第459話「走って隠れて」
「頬の傷は治しました。痕もないです。他に怪我された所はありますか?」
「いや、大丈夫だ。急とはいえ、突き飛ばしてすまない」
「いえいえ。私も怪我をしなかったので助かりました。因みに何か見えました?」
「石?何か尖ったものだと思う」
ツニデニットは前方、サラティスは向かい合っていたのでサラティスからすれば背後から何かが飛んできた。
それに気付いたツニデニットがサラティスを突き飛ばし、飛翔物の軌道から退かした。
その際、何かが頬を掠り、皮が切れ軽く出血した。
「たぶんこれですかね」
ツニデニットの背後にある木の幹の一部が何かがぶつかって出来た傷があった。
そして、その木の下、生えている地面には石の欠片が無数に転がっていた。
「あ、ツニデニットさん?」
唐突にツニデニットが何かが飛んできた方向に向かって走り出した。
サラティスも慌てて追う。
ツニデニットは木々を避けつつ走る。
「お前らか」
追跡はすぐさま終わりを告げた。
ツニデニットの視線の先には一般魔術コースの生徒のグループがいた。
「お前ら魔術使ったのか?」
「は?知るか」
「お、おい」
「証拠はあるのか?」
「っつ」
生徒のグループはそのまま立ち去って行った。
「ツニデニットさん」
サラティスは手を振る。
ツニデニットは立ち去る生徒達の後ろ姿を睨みつけるを止め、サラティスの元へ戻る。
「何故隠れて?」
「いやーごめんなさい」
サラティスは頭を下げた。
サラティスも加勢しようとしたが、その前に見知った顔を発見したので急遽姿を隠すことにしたのだ。
「どうして君が?」
謝るのか。
「いやー実は彼、私と同じ白クラスなんですよね」
「知ってる。確かノゲイストだろ」
「ええ。ご存じでしたか」
「知ってる。少し魔術が得意だから威張ってる奴だ」
「あーそうなんですね」
口ぶりから、どうノゲイストが評価されているかが伝わってくる。
あくまで、フィーナ談なのだがノゲイストは女子生徒の間で好みであるという意見をまったく聞かない生徒だそうだ。
魔術の腕前はすごいが、顔も性格も褒める所がない。
女子と男子では視点も評価基準も違う。
だが、どうやら彼は男子生徒の間でも似た感じのようだ。
「同じクラスだからといって、君はまったく関係ないだろ」
「あーうー」
どうしたものか。
かなり言葉を選び、一学年の時の関係性を端的に説明した。
「……君はこの一件、抗議するのか?」
「いえ。正直な話、面倒で極力関わることはしたくないので」
「そうか」
「ツニデニットさんはどうされます?」




