第455話「わしゃわしゃ」
「他の人からしたら、男としてかっこ悪いって言うかもしれません。でも、僕もサラちゃんもかっこ悪いとは思いません。サラちゃんはすごいんですよ。僕には到底真似できません。だからやりたいと言ったことを、止めるなんてことはしたくありません」
「……」
「そんなサラちゃんにも苦手なことやできないことだってあります。だから、その部分を僕がやりたいんです」
「……」
「ふふ」
サラティスはわしゃわしゃとケイトの頭を撫でる。
「去年決勝戦を少し見たんですよ。お父様に比べたら大分……ましですよ」
「お父さん……セクド様ね」
「は、はい」
「そっか。そうよね。お父さんがセクド様なら。……確かにジェリド君もすごいしね。なら、怪我だけはしないようにね。それに、もし途中で棄権しても謝らなくていいからね。そこは私が頑張るから」
「はい」
マレランネが去って行った。
「サラちゃん」
「なんです?」
「僕の今年の目標は三回戦突破なんだ」
「頑張ってください。楽しみにしてますよ」
「サラちゃんも頑張ってね」
「はい。休みに家に戻ったら特訓します」
ケイトと談笑し、別れを告げ寮へと戻った。
貴族とは怖いものだ。
「サラどういうこと?」
「はい?」
「た、大変なことになってますよ」
フィーナは呆れ、エステリアは驚いている。
「上級生に喧嘩を売ったんですって?」
「私はサラっちゃんが学祭制覇すると聞きました」
貴族とは怖いものだ。
先程の些細な見解の相違が噂として広まっているのだから。
「ち、違いますよ」
諸事情を説明した。
「なるほどね。ケイトさんのことで勘違いか」
「た、大変そうですね」
「サラ、怒らないでちょうだい」
「はい?」
「確かに今回の話を聞いた限り、ゲルダマさんの勘違いだと思うわよ」
フィーナは真剣な表情で言う。
「いい?どんなに優しくても、度胸がなくても、イケメンじゃなくても、浮気する時は浮気する男性貴族はいるのよ?」
「……」
茶化していないのは十二分に伝わっているので静かに聞く。
「もちろん、セクドさんのように家族を大切にする男性もいるわ。だけど、そういう男性も多いってことを頭に入れて、怪しい時はきちんと調べなきゃだめよ」
「調べるってどうやってです?」
「自分の派閥の使用人や騎士に聞いたりね。後は旦那さんの使用人の中に自分の使用人を紛れさせておくとかね」
「うへー」
「もしくはギルドに依頼もあるかと思います」
「エスちゃん、つまり一般のご家庭はギルドに?」
エステリアの言う通り、庶民のご家庭には使用人や騎士はそうそういない。




