第439話「た、耐えるのです」
「では戦場で魔術師が注意すべきこととは何だと思う?フィーナちゃん」
「……自分が怪我を負わないことでしょうか」
「それも正解よ。でももっと大切なことがあるの。サラティスちゃんは分かるかしら?」
「魔力切れにならないことですかね?」
怪我をしたら治せばいい。だが、魔力切れだと治せるものも治せない。
「大正解。戦場で魔術が使えない魔術師はお荷物になり、味方の余計な負担になってしまうわ。なので魔力の節約が求められたの。そんな中ネイシャ様は自ら厳しい修行をなさっていたのよ」
「へ?」
そんな記憶は微塵もない。
確かに寝ずに治療などはあったし、治療行為が自身の魔術の訓練になるがそれ以外に修行などとたいそれたことはした記憶はない。
「昔は上水なんて設備はないし、場所は戦場。水は汲みに行っていたのが普通なのよ。そんな中ネイシャ様は顔を洗うのすら水魔術をお使いになられていたそうよ」
飛び上がりたい。
サラティスは深呼吸し、落ち着く。
「魔力も運動と同じで日頃から消費していると、総量が増えるとされているわ。平和の今であれば日頃の訓練になるけど、そこは戦場。戦場で生き抜くために常に己を磨いていたのよ」
「ぬっ」
違う。
果てしなく違う。
単純に汲みに行くのが面倒だから魔術を使っていただけだ。
「さっきも言ったけど、魔術が気軽に使えない時代。戦場で兵士ならば回復魔術による治療は無償で受けれるけど、平時や街中では貴族や大金持ち、魔術師にコネでもないと受けれなかったわ。ネイシャ様は相手の身分など気にせず回復魔術で治療なさったわ。しかもお金もほとんど受け取らなかったの」
「ぐっ」
平常心。無表情。貴族としての平静を。
お金を受け取らなかった訳ではない。代わりに食料、服などの生活必需品などの物資を貰っていた。
あの頃は金よりも物資の方が価値があった。
今は主要な道はある程度整備されてあったりと通りやすいが、あの頃は違う。それに野盗や敵など襲撃や備えなども必要で今よりも移動に時間がかかった。
なので金を持っていたところで、街や村などの間で野営するときに使えない。
だから金ではなく物資を貰っていたのが、金を貰っていないだけが変に残り大袈裟に伝わったのだろうか。
「自身を厳しく律し、ひたすら無辜の民に尽くす。英雄としての偉大さはもちろんあるけれど、こういった人柄もあって聖女と人々は呼ぶようになったのよ」
それからもカリナのネイシャの解説が行われ、拷問というなの授業が終わり、ボロボロになったサラティスは何とか自室に戻ることができた。




