第416話「クセが少ないですね」
サラティスはじっくり見たかったが、一旦五階層まで戻ってきた。
そろそろ夜ご飯の準備を始めようと思ってだ。
お目当てはイルンシロンだ。
「光はまずいですね……」
気付かれないようにゆっくりと近づく。
近くに人がいないので光孔を使うのはどうかと考えたが、食べることを考えたら血や肉の破損で不味くしていまいそうなので却下。
いろいろと思考し、手慣れたのでいくことにした。
サラティスは強化魔術で後ろからイルンシロンに近づき、雷魔術で気絶させた。
「感謝します」
サラティスは急いで血抜きし、解体処理を進めた。
解体を終えると、不可食部位、毛皮や首輪をまとめて燃やす。
確実に火を消し、土魔術穴を作ってそこに埋め、土を戻す。
肉を持って休憩エリアに向かった。
貴族専用棟に入るが人の気配が一切感じない。
実際中を軽く見て回ったが、誰もいなかった。
サラティスの活動音のみが伝わるのは当然であった。
貴族専用棟が寝泊りのために使われることがまず少ないのである。
そもそもここで泊まるくらいなら帰った方が早い。
調理場を借り、肉を焼く。
「……クセが少ないですね」
肉を頬張る。
これはかなり久しぶりの、あの森での生活以外で経験のなかったこと。
サラティスは貴族として生まれ、食事は美味で、体の発育に申し分ない量を食べてきた。
口にする料理は調理された物であった。
しかし、あの森で体験したのは生きるための食事であった。
味付けも凝った調理法もせず、ただただ肉を焼き腹に仕舞う。
あの時食した肉と比較出来る程に今食べている肉は違う。
肉付きが違うので、解体し取れた肉の量がこちらの方が多い。
それ以外にも大森林で食べていたイルンシロは脂が少なく、パサパサしていた。食感も肉質が固めで野生特有の自然な味が強い。
だが逆塔のイルンシロンは、脂もパサパサと感じない程にはある。
肉質も気になる程の固さはない。
環境が違うので当然違いが出るのは理解できるが、こうも違うと実に面白い。
「魔獣の種によって飼育環境を変えればお肉の質を変えれるかもですね」
夢が広がる。
「しかし、余ってしまいましたね……」
まだ火を通してない肉が残っている。
サラティスはふと思いつき、貴族専用棟を後にした。
サラティスが向かったのはお隣の棟。
人の気配がしたので、棟の中に入る。
「こんにちは」
「おう」
「あら、こんにちわ」
「……」
「こんにちは」
女性専用棟には四人のギルドメンバーらしき女性が英気を養っていた。




