬った子がいたんですよ。控えている教員が直ぐに治してくれたんですが、正直速さでいうならサラの方が早いかなと」
「ははは。因みにあくまで思っただけだよね?」
「も、もちろんです。口には出してません」
「ならよろしい。医者といっても事情が異なるからね。学園の医者は病院に比べて患者が少ない分、普段の治療回数が少ない。速度より痕に残らないことが重要視されたりと条件が違うと思うよ」
「あ」
「まぁ、サラティスが早いのは事実だし、今はもう王都の医者と同じレベルでもおかしくないと思うよ」
ジェリドは笑みを浮かべる。
「お父さんは嬉しくないんですか?」
対象的にセクドは少し困ったような顔をしていた。
「嬉しいけど、それよりも心配の方が強いかな」
「心配ですか?」
サラティスは顔が良い。
淑女といえるかというと、少し元気なので微妙な所である。
しかし、それを除くと人も良い。
婚約者がいるが、羨望の眼差しを向ける生徒は少なくない。
そういった場面では確かに少々心配になる。
そうならないように男子生徒とお話するのはジェリドの役目でもある。
だが、それはあくまでサラティスは何も悪くないし、恐らくそういった所に無頓着なため気付いてすらいないだろう。
「ジェリドは学祭で皆の前で剣で優勝しただろう?だから、よっぽど突発的なことでもない限り実力行使に出る生徒はいないと思うんだ。せめてもと陰口を言ったり、ジェリドを嵌めようと画策したりはあるかもだけど」
「……」
「でもサラティスの場合、見た目からは測り知れない才能だ。生意気だ、ちょっと泣かせてやろうなんて思って実力行使に出る子が出ないかってね」
「ああ。でも、サラならその程度軽く捻れるのでは?」
「皆の前でやられてやり返すならいいよ。でも、どうやら女子は巧みな戦術を張り巡らせることも珍しくないんだ。だから、サラティスが完封しても周りの目からサラティスが悪いなんてことになったらどうしようとかね」
女子どころか、相手が男子であっても負けじに言い返して殴り合ってというイメージが浮かぶ。
「まぁ、心配しても仕方のないことではあるんだけどね。そうだ、ジェリドにはこの休み期間中特命を与えるよ」
ジェリドの顔が引き締まる。
「え?」
真剣な顔がセクドの言葉で困惑へと崩れていった。




