第420話「分かってますよ」
「お?お、おお!」
ゴネシスは腕を触ったり、振り回したりする。
「今の回復魔術!」
「わ」
驚きの速度でワーテーが眼前に迫った。
「ゴネシス、治ったの?」
「ああ。痛みもまったくない」
「どうして?」
「えっと……ワーテーさんが大方治してくださったからですよ」
「そんな訳ない。無詠唱。あの状態でも私だったら十分以上かかかる。一瞬。……あなた凄腕の魔術師だったりするわけ?」
「そ、そんなことないです」
「ゴネ手も足も出なかった。魔術すごい」
「うるせー。疲れてなかったら失敗してなかったからな」
「はいはい。とりあえず、中に入りましょうね。ごめんなさいね、もう少しだけ付き合ってくれるかしら?」
「はい」
ツヴァウスがサラティスにくっついているワーテーを引きはがす。
サラティスははこくんと頷き後に続く。
改めて室内に戻る。
食事フロアで話をすることになった。
部屋には食事するために置かれているであろう、長い机。
向かい合わせで三脚ずつ、合計六脚の椅子がある。
サラティスは三脚ある椅子の真ん中に腰かける。
サラティスから見て、向かいの真ん中にゴネシス、右にワーテー、左にヨネが座った。
サラティスの左隣にツヴァウスが座る。
「まずは諸々ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
ツヴァウスが頭を下げる。
それに合わせてワーテーも頭を下げる。
「特定の誰かじゃないのだけれど、ゴネシスは貴族様に良い印象を持ってないのよ。そんな中、ゴネシスの勘違いだけど、声を掛けられたからあんなこと言い出ししてしまったの」
やに丁寧だが、サラティスもいい加減理解できるようになっていた。
相手はサラティスのこと知らないのだ。
サラティス自身は怒っておらず、そのことは理解してもらえてるだろう。
もし第三者が一時の思い出を知ったなら。
ここで形なりと謝っておいた事実さえあるのなら、後ろ指を刺される事態を回避できるだろう。
そしてその形式ばった大袈裟な行為を受け入れることが、貴族として大切であることが理解できている。
なのでサラティスは黙って聞いている。
「ご丁寧にありがとうございました」
謝罪が終わり、サラティスの承知を持って打ち切りとなる。
「私はワーテー。改めて、あなたのアレは何にかしら?」
「ただの回復魔術ですよ?」
「ワーテー、一応確認だけど、どうして詰め寄るくらいのものであったのかしら?」
「当たり前でしょ。確かに私は回復魔術が得意な訳じゃない。けど、火傷はそこまで難しい種類でもない。だから、私が殊更遅い訳じゃないのよ。それを、まばたきしたら治ってる程の速度よ?そこいらの医者より早いわよ」




