第428話「密室、乙女と花園……」
「自らの子を傷つけ、痛めつけ、尊厳を踏み躙ることを歓ぶ屑。子供を一人の個人と認めず、自らの願望の体現だと強制する昧者。子供の存在が枷だと唾棄する愚者。あたりまえをあたりまえにやるってのは意外と難しいようだぜ」
「……少なくとも私の周りはないですね」
「ああ」
「でも嬉しいです。そこまで、サラティスのことを気にかけ思ってくださるなんて」
「べ、別にそういう訳じゃねぇんだけどな……」
「ふふ、でしたらセクドが戻るまで……」
乙女の花園は艶やかに。
セクドが戻ってくると、ずいぶんと二人は仲良くなっていた様子。
「食事の用意ができたので二人とも、食堂へどうぞ」
「お、そうか」
「ルリ様はお肉がお好きなんですって」
「それなら、ご期待ください」
リステッドはサラティスのお陰で肉料理が流行っている。
使用人がルリレッタの席に皿を置く。
「これがワイルボロルか」
懸念は杞憂で終わり、定着したと言っていいワイルボロルのステイル。
既存の肉も廃れたり、価格が乱高下したりすることもなかった。
むしろ、ワイルボロルが市場に登場したことで、ワイルボロルの肉に負けないぞと肉自体の改良や新料理の開発など盛んになった。
「……確かに美味ぇな」
セクドはほっとした。
食事は無事終わり、ルリレッタの様子を見る限り満足してもらったようであった。
「調理場に案内してもらえるか?」
ルリレッタは貴族ではない。
貴族であるセクドがお願いを断った所でなんら影響はない。
「承知しました」
セクドはルリレッタを調理場に案内することにした。
恐らく叱咤、文句を言うためではなさそうなので。
それに使用人、騎士達はルリレッタを見ることができるが、調理人は業務が調理場のため見ることがどうしても叶わない。
憧れのルリレッタを一目見たいという気持ちは同じであろう。
「職務中すまない。賓客であるルリレッタ様が君たちに会いたいと仰られたので、お連れした。一度手を止めて集合してくれ」
「おい、お前ら先行ってろ」
「仕事中に悪いな」
ルリレッタが言葉を発した途端、静寂に包まれる。
「ワイルボロルの肉は王都でも耳にしてたし、店もできたのも知っている。興味があったが初めてを食うなら、発祥の地でと思って我慢してた……」
料理人たちは目を輝かせながら、少し不安な様子。続きの言葉を待つ。




