第460話「ぶくぶく」
「悔しいがカリナ教員に報告するだけだな。さすがに家に手紙を送ってこのことを伝え抗議は……しない。あいつの一族の一人が学園の役員だからな。どうせ言いがかりだなんだと撥ねられる」
決定的な証拠がある訳ではない。
「あーだから、余計にですか」
魔術の才があり少し気が大きくなる。
それだけなく、身内のコネや権力の届く環境下。
大きくなった気がさらにぶくぶくと膨れ上がってるのかもしれない。
二人はこれ以上トラブルに巻き込まれたくないため、急いで木々を抜けカリナの元へと向かった。
「そう。一先ず大事にならなくて良かったわ。ツニデニットちゃんほっぺ見せて御覧なさい」
ツニデニットは素直に頬を差し出す。
「ごめんなさい、指で触るわね」
カリナは慎重に、繊細にツニデニットの頬を触る。
「ツニデニットちゃん、はい、お目目をぎゅーっとつぶってちょうだい。『輝け』」
ツニデニットが目を瞑るとカリナの指先が光る。
光魔術で頬や首筋など照らしながら、観察する。
「はい、ありがとう」
光が消える。
「サラティスちゃんの回復魔術が適切なおかげで可愛いお顔のままだし、ツニデニットちゃんも熱い感情に身を任せてつっかからなかった。現状最高の対応だったわよ」
カリナは盛大に褒めちぎる。
「安心して頂戴。ここから先は私達の領分。きちんと調べて次がないようにするからね」
バンバンとツニデニットの肩を叩く。
「さーて蕾ちゃん達、集まりなさーい」
咆哮。
木々の中にて聞えずらい環境であってもカリナの声は間違いなく届く。
「では、皆帰るわよー」
生徒達は出口へと向かう。
「あらー、こんな所にイケメンがいるわー」
「か、カリナ教員……何用でしょうか」
サラティスは実に面白い物を見てしまった。
「ふふ、ちょっとこの後一緒に私とお話しましょう?」
カリナはチュースの肩を組み、逃がさないと暗にアピールする。
「申し訳ありませんが、この後業務が立て込んでいるのでまたの機会でお願いします」
どうやらあのしかめっ面も空気を凍り付かせる声も一切通用しない。
力量関係はどうやらカリナにあるようだ。
「照れなくていいのよー」
「照れる照れないの問題ではないです」
カリナはこそこそとチュース以外には聞えない声で呟く。
「!」
チュースは無表情になる。
「あーら残念。では、今度とびっきりのエスコートしてあげるわー」
「……そのような機会が訪れぬことを願ってます」
二人はそこで分かれ、サラティス達は寮へと戻った。




