第441話「大切なこと」
回復魔術はやはり人体に直接作用させるものだけあって座学の密度が濃かった。
「さて、蕾ちゃん達。今日から実技に入ろうと思うけど、いくつか注意点を説明するからよく聞いて頂戴ね」
皆頷く。
「まずこのコースを選択する蕾ちゃんたちは例年何かしらの回復魔術を既に使える子が入ってくるの。学園で初めて回復魔術を知った、授業で初めて習った子は今までいないし、今ここにいる蕾ちゃんたちも使えるのは把握しているわ。だらかこそ言わせてもらうわね」
いつになく真剣な表情で生徒を貫く。
「一学年の授業同様お約束を守れない蕾ちゃんは帰ってもらうわ。それと魔術の使い過ぎて魔力不足になって具合が悪くなったら休憩していいわ」
それは当然ともいえる規則の説明だ。
「だけど違う点は別に休憩しなくてもいいわ。具合が悪くなって倒れたとしても安心してちょうだい。私がたーっぷり可愛がってあげるから」
別の意味での沈黙。
「攻撃魔術はそれこそ、戦闘する場面でもない限り無理を求められる状況ってのはそうそうないわ。でもね、回復魔術は常に命懸けよ。無理する場面だってきっと訪れる。あ、医者を目指さない蕾ちゃんはまた違うからそこは頭に入れといてちょうだい。戻すけど、自分の限界を知ることも大切なことよ。私から蕾ちゃんに無理しろと強制することは誓ってないから安心してちょうだい」
「先生質問宜しいでしょうか?」
「フィーナちゃんどうぞ」
「へろへろになるくらいなら分かるのですが、倒れるのまで使うのは危険ではないのかしら?」
蓄積した疲労からの気絶ならば余程でない限り緊急の恐れはない。
だが、魔力の限界を超え無理に魔術を発動している最中ばったりいったらそれこそどうなるか分からない。
フィーナはシェリーに教わる時不調を偽り、隠したりして元気だと報告した時点で二度と回復魔術は教えないと言われた。
「……」
カリナは暫く目を瞑り、生徒達を見渡す。
「後悔よ」
「え?」
声色は穏やかなであるのだが、声は床へ、下へと重りを背尾っているかのように落ちる。
「テメェが一番救いてぇ時に、一番救いてぇ奴を救えなかった時。一生後悔するわ。一生己を責め続けるわ。それこそテメェが死んで相手が助かるなら選択するくらいにはね。魔力不足でぶっ倒れて目が覚めて、残念でした。何故のうのうと気絶してやがったと」
「……」
「医者の思い上がりかもしれないわ。理性では状況的に仕方のないことだと理解できてもね、できなかったって思いは心に突き刺ささると二度と外れることはないのよ。棘のついた足枷のようにね。練習の時に万が一に倒れることがあったら次が働くでしょ?それに、将来そのような場面に直面した時に倒れるまで練習したけど、助けれなかった。この経験が言い訳の一助になればいいと思うわ。それに自ら後を追うような事態になって欲しくないもの」




