第458話「医者事情」
「もう一つは医者を指導する医者だ」
学園を卒業したからと医者になれる訳ではない。
知識と実力で病院に入るしかない。
貴族であるのなら、地方であれば身分だけでも何とかなる場合もあるらしい。
というか殺人レべルの腕前、領主や領主に任命され街を統治する貴族家と仲が悪い。
などの事情がなければなれるらしい。
ツニデニットの説明では、王都には医者志望、新人の医者に向けた学校があるそうだ。
数年現場で実務を積み、採用試験に合格すればなれる。
医者の能力以上に、人に教え導く能力が必要とされる。
「医者の中で王宮勤めが一番誉れとされている」
サラティスはこれが問題だと思ってしまった。
王都では医者の数が多い、
これは当然のことだ。
地方に比べ、王都は人口が多いのだから。
人が多いのだから医者もその分多い。
だが、それに加えて王宮勤めが誉であるという価値観。
より王都に医者が集中する要因になる。
地方や田舎の医者不足。
全ての領で問題になっているかは分からない。
だが、リステッドは医者の数がとても少ない。
昔セクドに聞いたことがあった。
魔獣襲撃で医者が足りなく、困ったセクドを見て、医者を増やせないかと言ったことがある。
セクドは医者は優先度が三番目になってしまうので、難しいと。
一番必要なのは騎士。
騎士が平民を守り、怪我人が出なければそもそも医者が少なくても問題ない。
二番目は建築関係者。
魔獣の襲撃で建築物に損害が出るので、それの修復。
現状、建築物と人の被害で言うと圧倒的に建築物の方が多い、
これらの事情からどうしても後回しにせざるおえない。
もう一つ根本的な問題がある。最北で魔獣被害が多発する領にて活動拠点を構えるという奇特な医者はそうそういないということ。
今は分からないが、聞いた時点できちんと病院を開き人々を治療している医者は全て元からリステッド領民であった。
「あ」
「どうした?」
「いえ、ごめんなさい。何でもないです」
思いついた。
だがわざわざ言うことではないのでお茶を濁す。
しばし、野草について議論を交わした。
ぞく。
肌を刺すかのような錯覚。
「サラティスさん危ない」
「へ?」
突如サラティスの身体が動きかけた瞬間、呼応するかのようにツニデニットがサラティスを突き飛ばした。
サラティスは後ろに尻もちをつく。
「だ、大丈夫ですか?」
突然の凶行。
しかしサラティスの口から出たのはツニデニットを心配する声。
サラティスは立ち上がり、急いでツニデニットに駆け寄る。
サラティスの指先が淡く光る。




