第447話「私は空気なのです」
「さてと。蕾ちゃん達いい子にしてついてらっしゃいねー」
サラティス達は学園で獣牽車に乗り、ネフィラスの逆塔にやってきた。
サラティスは実にタイムリーで既に見知った景色であったため実に自然体であった。
他の生徒はきょろきょろと周囲に、あちこちに視線が踊っていた。
門に並ぶ時、サラティスは私は空気ですと言わんばかりに存在を消す。
消えるように静かにしていた。
カリナが騎士に書類を渡すと、生徒達は特に検査などされることなく、素通りできた。
「お、お気をつけください!」
騎士がカリナに大きな声で見送る。
「ええ、ありがとう。アナタ達もお仕事頑張って頂戴」
パチクリ。
まるで風が吹きそうなほど、力強いカリナのウィンク。
「ではこっちよー。ついてらっしゃーい」
カリナはサラティスが丸々としまえてしまう程の大きな鞄を持っているのだが、それを感じさせない程軽快に歩いていく。
「では、ここいらでいいわね」
二階は片側に木々が生え、片側にあのピピピを見かけた小川が流れている。
ちょうど中間くらいの見晴らしのよい場所で、カリナは鞄を地面に置いた。
「な!」
サラティスの視線は夜空を滑る星の軌跡のように輝いた。
鞄の中からまず取りだしたのは少し、少しどころかそこそこ分厚い木の板。
見た感じサラティスの握り拳より厚そうである。
サラティスが気になったのは軽々しく扱っているカリナの力でも、木の板の分厚さでもない。
「こら、落ち着きなさい」
フィーナが小突き、小声でサラティスを静止させる。
カリナが取りだしたのはただの木の板ではなかった。
板の表面には魔石がはめ込んであり、カリナが魔力を込めると魔石が鈍く光った。
ただの板ではなく魔術具であったのだ。
木の板はガタガタと音を立てながら形を変え、脚が伸び、小型の机と早変わりした。
カリナは鞄の中にしまってある袋の中から既に傷ついている練習の人形を取りだした。
「さてと。蕾ちゃんたちいいかしら?前にお話しした通り、ここで回復魔術を使ってもらうわ」
満面の笑みを浮かべる。
「そうね。まずはツニデニットちゃん、お願いしようかしら」
ツニデニットは机の前に向かう。
「では、他の蕾ちゃんはこっちにいらっしゃーい」
ツニデニットを正面に向き合う形で皆移動する
。
「カリナ先生、少し遠いような気がするのだけれど、あってますか?」
カリナは地面を強靭な足で払い、線を引く。
つまりはこの線からツニデニット側には近づくなという意味である。
「ふふ。フィーナちゃん、あっているわよ~ん」




