第414話「サラティスは不用心」
どうやらサラティスは不用心だとのこと。
基礎的な魔術であれば、比較的誰でも知識を得ることができる。
魔術協会に所属できれば、大抵の魔術の知識に触れることも可能だ。
昔とは大違いである。
どうやら、魔術式そのものが共有されているので、それらの魔術の応用や巧い使い方などは秘匿される傾向にあるそうだ。
「別に隠す程のことじゃないですよ」
「……確かにね。私には無理だねこりゃ。魚がいるかどうかなんて分かりやしない」
「そこは慣れですかね」
サラティス流魚捕獲術は何も、魚を獲るために編み出された物ではない。
初めは、水中の敵を探知できるようにひたすら訓練した。
魔族の中には、水中で暮らす種もいれば、水中でも呼吸が問題なくできる種などもいる。
そういった魔族が船を水中から襲ってきたのだ。
それらに対抗、事前に探知できないと試行錯誤した結果、それほど流れが早い、激しくない環境なら小さな魚でも知覚できるようになった。
サラティスの自論だが、命懸けでやれば大抵できるようになる。
その泡を操作する技術を獲得した後に、水中の魚が分かる。
ならいっそ魔術で獲るまで簡単にてきないか。
そうした末に編み出されたサラティス流魚捕獲術。
重要なのは魚を知覚出来る繊細さ、触れた瞬間に氷魔術を発動させる速度。
気軽に真似できるものではないし、そもそも真似できるなら真似してもらいたい。
使う人が増えればそれだけ、より簡単に効率よく魚を獲れるようになるだろう。
それを二回繰り返し、合計二十四個の氷の塊を手に入れた。
約束の一時間になるのでサラティスはガイナスの所へ戻った。
いい物を見せてくれたお礼として、女性が氷を運んでくれるのを手伝ってくれた。
「さて、お嬢さん。どうですかな?」
ガイナスは笑顔であった。
つまりはそれなりに釣れたのだろう。
「どれくらい釣れたのですか?」
「ご覧ください、七体も釣れましたよ」
「おお、それなりの釣り竿のようですね」
サラティス的には釣り竿を使い、一時間でマウを釣るとしたらガイナスの結果は至って平均的な感覚である。
だが平均的なのでわざわざ金を払って釣ってもらうかと言われれば、遠慮するだろう。
「お嬢さんはどうですかな?」
にやにや。
「これだよ」
「ん、氷?」
地面に氷が並べられる。
「手伝っていただき、ありがとうございます」
「な、は、反則では?」
ガイナスも氷の中のマウに気付き、その量を認識できたようだ。
「反則?」
「はい。後ろの方に獲って貰ったのはどうなんでしょうか?」




