第448話「野外で」
フィーナの疑問も尤だ。
十メル程も離れており、当然人形にある細かな傷を観察したりはできない。
「ツニデニットちゃん。これからツニデニットちゃんには回復魔術を行ってもらうわー。チャンスは一回だけよ。中断、失敗したらそれまで」
カリナは笑う。
「蕾ちゃん達、よく見ておきなさーい。『振りまけ』」
カリナが魔術を使う。
風が吹き荒れる。
ツニデニットの髪がなびく。
「手始めに強風が吹き荒れる環境で魔術が使えるかしら?」
理解した。
下手に近くで見物すると、確実に風に巻き込まれるので、この距離であると。
「っつ『治れ』」
強風が吹き荒れる中、ツニデニットが人形に回復魔術を発動した。
「いいわねー。『乱れろ』」
感情が変わる。
情熱的な風は蠱惑的な風へと変わる。
強風は一方方向から、不規則に変わりあちこちからツニデニットを襲う。
「なっ」
魔術が中断された。
「はい、お疲れ様。初めてにしては上出来よーん」
カリナはツニデニットを褒める。
褒められたツニデニットは納得はしていない。
それは慰めにしか受け取れないからだ。
「ではお次はレマイラっちゃん。いってらっしゃーい」
レマイラが指名され、机に向かう。
「準備はいいかしらー?」
「はい」
レイマラは返事をし、頷く。
「では始め。『乱れろ』」
「『水球』」
風が吹くと同時にレイマラの正面にレイマラの上半身が隠れる程度の水球が現れた。
「ふふ、いいじゃなーい」
水球で正面から吹き付ける風を受けとめて少しでも妨害を軽減しようとする作戦のようだ。
「で、できました」
「ええ、お見事よー」
レイマラは見事やり遂げた。
それを確認しカリナは改めて褒めたたえる。
「お次はサラティスちゃん」
サラティスは机に向かう。
「サラティスちゃんにはスペシャルコースお見舞いしてあ・げ・る。蕾ちゃん達、もう少し後ろに下がってちょうだい」
「へ?」
「サラティスちゃんは優秀のようだし、一つの攻略法を見た後でしょ?真似で達成しても面白くないでしょ?」
「な、なるほど?」
「じゃ、いくわよー。『堪能しろ』」
畝り、捻じり、悶える。
先程までの風が指先ほどの灯火であるのなら、今は暖炉で踊る炎のようである。
砂埃で視界が悪くなるどころか、小石が飛び跳ねぷちぷちと当たる。
「カリナ先生、やりすぎなのでは?」
「実に紳士的で素晴らしいわね、ツニデニットちゃん」
カリナはサラティスから視線を外さないで、ツニデニットに声だけを届ける。




