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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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453/455

第453話「空気を読む」

 少しだけマレランネは目を大きくして、ケイトを見る。

 ケイトを見るその眼差しは恋する乙女などではなく、弟分を心配する世話焼きな姉のようであった。


「はい。こういう時に隠しても意味ないじゃないですか。それに驚かすのが目的じゃないからいいんです」

「そう。仲良いのね」


 声色に数多の思いが混ざる。


「お二人は仲悪いんですか?」

「サラちゃん?」


 ケイトはあわあわと一人慌てる。

 ケイトはサラティスのお陰か周囲の空気、人々の言外の感情の揺らぎを察知する能力が年齢以上のものを持っている。

 マレランネの零れた言葉から事態を察知したが、どう返していいかまではまだまだなケイトは気の利いた返答が出来ずにいた。

 そんな中、サラティスがわざわざそれに触れたのだ。


「ええ。悪くはないのよ。でもここ最近ちょっと怒りっぽくなったのよね」

「……去年学祭で負けたからでしょうか?」


 ケイトなりに頭をフル稼働させ原因を考える。


「それなりに悔しがっていたけど、負けたのは上級生だったし優勝した人なのよ。だから、今年は負けないぞって感じで引きづってる感じじゃなさそうなのよね」

「因みにケイと出会った後ですか?」

「ううん、出会う前からよ。だからケイト君のせいじゃないってことだけは言えるわ」

「運動不足だから?」


 ケイトは首を捻る。


「僕の兄なのですが、不機嫌でイライラしてる時は、父が剣の打ち合いしたり、走ったりさせてました」

「なるほどねー。確かに勉強とかで学生だと体を動かせる時間が短いかもしれないわね」

「……マレランネさん」

「何かしら?」

「ゲルダマさんは学園を卒業された後は何を?」

「多分だけど家を継ぐはずよ」


 リステッド領にはリステッド家以外の貴族が存在しない。

 これが異例で他の領では領主家以外に貴族は数多に暮らしている。

 領主から命じられ、街や村を管理したり、人や騎士を管理したり色々とすることがある。


「彼の家は街の薬師の管理などやってるのよ」

「あーなるほど」


 サラティスはうんうんと頷く。


「因みにお二人は卒業されたらすぐご結婚を?」

「今の所はないわね。一、二年くらいしてからする予定と聞いているわ」

「もしかしたらゲルダマさんは不安なんじゃないでしょうか?」

「不安?」

「勝手な偏見ですが、ゲルダマさんは体を動かすのが好きなんじゃないですか?」

「……うーん、好きというより、どっちかというと強くなることが目的みたいね。でも体を動かすことも嫌いではないと思うわ」


 それが一体不安にどうやって繋がるのか。

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