第423話「砕輝の牙」
「最初、魔獣駆除、人探し、簡単な依頼。ヨネは飽きた」
「あたしらは依頼を順調にこなしてきた。それでようやく、護衛依頼が受けれるようになったんだ」
「護衛というと、領を移動する商人さんなどの?」
「ええ、そうね。護衛依頼は実力以上に前後の信頼も必要になるのよ」
「簡単に言うと、依頼人を裏切らない。依頼が終わった後も依頼中に知りえた情報を漏らさない。当たり前のことすら守れない馬鹿が多いのよ」
ワーテーはご立腹のようだ。きっと日頃積もるものがあるのだろう。
「それで、今回は魔獣駆除じゃなくて、野外で護衛を前提としたお互いの立ち回りを練習しにきたってわけだ」
「なるほど。確かに攻め入る動きと受けとめ守る動きは別物ですものね。護衛依頼の方が良い事情ってあるのでしょうか?」
「ああ。金がいいし、確実だ」
「金大事」
「もう、二人とも子供の前で。魔獣駆除の場合、魔獣を探して出会って駆除しないといけないでしょ。それに比べて護衛依頼は何も無い方がいいのよ」
「あー確かに。何も何も無ければ装備費用もかからないですしね」
「本当よ。ゴネシスは武器を雑に扱いすぎて整備費用がかかるのよ」
「雑ってこれでも気を付けてるんだぞ」
「ゴネ反省すべし」
「後ヨネは食料を無駄に買いすぎ。隣の店に安いものがあっても、見つけた時点で買うの何とかして欲しいわね」
「はっ」
「む」
「ごほん、二人とも?」
「わ、悪かったよ」
「謝罪」
サラティスは自然と笑みが零れていた。
「そうだ。お前もいいとこの娘なら、『砕輝の牙』には気をつけろよ」
「?」
また知らない名だ。
「どういったチームなんですか?」
気をつけろとは穏やかではない。
「チームじゃないぞ。犯罪集団だ」
「あーなるほど」
いつの時代になってもいるものだ。
本来お尋ね者は名前が広がると、当然捕縛されるリスクが上がる。
凶悪犯として手配されれば生死は問われない。
街中でいきなり命を狙われることだってあるのだ。
三流であればこそこそと逃げ回る。
だがそれなりに腕のある人物や、集団で動いているものはあえて名を広める。
「因みに専門なのですか?」
「金になるならなんでもするくそみたいな集団だ。特に貴族や裕福な家を襲ったり、誘拐して金要求したりが多い」
時に犯罪集団は金を効率的に稼ぐために専門性が出てきたりする。
殺し専門や、盗み専門といった具合にだ。
「あいつらは体のどこかにヴォルゲドをモチーフにした印を刻んでるわ」
ワーテーが忌々しい顔でぼそっとつぶやく。
「ありがとうございます、気を付けます。どれくらいの規模なんでしょうか?」
他人事ではない。
既に誘拐を経験しているのだから。




