第427話「密室、母と来訪者……」
何事もなく屋敷へ辿りついた。
使用人達も緊張しているが、既に王女を招いた経験があるのであの時よりは遥かに成長を感じさせる雰囲気である。
「初めまして、ルリレッタ様。リステッド辺境伯の妻のアレシアです」
ドアの向こう側で待っていたアレシアが挨拶をする。
「……ああ、オレはルリレッタだ。急に押しかけて悪いな……」
「いえいえ、セクドから剣を頂戴したと伺っております」
アレシアは再度頭を下げる。
「どうされました?」
セクドは恐る恐るルリレッタに問いかける。
ルリレッタはどこか上の空のような様子。
そしてアレシアを凝視している。
「セクド、汗や血を流してらっしゃいな」
「いや、流石に血を浴びたりは……」
「でも汗はかいたでしょ?その間、私がルリレッタ様のお相手をしているから大丈夫よ」
「……ルリレッタ様、少しお待たせしても問題ないでしょうか?」
「……押しかけたのはオレだ、ゆっくりと湯に浸かって体を休めとけ」
セクドは頷き、風呂へと向かった。
アレシアはルリレッタを部屋へと案内した。
使用人がお茶を出し、静かに退出した。
「私の顔、珍しいでしょうか?」
「あ?……悪いな。ただ、似てるなと」
「……サラティスにでしょうか?」
「ああ」
「ふふ、よく言われます。そのご様子からして、サラティスと個人的に交流がおありでしょうか?」
セクドから学祭での一件を聞いている。
サラティスが最優秀に選ばれ、学園長であるルリレッタも名前くらいは聞いているはずであろう。
「……そうだな、かげがえのねぇ友だな」
「まぁ」
アレシアは少しだけ戸惑うが直ぐに穏やかに笑みを浮かべる。
「似合わねぇか?」
「いえ、そんなことありません。あの子らしいなって」
「?」
「あの子は人と打ち解けるのが得意なんですよ。相手の立場に関わらず。それが良い所なのですが、貴族としての振る舞いが疎かな面もあります。ルリレッタ様にご迷惑をおかけしたら申し訳ありません」
「確かにな……」
出会いは最悪であった。
「まぁ、本当にご……」
「アンタが謝る必要はねぇ。遠い昔の話だ、今は友だからな」
「そう言って頂けると助かります」
ルリレッタは急に立ち上がる。
「オレが言うと可笑しいかもしれねぇが、あいつを生んで、きちんと育ててくれて感謝する」
ルリレッタはお手本のように頭をすっと下げる。
「頭をお上げください」
アレシアも立ち上がる。
「サラティスは私の子供です。あたりまえのことで、ルリレッタ様に感謝されるようなことでありません」
「……」
ルリレッタは頭を上げ、椅子に座る。
「いや、あたりまえじゃねぇだろ」
「?」
「オレはこれでも一応学園で学園長をやってんだ。色々な貴族の話が耳に入ってくるし、目にしたこともある」
「……」




