第389話「見せてもらいますよ」
「行きますよ」
「待ちたまえ、視界に何かしら問題が発生する可能性はないのかね?」
「はい。眩しいとかはないです」
「そうか。サラティス君、念のためいつでも目を隠せるように」
言われた通りスタンバイする。
実験は何が起きるか分からないからだ。
「『纏え』」
光球が現れ人形に目掛けて飛ぶ。
『ジュ』
光球が人形に触れると、光球はにゅるっと潰れるように広がる。
人形に纏わりついた光が周囲へと広がる、と人形の皮がもぞもぞと揺れ動いた。
まるで生きているかのように。
実際は光が皮を焦がしていき、皮に含まれている水分が蒸発していく。
その蒸発によって皮がぶくぶくと振動し、それが生きてるように見えたのであった。
「焦げてますね……」
「熱の拡散か……」
人形の皮は焦げ中身がお披露目されていた。
毛や皮が焦げる匂いが微かに鼻をくすぐる。
「次はこれです」
ローネは鞄から持ち運びが可能な小さい保冷庫を取りだした。
このサイズだと三、四時間冷やすのが限度だろう。
パカリと上部を開けると、中には生肉が入っていた。
「これはピーギーのお肉です。見てくださいね」
先程の半分程のサイズの光球が肉に当たる。
『ジュー』
先程と異なり良い匂いが漂う。
肉の中心が一番色が変り、周囲の表面がぶくぶくと水ぶくれのように波打ってぼこぼこしている。
「火傷してますね。これは深熱二のようですね」
サラティスは肉を冷静に観察する。
サラティスは貫通力を重視した魔術を作ったが、ローネは熱の範囲を重視したようであった。
「そのようだが……」
「はい?」
「さすがはサラティスさん」
「二学年に魔術専攻を選択した生徒は二つのコースから一つを選ぶのだが……」
チュースはサラティスを睨みつけるかのように見つめる。
二学年になると、一般専攻か魔術専攻を選ぶ。
一般専攻を選ぶと、武芸コースか社交コースのどちらかの授業を受けることになる。
武芸コースは勿論、名前の通り武芸を学ぶ。
学べる武芸は剣、弓、槍、素手による格闘の四種。
四種からどれかを選び、それを専門的に学んでいく。
一般専攻を選んだ女子生徒はほぼほぼ、社交コースを選択する。
社交コースはマナーなど社交における必要な知識を細かい所まで学べる。
魔術コースは二つに分かれ、一般魔術と回復魔術コースのどちらかを選択する。
「回復魔術を専攻すると火傷の回復魔術を学ぶ。その時に火傷の知識を学ぶことになる。家の都合や、周囲に医者がいれば授業で学ぶ前から知識を持ってる生徒はいるがな」
「私も授業で初めて知ったのよ。火傷が細かく分かれてるなんて」
火傷は深熱一から、三までに分けられる。
火傷の程度が皮膚の表面、冷やしたりすぐに治る程度を深熱一。
火傷が肉まで到達し、何らかの治療を施さないと治癒できないレベルが深熱二。
皮膚が炭化したり、骨にまで熱が到達し、もはや痛みを感じなくなるのが深熱三。




