第372話「地味でいいのです」
「熱さの変化もないね」
「それは光柱を連続で打ち出す魔術ですか?」
「そう。最大で百発まで撃てるようにしたの」
「なるほど。これの回数を増やしてくんですね」
「うん。次は二十でやってみるね」
同じように繰り返す。
「ごめんなさいね。かなり地味だよね」
「そんなことありませよ。地味だし、特に進歩もない。それが普通じゃないですか」
「……そっか。サラティスさんも同類だもんね」
魔術の研究が好き。そう意味では肯定できる。
「ローネさん。問題なければ、連続で出す魔術教えて貰っても?」
「あ、そうだね。……魔術式はこう。光柱の魔術式に回数と間隔を加えてます」
「……なるほど」
「ここを変えれば勿論、回数を増やせるし、間隔も短くできるけどやりすぎると、手元で暴発するから絶対変えないで」
「ありがとうございます。注意しますね」
「サラティスさんの腕なら少し増やすくらいなら平気かもだけど。でも、この魔術式だとただの光柱より魔力を使うから注意が必要よ」
「それは仕方ないですよね。消費する魔力を減らすには式を如何に簡素にできるかですからね」
「そうなのって本当にサラティスさん一学年?実はこっそり年齢偽ってたりしない?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか。一応私はリステッドの長女ですよ?誤魔化しようないですよ」
サラティスは当然後になって知ったが、サラティスが無事に生まれた翌日、領内で大々的に発表されたそうだ。
ロザリアが生まれた時に発表したのを見て、サラティスの時もそうであったと教えて貰った。
「だよね。だって私が一学年の時なんて、難しい魔術をたくさん使えるようになるぞだったもの」
「立派じゃないですか」
志があるのだから。
「ねえ、サラティスさん。たぶんだけど、この程度ならそんなきっちり練習しなくてもできるのよね……」
ちらちら。そわそわ。
「試してみてもいいですか?」
「ええ。もちろん……、魔力だけ気を付けてね。ちょっとでも普段と違うなって思ったら言ってね」
「はい」
深呼吸。
いつだってそうだ。
初めての魔術を使う時はわくわくするし、どきどきする
楽しい。
「おお!」
サラティスが光柱を連続で出した。
「さすがー。ん?」
ローネはサラティスが見込通り、当たり前に魔術を使えたのでのこやかに笑った。
だが、木の板に光柱当たる様子を見ると、一気に真剣な表情で紙にペンを走らせる。
「うーん。ローネさんとあまり変りないですね」
木の板に変化は特に見られない。
「あるよ。あるある。え?サラティスさん、さっきより数減らしていいからもう一回見せて貰える?」
「はい。いいですよ。……いきます」
サラティスは再度魔術を使った。
同じように光柱が木の板に当たる。
やはり先と同じ結果である。
「まって。まって。サラティスさん光柱だよね?」
「はい。ローネさんに教えてもらった通りですが、どこか間違えてますか?」
「私の光柱見てもらっていい?」
「はい」
ローネは光柱を使う。
サラティスは目を凝らしたが、自分のと何ら違いは気付けない。
「木の板じゃなくて、光柱に注目して」
二人は交互に魔術を使う。
「サラティスさんの光柱ぶつかった後、光が木の板に纏わりつくように広がってないかしら?」
「……言われてみればそうかもですね」




