第390話「きらきら」
「火傷の知識があっても、症状を見て深熱の程度を推察するには座学の知識だけでなく、経験が必要だ」
「あー、魔獣の被害で出た人の看護のお手伝いなどしていたので」
「なるほど。それがあの回復魔術に繋がると」
「そんなことより、ローネさんすごいですね。説明してもらっても?」
「うん。私が作った『光溶』。この魔術は光魔術の熱を利用して魔獣の皮膚や肉に火傷を与えて、追い払う効果。火傷なんだけど、体内の水分を熱で刺激するから、石とかには効果ないし、木も短時間、数回なら影響なし」
「おお、木々の中でも安全に使えるまさに理想的な魔術ですね」
実に面白い。
保温の魔術式を作ったので、熱が水分に与える影響というものは少なからず知っている。
実に上手く利用したと感心した。
「ローネ君。きちんと申請したまえ」
「はい。サラティスさんのアドバイスのお陰だよ」
「それはあるかもしれないが、君が今まで積み重ねてきた努力があってこそだ。これからもそれを忘れずに精進するように」
表情は変らないが、どこか嬉しそうだと感じたのはサラティスの気のせいではないだろう。
「それとチュース教員もご指導ありがとうございました。三年前間、本当にお世話になりました」
ローネは深々と頭を下げる。
関係性を詳しく知らないサラティスでも、見ただけで数多の想いが乗せられていると感じる。
「……教員の仕事なので当然のことだ」
頭を上げる。
「あ、そういえばローネさん」
「何?」
「私も光魔術を作ったんですが……」
「うそ……」
ローネの時間が停止する。
加速。
「どんなの?それよりも、開発できるなんて天才だね。見せてくれる?」
「えっと……ごめんなさい」
腕がちぎれんばかりに振られローネを鎮める。
「?」
「ローネさんにはお見せできるのですが、今魔術協会で指定魔術にするかどうかを判断待ちで、日常的には使えないかもです」
再停止。
停止続行。
急加速。
「チュース教員、指定ですよ指定」
「まだ結果が出てないようだが、審議入りしたのは事実だな」
「ね?サラティスさん、見せて」
「わ、分かりました」
サラティスの腕はちぎれず済んだ。
「ありがとうございます」
チュースが土壁で準備を整えてくれた。
「行きますよ」
「おおおお」
光孔を見て目を輝かせる。
今日一番のはしゃぎようだ。
「サラティスさんのは貫通力を高めたってことか。それだけじゃなくて、炭化がすごい。あの表面積で熱量が高い……」
「ローネ君も実験が終わったのなら片づけを始めることだ。君の部屋ではないのだから」
「あ、ご、ごめんなさい」
この後学習室にて意見を交わした。
そしてローネが今年度で卒業すると告白した。
サラティスの手紙の送り先がまた一つ増えたのであった。




