第388話「派手なことはないですよ」
水弾の試験も特段問題なく、無事に合格した。
威力の調整を意識していたいので、派手なことは起きなかった。
サラティスの作った魔術が指定されたかどうかは、まだ協会から連絡が来ていない。
魔術の授業で次に出された課題は笑みが零れた。
「さて、まずは見た方が早いだろう」
チュースが冷たい視線で生徒を突き刺す。
チュースが魔術を使う。
地面が揺らぐ。
視界が染まる。
否、正確には地面が揺れたりなどしていない。
地面から白い煙が突如生まれ、ゆらりゆらりと世界に身を委ね、上と上と手を伸ばした。
「この煙報だが、まずは火を出さないことだ」
煙報。サラティスも屋敷で何度も見た煙。
合図に使われ、魔術が得意でない騎士であっても習得が義務付けらる程初歩の魔術。
「そして五分以上維持していることだ。騎士達は煙報を用いて、遠方の仲間に合図を送る。当然だが、使用環境は野外であり、風などによって直ぐに消えるようであれば使う意味など到底ない」
淡々と続ける。
「煙が出ているからといって、広がりすぎるのもだめだ。煙によって目や鼻などを痛める可能性がある。息苦しいと感じた生徒は直ぐに離れること」
サラティスは懐かしさに身をくるまれていた。
父であるセクドはとても優しい。
だが、一度脅威と相対し、その剣を抜き戦う姿は頼もしい。
父は剣を得意とし、魔術の知識技術は平均的である。
そんなセクドから直接教えてもらった魔術は身体強化とこの煙報。
既に覚えていたので、やはりつまづくことなく試験も無事に終えた。
試験が終わり、訓練室を出ると通路の先から、サラティスに手を振ってる人影が見えた。
「あ、ローネさん」
ローネがやってきた。
「サラティスさん、これから大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「実はね、サラティスさんにアドバイス貰って形になったから見て貰える?」
「はい、もちろんです」
出たばかりの訓練室に入る。
「チュース教員、ありがとうございます」
「構わない。ローネ君はこの間の研究の成果の確認で間違いないかね?」
「はい」
「……そしてサラティス君か」
「サラティスさんからアドバイスを貰い、形になったのでまた見て貰おうかと」
「……なるほどな。構わないが、ローネ君。サラティス君は一学年なのでお手本となるように一つ一つの所作を注意するように」
「分かりました。『覆え』」
ローネは土壁で台を作る。
鞄から出したのは木の板ではなく、サラティスもよくよく見知った物であった。
「練習人形か」
「はい。これが一番分かりやすいので」
ローネは土台に人形を置く。




