第385話「密室、怪物と傑物……」
「一応ですが、私は指定にすべきかと」
「嬢ちゃんには悪いがあれは指定だな」
スフィルトゥクスススとウォールダは事務室に戻り書類に目を通していた。
事務室といえど、正確にはこの二人以外はいないし、入ってくることもない。
副部長専用の事務室であり、書類に目を通しているのはウォールダのみであった。
「部長、彼女をスカウトしたと聞きましたが?」
「ああ。何今すぐじゃねぇさ。将来的にな、何が不満だ?」
「いえ。史上最年少で協会所属。史上最年少で魔術式、魔術具の作製。史上最年少で開発した魔術が指定入り。現段階でこれだけの実績なのですから、このまま順調に経験を積めば協会を背負うに相応しい傑物になるでしょう。ですが、彼女は貴族ですよ?しかもあのリステッドなのですから、王都に移住はありえないでしょう」
「まぁな」
「……誘っておいて、何かあるのですか?」
「嬢ちゃんの実績、腕からすれば他の魔術師が部長になるなんぞお笑いだな。だが、嬢ちゃんの腕を考えたら、たかが協会の部長なんて狭い椅子に閉じ込めるのは人類の損失なんじゃねぇかとな。悩ましいぜ」
「……それほどですか」
そしてウォールダははっとし、書類から視線を外し、スフィルトゥクスススを見る。
「腕をご存じなのですか?」
先程の光孔の実演から、既に一般的な魔術師より上であることは理解できる。
だが、協会のトップが認める程かと問われば早計であり、つまりは納得させるだけの何かを既に見ているということだ。
「ああ。ちと危ない専門書借りにきてな。ついでに打ち合いで見てやった」
「はぁ……」
頭を抱える。
「子供ですよ?しかも貴族。……何かあればどうするつもりですか?父親はかの有名な傑物ですよ?」
「大丈夫だったろ。最初は単に力試しよ。で、余りにも見応えがあってな」
長は、目の前にいる怪物はくつくつと笑いながら、詳細を語る。
「それほどですか……」
魔術の一つ、二つて程度の開発であれば、知識、運、才能で何とかなるかもしれない。
だが、打ち合いは確実に経験がものをいう。
そもそも、目の前で笑っているそれは魔術の化物は才能だけでどうにかできるモノではない。
確実に実践経験が無ければどうにもならない。
「一体彼女はどこで積んだのでしょうかね。あの領で魔獣相手に鍛えられるのは理解できますが、魔獣のみでは対人は積めないでしょうに」
「面白いだろ?」
「そこまでなのですか?」
「ああ。お互いの立場が無けりゃ最期までやっても良いくらいにはな」
「……」
ウォールダの眉間がぴくぴくと非難を表明する。
「それと知ってるか?嬢ちゃんは五歳で協会員になった。当然一般だから、試験やってんだよな」
「……まさか、それを聞きに王都を離れていたのですか?」
「おうよ。気になるだろ?」
「回復魔術と聞いています。……それより騎士団からの調査依頼の方が重要ですがね」
「依頼ってどうせあの学園のだろ?探知ならお前のが適任だろうが」
「はぁ……適任、不適任ではなく勝手に居なくなることを責めているのですよ」
「お前もしかして嬢ちゃんの回復魔術見たのか?」
「はい。学祭の発表関連で登録しに来た時についでに」
「ほぉ、どうだった?」




