第446話「得意不得意」
「作法等について色々と本を読んで知っているつもりでしたが、上手くいかないものですね。知ってるのに、身体が思う通りに動かなかったり」
「エスちゃん、最初はそんなものよ。自然になるまで身に着けるなら年単位が必要よ」
「はい。もうそこは頑張ろうと思ってます」
エステリアは力強く頷く。
表情から思いつめた感じはしないのが少し安心材料になった。
「エスちゃん、どういうことですか?」
ここからどうしてサラティスがすごいに繋がるのか。
「はい。サラちゃんも本をお読みになられて知識を蓄えているじゃないですか。でも私と違って魔術の授業で実技も完璧じゃないですか。なのですごいなと」
「そんなことはないですよ」
「そうよエスちゃん。サラはとんでもなく凄いけど、それは興味があることだけよ。作法に関しては及第点っとこだし、今はもうエスちゃんの方がきちんとしてると思うわよ」
「ですです。得意不得意があるので、そんな気にしなくていいと思いますよ」
「お二人ともありがとうございます。その書類は?」
「あ、これは同意書よ」
フィーナがエステリアに書類を見せる。
「そうだ、エスちゃん。さっきフィーナと話してたんですがこれ希望制じゃないですか。せっかくの貴重な体験で参加しない生徒っているんですかね?」
「はい、いらっしゃいますね」
「どうしてかご存じですか?」
「お家の事情なので色々あると思われます。あくまで一例ですが、ご両親が心配性で娘さんに万が一怪我でもしたら大変だからと遠慮されはありますね」
「あー。きっと婚約が決まってない子ね」
「なんで決まってないと遠慮するんですか?」
女の子だがら心配は理解できる。
だが婚約が決まってるか否かで変わるのはどうしてなのか。
「あのね、サラ一応貴族でしょ?」
「ですけど……」
「あのね、婚約者を選ぶ時に顔に傷とかあったら選ばれる確率は激減するわよ。下手したらほぼなくなるわよ?」
「あーなるほど。そういうことですか」
さすがにここまで言われると理解できた。
「ま、まぁサラちゃんは婚約者のケイトさんがおられますので仕方ないかと思いますよ」
「ダメよ、エスちゃん。甘やかしたら。いつか恥ずかしい思いするのはサラなんだから」
「な、なんですか」
フィーナがじとーっとサラティスを見つめる。
「でもサラのことだから、きっと恥ずかしいなんて思わないから意味ないかもって」
「あってますけど……」
三人は顔を見合わせ笑う。
そして実技の試験は問題なく合格できた。
サラティスはもちろんだが、初歩の初歩であるためクラス全員特段問題なかった。
因みに試験も座学同様学習室で行われた。




